ペンギンが空を飛んだ日 (交通新聞社新書) [Kindle]

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  • 交通新聞社
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  • いわゆる大規模プロジェクトの中の話になっていて、とても面白かった。

    無線技術やカードそのものの省サイズ化など技術の進歩だけではなく、さまざまな交渉やプレゼン、外国メーカーとのやりとり、プロジェクトの進行、プロジェクトチームも含めて大変だったことがとても良くわかる。

    そして何よりも(当時からして)未来の話があり、とても夢のあるプロジェクトだったんだろうなと思った。

  • ■読んだ動機
    Suicaが新しい改札システムを導入するとのニュースを目にして、既存のシステムについてのお話を聞いてみたいと思い手に取った。

    ■感想
    JR東日本という大企業で、
    - 鉄道以外にも影響をもたらすレベルの社会インフラとなる、IT新システムを社内起業で産んだこと
    - その技術をオープンにして広げたこと
    がすごいと感じた。

    Suicaというシステムを導入するまでの紆余曲折の話は特に面白く。
    技術的な面と、ビジネス的な面での困難がありいずれも面白い話だった。

    ### ビジネス面での困難
    既存の磁気改札システムでも問題なかった中で、IC改札システムにすることが、どれほどビジネス的にメリットがあるかを説明する必要があったと。

    切符の時には、夏に汗で切符が萎れて、それを挿入すると改札が詰まるなどして故障が起きていた。
    ICシステムにすることで切符が不要になるので、紙の印刷コストと故障のコストの削減ができる。
    さらに、ICカードによって、鉄道以外にも駅ナカや街ナカでも使えるようになる。というところまで描いてプレゼンしていたと。


    ## 技術面
    ####「かざす方式」から「タッチ・アンド・ゴー方式」
    かざす方式の課題
    当初はICカードを「かざす方式」を想定したがその時に
    - かざす時間内に料金計算ができない
    - かざす場所がユーザーによってさまざまでエラーが多く出てしまう
    という困難があった。
    ビデオで見るとおよそ0.2秒間で計算する必要があるとわかった。磁気システム(切符を挿入してから出すまでは0.7秒)。

    #### 解決策
    - これを解決するために「かざす方式」から「タッチ・アンド・ゴー方式」が生まれた。
    - タッチする際の改札機のカードの角度も13度にすると、ユーザーが正確な位置にタッチしてくれる
    - 歩く速度も少し落ちるなどがあり
    料金計算の時間が得られるようになった。


    #### ネットワーク化
    課題
    - 鉄道会社でセンターサーバーが落ちて、東京中のSuicaが使えないなどになっては致命的
    - ネットワークを二重化すれば信頼性は向上するが、コストが大幅にかかる

    解決策
    - 「センターサーバー」と「駅のサーバー」と「端末」に分けて3階層のシステム構成にした
    - つまり端末(Suica機器)は、センターサーバーとは通信せずに、各駅に設置した駅サーバーと通信する
    - それにより、センターサーバーが故障しても、それぞれの駅サーバーは独立して動いているので、全体に影響は及ばない。
    これを「自立分散システム」という。


    ■その他気になった箇所のメモ
    Suicaをかざす方式では、通過阻害率が高くて使い物にならなかった。
    そこで、タッチする方式に変え、タッチ面を13度にすると、ユーザの歩く速度が若干そこで遅くなり、通信に要する時間を少し確保できるようになり、通過阻害率が低下した。
    いわゆる「タッチ・アンド・ゴー」が誕生した瞬間だった。

    3万人のモニター応募者のうち、サラリーマン男性が多いと思っていたところ、約半数は女性だった。
    しかも10,20代といった若い女性が多かった。
    様子を観察すると、どこか「自慢げにカッコよく」Suicaを使用していた。
    つまり、感性が豊かで時代の趨勢(すうせい)をいち早く見抜く「トレンドセッター」の層に刺さっていた。

    19日間で100万枚突破

    改札機を開放して初めてのトラブル。
    データを書き込む部分のソフトの不具合であって、Suicaの基本的な機能のトラブルではなかった。つまり、アプリケーションレベルではなくOSレベルのトラブルだった。
    アプリケーションは時間と手間をかけて検証してきたが、さらにその下のOSまでやらなければならなかったと反省した。

    同じトラブルを起こさないために。
    模擬的な駅を作ることにした。実際の駅ではない場所ひ模擬駅の改札機を設置し、その日の朝、自動改札機を立ち上げる際ほダウンロードさらる実データを落として正常に動くかチェックするようにした。

    Suicaのように社会インフラ化することによって長期スパンで利益となるような、インフラ投資の可能性も社内で広がった。

  • まず、本のタイトルがいい。カッコいい。
    経営トップの大きな構想や戦略ではなく、現場の人間がユーザーファーストで構想を描き、経営層と会社を巻き込み、熱意と努力で全く新しいサービスの立ち上げと浸透にこぎつけるところに勇気を与えられる。
    なによりも、自分の仕事においても、とにかく、ユーザーの目線にたつこと、顧客に役立つことに真摯に向き合って、プロダクトを少しずつ、試行錯誤で磨きあげていきたいと思った。

  • Suicaの開発、導入、発展のプロジェクト進行の話。参考にしたい

  • Suica開発のプロジェクト史。すっかり日常に欠かせないものになったSuicaが世に出るまで、技術者たちがいかに苦難を乗り越えか、その当事者から語られる。
    周囲を巻き込むエネルギーと、社会的インフラを支えるエンジニアの責任感の高さに感動を覚える作品。

  • SUICAを開発した人の話。

    基礎研究から実用化、その後のビジネス展開まで、SUICA開発の紆余曲折が詰まった本。

    日本のキャッシュレスは間違いなくJR東日本が変えたよなと思っており、ここは外資に頼らずにやりきった日本の偉業だと思う。

    かざす方式から現在のタッチアンドゴー方式に変わったエピソードや、絶対に改札を止めないサーバー構築を目指したりする部分は、今は常識だが当時としてはかなり斬新的な発送の構築段階を読めるのが見どころか。
    トライアルでのトラブル含め、PJ進めるあるあるが多くて社会人としては面白かった。

    ただ、特にドラマチックなエピソードがあったりはないので、エンタメ的な面白さはあまりない。
    著者が優秀過ぎて、経営陣の説得とかPJ進行がスムーズなんですよね…

  • Suicaの技術的な軽い話題とビジネスの展開の苦労話。最近、事務所のカードキーがSuica対応のものになって読んだ。

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