ザ・カルテル 下 (角川文庫) [Kindle]

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  • 「犬の力」も読んでいるのだけど、おもしろかった記憶はあるものの、内容はなにひとつ覚えていなくて、バレーラとケラーのことも、まったく思い出せず。(情けない。本を読む意味があるんだろうかとかすら思う。。。)
    しかし、まったくなにも覚えていなくても、とてもおもしろく読めた。すごく読みごたえがあってよかった。
    拷問とか殺人とかのすさまじさは変わらず、めちゃめちゃ恐ろしい世界なのだけれど、「犬の力」を覚えてないのに比べられるわけないんだけど、印象が、こちらのほうが明るいような。明るい、というと語弊があるけど、麻薬取引がビジネスや政治になっていて。まさにゴッドファーザー的な。(それもパート2じゃなくて、描かれた時代が新しい1や3のほう)凄惨なばっかりじゃなくて、ユーモアもあって。パブロたちジャーナリストや、ケラーの恋人の医師や、メキシコの普通に文化的に暮らす人たちの生活も描かれていることもあるかもしれない。

    とにかく、麻薬取引にかんしてはメキシコも、そしてアメリカもひどすぎるとしか言いようがない。とくにアメリカって本当にひどい。いや、アメリカがすべて悪いのかもしれない。どうしたらいいか、なんてわからない。。。

    でも、ラストに、ほんのわずかな希望というか、贖罪という気持ちの光、かすかな善きもの、というか、そういうようなものを感じられて、後味は悪くなかった。

  • 前作では、麻薬捜査官そしてカルテルの跡取りとしてのふたりの、良くも悪くも成長の話でもあったのだが、続編である本作では、己の立場を極めた上での個人的な闘いに終始している。深みのある人間ドラマを比べると前作より劣るが、全体的なスケールはより大きくなった。それは、ふたりの背負う重みが国家レベルになってしまったからだろう。

    上巻は『犬の力』の続編という色合いが濃い。スピード感はあるのだが、じわじわと侵食しているような感覚がもどかしくもあり、不気味でもあり。そして気がつくのだ、ウィンズロウの怒りの底なし沼にずぶずぶに浸かっていることを。下巻に入り、血で血を洗う麻薬戦争の地獄絵図は凄惨を極める。ノンフィクションかと見紛うほどの迫力ある描写に息苦しくなる。裏切り、買収、報復の連鎖は終わることなく、途方もない死者の数に比例して徐々に疲労感は蓄積されていくのだが、それでも最後まで衰えないのはやり場のない怒りの気持ち。国家レベルの悲劇に怒りが止まらない。「憎しみは憎しみさえも打ち負かす」の一言に射抜かれ、野生の少年の最後の記事は、一旦本を閉じないと先へ進めないほど心に突き刺さった。

    終盤のエンタメ寄りの展開がやや気になったが、それでも今年のベスト候補なのは間違いないだろう。結末には納得してないが、一番しっくりくるラストはやっぱりこういうのかな。麻薬カルテル絡みの小説は当分読めないわ、何を読んでも本作品を超えられないだろうから。ウィンズロウを超えるのはウィンズロウだけ。

  • 前作「犬の力」から一気に読了。なので「犬の力」の感想も含めて。

    「犬の力」の続編というより、「ザ・カルテル」のために「犬の力」を書いた、という印象が残る。それだけ「ザ・カルテル」は圧倒的だった。

    メキシコの今がわかる、とか、麻薬戦争!とか、残酷な暴力描写が、とかそんな言葉はこの作品の前に無力。フィクションとしていくらかの脚色があるものの、全体的に漂う圧倒的な現実としての絶望感。血で血を洗うことの日常。人間の果てなき、飽くなき欲望。

    映画化が決まっているという。ケラー役にディカプリオなんて話も耳にした。映画化されたら必ず見に行くとは思うが、今作に関しては絶対に原作を最初に読んだほうがいいと思う。

  • 「犬の力」の続編。前作で闘いが完結したと思っていたが、こんな展開が待っていたとは。スケールといい、迫力といい、前作を上回るできではないだろうか。
    それにしても、ドン・ウィンズロウといえば、探偵ケアリーシリーズにはまっていたのだが、前作でずいぶん対象が変わってしまったので、ケアリーのようなキャラクターはもう出ないのかと思ったが、本作の中盤以降で登場する新聞記者パブロがほんの少し似ている。思わず感情移入してしまった。

  •  軽快な語り口のデビュー作『ストリート・キッズ』からすでに存在していたウィンズロウの骨太に社会を切り取る部分がメインとなった『犬の力』ではその力量にあらためてノックアウトされたものだったが、その続編であり、ケリをつける作品である本作も圧倒的。メキシコの麻薬カルテルとアメリカの麻薬取締局の対決という構図ながら、きれいごとは抜き、腐敗と妥協と人情と冷血に彩られている。映画化も楽しみだ。

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