グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書) [Kindle]

  • 文藝春秋
4.31
  • (5)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 68
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (194ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 新自由主義とかグローバリズムとか、しばしば耳にし、また口にもする割に、どこが良くて何がどう良くないのかについては、実はよくわかっていないようにふと思いました。

    過日、トッド氏の『問題は英国ではない、EUだ』を読み、類書にあたる本書も読んでみようと思った次第です。

    ・・・
    グローバリズムって何ぞやとなりますが、誤解を恐れずに言えば、ヒト・モノ・カネが自由に行き来できるようになることです(間違っていたらごめんなさい)。当然、その前提になるのが規制撤廃・規制緩和です。さらにこうした規制撤廃・規制緩和が含意するのは金融・経済・法律等における統一ルールの適用です。

    このグローバリズムの結果どうなったかと言えば、貧富の差が激しくなったとか、よく言います。

    本書では改めてグローバリズムの危険性を述べています。
    トッド氏は、主権の喪失(国内事情を国がハンドルできなくなる)の危険性を指摘。チャン氏は、地域社会の不安定化(企業の積極的海外進出により地元雇用が削減される)や、企業の近視眼的政策(グローバル株主からの利益還元要求により長期的なコミットメントより中短期的な利益を優先)による企業の劣化などを説いています。藤井氏は、ハンナ・アレントを援用しつつ、官僚やエリート層の全体主義的思考停止を指摘。中野氏もエリート層の「レッセ・フェール」のもとの責任放棄を指弾しています。

    たしかに実感としても、1990年代以降の各種規制緩和で生活が(金銭的に)豊かになったかと言うと全然そんなの感じません(技術的進歩の恩恵は受けていると思いますが)。でも、政策が良くないからいって官僚が失職することもないし、某自動車企業が儲かったからと言って、それが二次受け・三次受けを通じて波及効果として中部地方の景気が良くなったとかいうのもあまり聞かない。
    じゃあ、規制緩和って結局市民の為と言うより、一部の金持ちをより金持ちにしただけ?という疑問であります。

    もちろん、いいところもありますね。
    ヒト・モノ・カネの自由な往来により、旅行はめっちゃしやすくなりました。格安航空券なんか昔はなかったし。国内も国外も安くいけるようになりました。また、関税の引き下げにより多様な物品が世界中から入ってきました。カルディとか見てるだけで楽しいし。

    では本作に登場する識者たちは何を言いたいのかと言うと、総じて『バランスを考えようぜ』という事のようです。経済の不安定化を防ぎ、成長や変化もモデレートにし、そして官僚や政治家はもっと主体的に考え(企業や自分の利益ではなく)国益を考えるべき、と唱えているように思えます。

    うーむ。
    とはいえ、全体の有るべき姿をみても、その全体を構成するのはやはり個であります。ですから、結局我々一人の民度の向上が望まれますよね。民度の向上を目指すには? やっぱり我々が実際に政治に参加する?それも面倒臭いですよねえ。。。具体的にはわからないけど、選挙くらいは参加しないとなと改めて思った次第です(近年は非居住者も国政選挙には投票可能です)。

    ・・・
    性格や性別に『正しい』『間違っている』ということがないのと同様、国についても『正しい』『間違っている』という事は出来ないのではと感じます(少なくても他国の人が言う話ではないと思います)。もしそうだとすると、日本は米国と違ってもいいし、共産主義でも独裁を取る国でも、それはそれでその国の選択であると思います。
    官僚も政治家もそして我々も、必要なことは、日本が世界標準と違うとか同じとか、はたまたおかしいとか正しいとかではなく、日本をどのような社会にしたいかと切に考えることなのではないか、と思いました。そうした地道な思考の堆積が民度をあげるのでは、と思った次第です。僭越ですが。

  • 関税というものは大昔にはなかった。それが国民国家が出来上がっていくにつれて自国の産業保護の名目で関税というものができたのだろう。つまり、自由貿易ではなくて関税障壁は必要なのだ。
    企業は今、グローバル市場を食い物にする大競争(mega-competition)の時代から、需給が逼迫したために淘汰され血で血を洗うレッドオーシャン(red ocean)の時代に入ってきている。

  • 【国内外の気鋭の論者が徹底討論】世界的なデフレ不況下での自由貿易と規制緩和は、解決策となるどころか、経済危機をさらに悪化させるだけであることを明らかにする!

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エマニュエル・トッドの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×