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感想・レビュー・書評
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自殺したはずのヒトラーが、現代にタイムスリップするお話。
“ヒトラーのそっくりさん”としてメディアで脚光を浴び、総統としての自説を現代でも広げていくのだが、見る者は“コメディー”として捉えているが、共感する者も出てくる。
秘書の祖母がホロコーストを免れて生き残ったユダヤ人だったことがわかった時のヒトラーと秘書のやり取りでは、読んでいて思わずヒトラー説に引き込まれ、自分でも恐ろしくなった。
現代のヒトラーは、ホロコーストの責任はもちろん自分にあるが、その自分を選んだのはドイツ国民であり、ドイツ国民にも責任があると言う。
怖い、怖い。
ヒトラーが蘇ることはあり得ないけど、ヒトラー的な人が徐々に実権を握っていくことはあり得る。
読み終わったあと、背筋がゾクゾク。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「こんにゃく問答」という話がある。
禅問答(?)に自信のない住職に代わって、こんにゃく屋のおやじが旅の僧の挑戦を受ける。こんにゃく屋が勝つのだが、双方にその問答の意味を聞いてみると、まったく噛み合っていない。この噛み合っていないのに、問答が成立してしまったのが笑いどころの話なのだが、こんにゃく屋と僧の立場をヒトラーと現代ドイツの大衆に置き換えると?
2011年8月のドイツに突如蘇ったヒトラーはあくまでヒトラーとして行動を始める。
現代にヒトラーが居るはずないと思っている民衆は、彼の言動をコメディアンの風刺として解釈する。
ヒトラーも現代の知識を鋭くも彼なりの偏った思想で解釈している。
双方の噛み合わなさを読者は笑いながらも、その根底となっている現代社会の諸々やヒトラーがやったことを考えたとき、この状況が噛み合わないまま進行していく事に、ものすごい皮肉と恐ろしさが潜んでいる気が付くだろう。
正にブラックすぎるユーモアである。 -
こわおもしろい
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面白かった!
ドイツ流の噛みごたえ抜群のブラックユーモアと,史実とファンタジーを行ったり来たりする躍動感.
ヒトラーと共に「笑う」そして一部では「共感」せざるを得ない自分にはたと気がつき,こうやってファシズムは出来上がっていくのだと背筋が寒くなる…
さて…2019年の日本は? -
もし現代のドイツにヒトラーがいたら、の小説。
前篇は昔の人が現代の文明に驚くおもしろいもの。後編はヒトラーの主義主張が現代に受け入れられていくやや怖いもの。ヒトラーという人間の、「自分への絶対的な自信」や「自分がやらねばという恐ろしい程の使命感」などの考え方がすごい、大馬鹿か天才か判断出来ない。
おそらく出版までに苦労したと思う。歴史を考える上で勉強になる一冊。 -
ドイツでバカ売れして世界中に翻訳されまくってすぐに映画化されて、、、期待して読んだのですがブラックユーモアなので戦中のドイツを知ってるかどうかで評価が分かれるかと。私はあまり知らなかったのでいまいち評価が低くなった。事前に新書ででもナチスドイツの基礎知識と登場人物を頭に入れておいたほうがより楽しめるでしょう。
その知識無くても、メルアドをヒトラーが設定する場面や芸人だと勘違いされて本名は何と聞かれても頑として本名で貫く場面は普通に面白かったけどね。 -
どうやって翻訳したのか不思議に思うほど感心しつつ、言葉の解釈のズレやニュアンスまで面白おかしく日本語で読破。また、訳者注が入っているので史実に精通していなくても苦なく読めた。あとがきなどで「恐ろしさも感じるはず」と書かれていたが、コメディーとして面白く読めてしまうためわたしは小説内でそれを感じることはなく、「ヒトラーを肯定的にとらえることになりはしないか」と出版の影響を考えた時に初めて不安に思った。
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話題になっていたので、ドイツに行くことだしと思い、旅のお供に購入。
ヒトラーについて詳しくは知らないけれど、まじめに面白く描かれていてとても面白かった。また、面白いと思う一方で、実際に置き換えてみるとどうなんだろう?昔とはいえ、まだ数十年前の話、いったいこの世界はどうなっているのか考えさせられる本でもある。 -
現代にタイムスリップしたヒトラー。
そっくりさん芸人として担ぎ上げられながら、本人はいたって真面目に、強い信念を持って進んでいく。
その姿に大衆は少しずつ惹かれ始め・・・
といったストーリー。
ドイツにおいてタブーとされるヒトラーをこれだけイジリ、
国内で大ヒットさせたという意味で、とても興味深い作品。
政治への風刺もコミカルに織り込まれ、気づけばすっかり入り込んでヒトラーがどう進んでいくかが気になってしまい、久々の睡眠不足小説。
とても面白かったものの、やっぱり不謹慎かなぁと星4つ。 -
映画版を見た備忘。
原作から視点は第三者に移り結末も違う流れになるのだが、訴えるメッセージはより鮮明に。
総統閣下!総統閣下!と爆笑し、手を叩きながら見ていたら、スクリーンの裏側に立つ縦縞の囚人服を着た大勢の老若男女が、沈黙の中でこっちを見つめているのに気づいてしまった。
そんな恐怖と居心地の悪さが笑いの中に同居する。
実に優れた作品だ。