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感想・レビュー・書評
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2023.4.18. タケシマ文庫にて購入。新潮文庫版。
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p.2022/11/27
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近代日本初の国語辞書『言海』を編んだ大槻文彦について、彼の生きた幕末~明治の激動の時代背景と共に語った一冊。
仙台藩の洋学の家の子供として時代に翻弄される青少年期を経て(幕末の東北と言えば、それは色々とありました)、明治に入り外へと開かれていく日本に、統一された文法と言葉の定義が必要と説き、やがて国語辞書の編纂にその一生を捧げていく。
言葉の定まらない、曖昧だった時代に、すべての言葉にかたっぱしから言葉で意味を定義し、さらに実際に必要と思われる言葉を選定して、一冊の辞書を編み上げる作業は、まさに広さ深さの計り知れない言葉の海を漂うような作業だったのでしょう。
文章の随所に挿入される『言海』からの引用が、そうした地道な観察と細やかな吟味の果てに生まれた言葉だと思うと、涙が滲んできます。
こと―ば(名) 〔葉ハ、繁キ意ト云〕(一)人ノ思想ヲ口ニ言出スモノ。人ノ声ノ意味アルモノ。言。言ノ葉。モノイヒ。ハナシ。詞 辞 言語(二)言葉ノ、ヒトツヒトツナルモノ。ヒトコト。「体ノ―」「用ノ―」言 ○―ヲ尽クス。精シク言フ。○―ヲ返ス。答フ。口答スル。○―ニ余ル。言ヒ尽サレズ。
国語辞典は言葉を学ぶ基礎となるもので、大槻文彦は、新しい時代に必要とされる言葉を選び抜いて『言海』を編んだのだそうです。
いまはたくさん出版され版を重ねる辞書に、収録されて生きた言葉もあれば、収録されずにいまは忘れ去られた言葉もあるでしょう。
電子書籍でこの本を読みながら、不明な言葉を指でなぞればすぐに辞書が意味を連れてくるのを繰り返しているうちに、辞書から漏れた言葉に出会って、ふとそんなことを考えました。
言葉というものは、こんなにも生きているのか。