恋愛ハウツー本で、女性からの質問に男性が回答する本はあまりない。説得力がないからだろう。ラブホの上野さんはこの特例パターン。女性の質問をラブホの上野さんがばっさり辛口で答える。ラブホスタッフという立ち位置だから、説得力がある。
恋愛相談の質問に興味がない人でも楽しめるように、雑学や人生訓が詰め込まれている。上野さんはモラリスト、エッセイストの伝統に連なっている。以下印象的な箇所のまとめ。
・昔の恋人の思い出を忘れようとすることは無駄。時間がたつと記憶は勝手に薄れるし、相手から受けた影響を消すことはできない。忘れるために何かしても、忘れられない。失恋の唯一の薬は時間。
・「重い」とは、相手の期待に応えられない状況に陥ってしまうこと。彼女が作ってくれたセーターは重い。毎日着れないから。
・慎重な人間は「よくよく準備をして、さまざまな選択肢を考慮し、決断するタイミングで迷わないように用意をする人間」であって、「決断を先送りにする人間」ではない。
・優柔不断な人間は「何も考えずに」「とりあえず」「先送りという手」を繰り出しているだけなのだから、慎重の対極。
・「欠点のない人間」はいないし、「長所のない人間」もいない。女性は彼氏の長所を過大評価する傾向にある。「たまに優しい」なんて長所でもなんでもない。なのに多くの人があたかも長所のように語るのは、恋愛マジックとしか思えない。
・「運命の人」とは築くものであり、結果。「運命の人」を探す人は、「運命の人が見つかれば、無条件で幸せになれる」と思い込んでいる。
・「運命の人に出会う」程度の幸運で、一生が保証されるわけもない。「運命の人」という言葉がないと、今後色々がんばらなきゃいけない。今後努力したくないという欲望を「運命の人」という言葉に背負わせている気がしてならない。
・自分は何も悪いことをしていないのに、なぜ孤独にならなければならないのかという考え方は、おそらく間違っている。「自分に過失がない」というただその程度の理由で、自分を変えようとしなかった。そんな悪いことをしているからこそ、今、残念ながら孤独になってしまっている。
・世間との認識の差に対策をしないと、恋愛から遠ざかる。世間に合わせろといっているわけではない。対策をしろ、と言っているだけ。
・この世界でいちばんつらい階級というのは、「不幸だと思ってもらえない不幸」をわずらっている人。だが、その階級を通らなければ、大富豪にも富豪にもなれない。
・洋服屋のスタッフの最も大事な仕事は、「買うという決断をさせること」。なぜなら人間は一人では決断できないから。
・試着して購入しない客を見て「なんだ客じゃなかったんだ」と愚痴をいうスタッフは三流。「せっかくのチャンスを自分のミスで逃がしてしまった」と思うスタッフは二流。「チャンスを自分のミスで逃してしまった。お客様にも時間を取らせてしまった。だから今度はこうやって対応してみよう」と考えるスタッフこそが一流。
・口に出すかどうかは別にして「その気がなくてもぜひデートに来てください。その場でその気にさせるのが僕の腕の見せ所です」と思えないなら、最初から口説くなと言いたい。
・最後の親孝行は、親の死に目に立ち会うこと。もしこの文章を読んでいる人の中に親の死に目に立ち会えなかった人がいても、あまり自分を責めないでほしい。「親より早く死ぬな」と言うのが主旨だから。
・最後の子育ては、できる限り長く幸せな人生を歩み、子どもに「人生はいいものだよ」と背中で伝え、子どもより先に死ぬこと。
・RPGゲームのボス戦では回復魔法が重要。「ちょっとしたことで関係が壊れないように強固な関係」を結ぶよりも、「ちょっとしたことがあっても回復できる関係」になった方がよい。