さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ [Kindle]

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  • イースト・プレス
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感想・レビュー・書評

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  • レズ風俗に興味津々で手に取ったコミックエッセイ。
    体験レポや入門書のようなものをイメージしていたけれど、自分語りがメインでレズ風俗そのものについてはおまけ程度の描写しかなかったので少し期待外れだった。
    でも追い込まれた著者がようやくたどり着いた救済がレズ風俗だった、というのは思うところがある。

  • タイトル詐欺といおうか、レズ風俗の描写は殆どない。本作でメインになるのは「さびしすぎて」の部分。なぜ著者はそんなに寂しくてしんどいのかが、長々と尺を割いて語り起こされる。
    毒親ものに分類するのは簡単だが、自分は違和感を覚える。というのも、親のこと本当に嫌いなの??作中では「母親が嫌いだ」と断言してるのだが、成人してからも母親に抱き付いたり乳をさわったり、べったり甘えてるのを見るととてもそうは思えない。
    それ以上に、本気で嫌って憎んでたらあんな風に描かない。もっと醜く、露悪的に描く筈だ。
    ふみふみこの「愛と呪い」は、新興宗教を信仰する家庭に生まれ、母親に肉体的虐待・父親に性的虐待を受け続けた作者の自伝的漫画だが、そこでは父親の顔が意図的に描かれない。倒錯したプレイを強いる援交相手の顔もぐちゃぐちゃに塗り潰されている。
    表現者の業と言うべきか闇と言うべきか、仮に著者が本当に母親を嫌ってたら、あんな頭身低めに親しみやすくは描かないし絶対描けない。だっていくらでも嫌な奴に描けるのだから。読者に「何コイツ、サイテー」と思わせる、それが一番の復讐なのだから。
    本作を読んで、著者の母親に嫌悪感を持った人は少ないのでは?逆に擁護する意見も多い。それは一方的に加害者(とされる側)を貶めず、ある程度公平性を担保できてる証左でもある。親子関係でしんどい思いをしたのは事実だろうが、共依存的な愛着も感じているのではないか。

    酷評レビューを読み、自己承認欲求のかたまりの勘違いメンヘラの胸糞レポートだったらやだなあ……と身構えていたのだが、想像したよりポップな仕上がりでよかった。絵柄がユルくデフォルメされてるので、壮絶な体験もフラットに読める。あるかないかわからない処女膜へのツッコミは笑ってしまった。「私達の28年間を忘れてしまったのか膜よ、別にいいけど……」て(笑)
    摂食障害や鬱でボロボロになりながら、そんな自分を面白く演出するユーモアを忘れないセンスは見事。にしても更衣室のロッカーにこんにゃく隠すって……。

    主人公の親が毒親か否かは意見が分かれる所。自分はちょっと無神経なだけで悪い人達じゃないと思った。「正社員じゃないからウチにお金入れなくていいよ」はフツーに言われたことあるので笑ってしまった。「え、ずっと休んでたのかと思ってた」も、娘が家でゴロゴロするのを見てた感想で悪気はない。
    アレが毒親なら言動がほぼ共通するウチの母もそうなってしまうのだが、あの世代の人たちはそういう生き物だと思って諦めた方がいい。
    むしろ主人公の言動のが違和感が強い。父親の「アルバイトじゃ部屋借りられない」発言を真に受けるとか、え、友人にあたるとかネットで調べるとかしなかったの。
    しかも真実を知ったのが去年て、レズ風俗の年齢基準で去年なら27歳、単行本が出た年で考えるなら下手すると30行ってる。それでこの世間知らずぶりは凄い。
    メンタル病んでる人を責めるのも心苦しいのだが、「仕事が上手くいくなら友達いらないどうでもいい」と初詣で願掛けしたくせに友達を欲しがったり、「友達がいるなら全部上手くいく」と突然根拠のない逃避願望に縋り付いたかと思いきや、その友達が誘ってくれた創作サークルを勝手に抜けたりと、いや矛盾してるよどっちやねん。
    スマホに一人も友達を登録してない、というか友達がマジで存在しない自分にしてみれば、親に嫌味言われて駆け込み寺候補に上がる友達や親戚がいるだけ恵まれてるのだが……
    「迷惑かけて嫌われたくない」と即却下してたけど、自分のケチなプライドか被害妄想由来の感情だし、「友達」という居場所……もとい逃げ込み先を結び付けられる著者は幸せ者だ。世の中にはそんな網が存在しない人間もいる。

    少し話が逸れるが、私は「毒親に育てられた」という人の話をまず疑ってかかることにしている。
    最近増えたその手の自伝的漫画や小説は言うに及ばず、タチが悪いのはYouTubeなど動画のコメント欄で「自分も毒親に育てられました」と聞かれてもない身の上話を長々垂れ流す人種。
    ねじくれた自己承認欲求が表出してるのかもしれないが、その人たちの多くは主観的で、被害者の視点から一方的に親をこきおろす。そこには親の視点が欠けている。
    その場にいない者、故に反論すらできない存在を、一方的にサンドバックにして可哀想な自分を演出してるのだ。とてもフェアとは言い難い。
    もちろん、世の中には何ら擁護の余地のない毒親も存在する。アルコール中毒、DV、モラハラ……痛ましい虐待のニュースで報道される、誰が見てもダメな親たちだ。

    しかし本書の親はどうだ?

    親の視点に立ってみれば、「バイトの休憩時間に逃げ帰る、面接の予約をしてもサボる、ろくに風呂も入らずウチでゴロゴロしてるアラサーニートな娘」だ。しかも家事を手伝ってる様子もない。おまけに成人後も母親と椅子の背凭れの間に挟まる、尻を覗く、乳を揉むなどスキンシップを求めてくる。
    親が用意してくれた夕飯を温めて食べる描写はあったが、作者が定義する立派な大人の条件とは、「家事ができるより自分のしたいことをして社会的に認められている」なのだ。
    いや、最低限家事はしろよ独り暮らし目指すなら特に。

    率直に述べれば、永田カビさんの悩みは二十代の時に一人暮らしに踏み切ってたら八割解決していた。

    全部スッキリさっぱり片付かなくても、大幅に緩和されてたのは間違いない。
    それをしなかったのはハッキリ彼女自身の怠慢だ。携帯(スマホ?)をいじってる描写があったが、何故好きでもない父親の意見を真に受け事実を調べなかったのか?今ならGoogle検索で一発だ。100万も貯金があればとっくにできてた。
    最後まで飽きずに読めたし、「心の痛みはよくわからないけど体の痛みは感じるから安心する」プロセスを図解したり、「それしか知らないと影響される事もあるし相手を傷付ける場合もあるかもしれない」創作物の知識と実体験を対比したり、ところどころ鋭い示唆に富んでるのは感心したが、共感性羞恥で辛くなる。
    これから本書を読もうというひとは、読後に永田カビさんのTwitterやブログを見、公平を期すのをお勧め。低評価を付けた人はそちらで内情を知ってしまったのでは?作者の別著レビューにもあったが、親族のコネで会社に就職した(のに相変わらず好き勝手やってボロボロになってる)……というのを知るともやっとする。

    居場所なんてどこにもない。
    永田カビさんは甘い蜜=満たされた自己承認欲求=居場所と結論付けたが、そんなものはない。どこにもない。
    私が悲観的だからでも現実的だからでもなく、居場所とはそもそも共同幻想の概念だ。
    今ここで生きているのが辛い人たちがあったらいいなあとボンヤリ考える、あるいは渇望する、自分のしょうもなさを無条件に甘やかしてくれるシェルターの別名だ。

    永田カビさんは周囲の人物に恵まれている。その証拠に平和で楽しい高校生活を満喫し、創作サークルに勧誘してくれる友人もいた。整骨院と二軒目のパン屋の担当者は天使か。あんなエピソード現実にあるんか。
    最初の職場の人達も特別冷たかったんじゃない、社会人としては至って真っ当な反応だ。
    バイトだろうが正社員だろうが、職場は仕事をする場所だ。傷をぺろぺろする負け犬の集まりでも、自分を守ってくれるシェルターでもなんでもない。差し障りを来たしたら放逐されるに決まってる。

    自身の体験がバズって食べていけるようになれたのはめでたいし、著者の希死概念が少しでも宥められたら喜ばしいが、依存先が(毒)親から読者、あるいは自分を立派な大人と認めてくれる編集者に変わっただけな気もする。
    自身の体験を切り売りして食べていけるうちはいいが、残弾には限りがある。
    たとえば永田カビさんが西原理恵子ぐらいタフネスなら上手く回るだろうが、30代、40代になってもまだ毒親との確執やレズ風俗レポートを描き続けるのか?と考えると現実的じゃない。読者は飽きる生き物だ。そして風俗体験記には体力の衰えが関係する。
    居場所なんて結局自分の中にも外にもない。ボンヤリした不安を抱っこしてくれる人、あるいは物や場所を便宜的にそう呼んでいるだけなのに、皆が皆その空虚な概念に縛られ過ぎている。

    誰も抱き締めてくれないなら自分で自分を抱き締める。
    結局それでしか人は救われないのだ。

    私はコレ一冊でお腹いっぱいだが、本書を読んで「本物のLGBTの人たちに失礼」と怒る人たちの思考回路はちょっと理解できない。
    いや、自分が同性愛者で、自分の為に怒ってるというならわかる。そうじゃないなら何の資格と権利があって人様の怒りを代弁してるのか。
    個人的に永田カビさんの事は好きでも嫌いでもないが、レズ風俗に行くことでしか変われなかった彼女に対しては失礼じゃないのか?

    「それしか知らないと影響される事もあるし相手を傷付ける場合もあるかもしれない」

    毒親の件にもLGBTの件にも言えるが、一方的な叩きに便乗するのは賢明じゃないぞ。

  • さびしさを言語化して、その対処として「レズ風俗」に行った人のコミックエッセイ。
    終始自分語りコミックエッセイですが、そのどうしようもないほどの自分語りが面白いです。

    これは「レズ風俗に行きましたレポ」であり、色々なレズ風俗を巡って体験談を綴った「レズ風俗レポ」ではありません。

    様々な精神疾患、気持ちの満たされなさ、不満、悲しさなど、作者の心身を冒しているものを分析、言語化し、その対処方法として「レズ風俗」を選び、実際に行ってみて、気持ちはどうなったのかまでを綴っています。

    自己分析をしながら、文字通り、体と心もぐちゃぐちゃになって七転八倒を繰り返していく過程がとても楽しめました。
    レズ風俗に通ったあともそれで解決するのではなく、一種の憑き物は取れても、別の悩みが見つかり、またグルグルと心身が転がっていく様は、本人にとって深刻でも、深刻だからこそ読者には笑いをもたらしてくれます。

    エッセイのネタそのものの面白さもさることながら、作者本人の漫画の力が強くあり、自分語りのくどさを感じさせずにどんどん読み進めてしまいました。

    永田カビさんはこの後もコミックエッセイを出されますが、この本でたどり着いた結論の一つ(例えば家族との関係)を後の本では「実は違うのではないか?」とひっくり返すこともしています。
    他の永田カビさんの作品を先に読み、コミックエッセイの最初の本ではこう考えていたんだと楽しむこともできますし、この後に発刊されたコミックエッセイを読み、ぐちゃぐちゃの自己分析と葛藤のストーリーの序盤として楽しむこともできます。

  • 前からちらちら読んでいたのですが、一冊通しで読むと破壊力が半端ない。
    摂食障害で食べられないシーンより、過食衝動が来た時の描写の方が大分えぐい。気持ちがわかるだけ、本当に辛い。

    この作者の求めているものは、「ぎゅーってしてない!」という台詞のように性的快感を得るためのものより、安心できるハグなんだなというのを感じました。
    確かに、性的快感を求める人もいるでしょうが自分も作者と同じように体温や肌の感触、ぬくもりを求める派だと思います。

    どうか、いつの日かこの作者がぎゅーっとされて安心できますように。

    キスの感触がトマトというのは、何とも言えませんが。

  • 普通に生きてゆくだけでも大変だよなー

  •  このマンガはピクシブコミックを読んでいたとき知って、ネットですべて読み終えたと思っていたけれど、つい最近単行本にしか書かれていない話があるようなのを知り、買って読んでみることにした。ぱっとタイトルを見ると医療、健康に関する本には見えないと思うが、著者の永田カビさんは長らくうつ病、摂食障害を患っているそうなので、闘病エッセイという意味で追加した。
     永田さんがはじめて世に出した作品で、自分の病気のこと、セクシュアリティのことが赤裸々に描かれており、ここまで自分のことをさらけ出せることがすごいと思ったし、共感できるところも多かった。

  • 世の中を生きにくい人がどうにかして証人欲求を満たしたいってとった最終手段がこれってお話。

  • 「心の痛みは実体がなくてよくわからないけど、体を傷つけた痛みはわかりやすいから落ち着く」
    つまり、
    不可視の心の痛みを言語化することは、時間と労力がいる作業で、目にも見えて因果関係もはっきりしているダミーの痛みを作ってそっちを見てる方が落ち着ける。手早くスッキリできる、とのこと。

    リストカットをする人の気持ちが理解できた。

    SEXは高等なコミュニケーション、その人のあり方が表れるから、順序を飛ばしてそこにたどり着いても、、、、

  • ものすごく真面目な本です。特定の性的嗜好の人だけが対象の内容ではないので(風俗はひとつの通過点)子育て、自己肯定、毒親、この辺に興味のある人は是非読んで欲しい。

    パン屋さんたちと風俗嬢さんたちが非常に好意的に救いとして描かれている。(自分ならきっと誇りに思うだろう。)

    はるか遠い大陸は地続き。

  • よき。

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著者プロフィール

大阪府在住の漫画家。著作に「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」「現実逃避してたらボロボロになった話」(イースト・プレス)、「一人交換日記1、2」(小学館)、「迷走戦士・永田カビ」(双葉社)がある。

「2022年 『膵臓がこわれたら、少し生きやすくなりました。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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