家康、江戸を建てる [Kindle]

著者 :
  • 祥伝社
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感想・レビュー・書評

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  • 名著。江戸時代の大事業に勇気をもらえた

  • NHK正月時代劇「水を制す!」「金貨の町」を観て、原作となった小説を読みたいと思いながらも日々の生活に追われて忘れていました。
    戦時てう、待ち合わせまでの時間があって、ふらりと立ち寄った本屋で見かけて文庫に気づいた際、手にしたらそのままレジに持っていってしまいました。
    時代劇では2話しかなかったのに、全部で5話あり、そのお話も読み応えがあって心が震えました。

    人が人に協力して出来上がってく江戸—すなわち現在東京。
    今もなお、人が暮らしながらも、次々に鉄道やら建設やら開発は繰り返されている東京。その起源的な世界は、戦国から江戸を興した間(はざま)の奮闘と、その時代ならではの特殊さが、表層から深層まで巡らされた非情さに心を揺さぶられた。
    読破後の後味まで楽しめる一品でした。

  • タイトルから軽いタッチのドタバタコメディ小説と思ったら、江戸の初期民政を下支えした職人らのハードボイルド(?)小説だった。川の向きを変え、生活に必要な水を引き、城の石垣を作る。その1つ1つに人の想い、物語がある。江戸城の天守閣に関する秀忠の考察と、家康の意中が語られる最後のシーンは、目頭が熱くなった。井の頭公園や八王子等、今もなお名が残る地と江戸の街づくりとの結びつきを知り、これからはそういった場所がいい意味で別の見方ができるように思う。折を見て訪れてみたい。

  • 以下の『プロジェクトX』5本立てのような小説だった。
    ・利根川東遷
    ・貨幣統一による秤量貨幣から計量貨幣
    ・飲水工事
    ・江戸城の石垣作り
    ・天守閣構築

    家康が秀吉に命じられ、東京(江戸)に移ったときは現在の東京のように首都として栄えた街ではなく、「飛ばされた」と理解できるような住みにくいまるで田舎の土地であった。それを家康が発展するよう1つ1つのプロジェクトを進めていく過程がドラマチックなストーリーに仕立てられており、非常に面白く読めた。

    どれも印象的だが、特に決定的に重要だと思ったのは貨幣の統一による計量貨幣への変遷であった。貨幣は経済の仕組みそのものであり、世の中の潤滑油であるからだ。
    「誰」が世を統治するか、等といったことも大事だが、世の中の「仕組み」はそれ以上に重要だ。誰が統治者になっても国としての仕組みが効率的に回るものでないと実行的な政策は打てないし、実際のオペレーターとなる国民の働きが成果につながりにくい。(したがって、私は現代でも政治家の最も重要な仕事は「安全保障」と「行政の仕組みをアップデートすること」だと考えているのだが、それはまた別の機会に)

    現在の江戸の原型ができあがっていく過程で、井の頭、水道橋、銀座等の地名の由来が分かるようにドラマが進むのも楽しい。
    本書を原作にNHKのドラマにもなっているようなので、そちらも観てみようと思う。
    ついでに貨幣経済の簡単な歴史も勉強してみたい。

  • 秀吉に突然国替えを命じられ、関東の荒れ地に移ることになった家康。
    ただ単に城を作るのではなく、天下を取ることを見据えた城下町造りが始まった。

    湿地帯を人が住める場所にするために、川の流れを変える。
    経済の発展のために、小判を鋳造する。
    飲み水を引く。
    伊豆から石垣のための巨石を運んでくる。
    戦のない時代を象徴する天守を建てる。

    それぞれにプロフェッショナルな職人が関わり、260年以上も続く江戸時代の基礎を造っていく。

    歴史好きじゃなくても楽しめる1冊。

  • 連作短編集。家康の江戸づくりに貢献した人々に纏わる話である。かなり史実に忠実に執筆したのではないだろうか。必ずしも面白さだけで話が進んでいくわけではない。惜しくも賞は逃したけれど、歴史好きの人もそうでない人でも十分楽しめるないようになっている。惜しいのは、家康が江戸をどのような街に仕上げようと考えていたのかが明確になっていないとこkろだろうか。

  • 徳川家康が江戸を築き上げた際の
    各職人たちの群像劇。

    何故かタイトルを見てコメディタッチの
    作品かと勝手に思い込んでいたが
    かなり熱いストーリーだった。

    一つの世代で成し遂げられなかった
    事業が次世代に託されていく話や、
    気に食わない上司に成果を奪われるような
    ひどい仕打ちに耐え忍びつつ、目標達成を目指す話、
    そりが合わない職人同士がお互いの技術を
    認め合っていく話など、どの章も楽しく読めた。

    「石垣を積む」の吾平さんが面白かった。
    人に会った時の第一印象が「殺す」とか、少年漫画でも
    滅多にない(笑)

    また、当時の状況を現代のサラリーマンにも
    わかりやすいたとえに置き換えて説明しているので、
    (特にインフラやものづくりに従事している職業の人は)
    きっと登場人物に感情移入しやすいと思う。

    第155回直木賞候補作の中では
    個人的に一番好き。

    何が感動したかって
    しょっぱなの章で自分が10年程前に
    わざわざ関西から山梨まで見に行った
    聖牛が登場してきたという。

    思わず当時書き込んだSNSの記事を
    オジサン読み返してしまったよ。

著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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