パワー 上 西のはての年代記III (河出文庫) [Kindle]

  • 河出書房新社
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  • 三部作の最後、「パワー」の主人公は、奴隷であるガヴィア。メマーも征服された都市に隷属していたが、一応主人を持たない市民であった。しかし、ガヴィアは完全に奴隷であるのに、その環境を当然のこととして生きている。彼は記憶力に優れ、優秀な学生で、学ぶ権利を与えられていた。しかし奴隷にすぎないことを思い知るのは、ある悲劇が起きてから、さらに時間が経った後のことになる。
    ガヴィアは都市を離れ、放浪する。通りがかる村、解放された奴隷の共同体、故郷である水郷の人々、どこにも属さない世捨て人。ガヴィアはそのどこにも所属できない自分を感じる。導いてくれたのは、オレック・カスプロの詩の本。(この頃には彼の詩が本になっている)
    悩みと、サバイバルと、スリリングな逃亡ののち、素晴らしい結末が待っている。彼が北を目指したのは象徴的だ。
    物語は、再び一人の自立へと還っていく。

    最後に、萩尾望都氏が解説を書いておられる。アーシュラ・ル・グゥインがどれだけの影響を氏に与えていたかがよくわかる。このことを知れば、この物語がたくさんの人に読まれるだろうか。願わくば若い世代が、ゲドと同じように、ガヴィアの旅にも同行してほしい。

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著者プロフィール

1929年カリフォルニア州バークレーに生まれる。1962年に作家としてデビュー。斬新なSF/ファンタジー作品を次々に発表し、ほどなく米国SF界の女王ともいうべき輝かしい存在になる。SF/ファンタジー以外の小説や、児童書、詩、評論などの分野でも活躍。主な作品に、『闇の左手』、『所有せざる人々』、「ゲド戦記」シリーズ、「空飛び猫」シリーズ、「西のはての年代記」三部作など。ネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞を何度も受賞しているほか、ボストングローブ=ホーンブック賞、全米図書賞、マーガレット・A・エドワーズ賞など数々の賞に輝く

「2021年 『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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