カラマーゾフの兄弟(上)(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 同様のレビューは数多あるが、ドストエフスキーの小説は非常に読みづらい。海外文学にありがちな、同一人物に対する複数の呼び名(それも唐突に呼び名が変わったりする)が代わる代わる登場することがその一因である。
    加えて、本筋であろう吝嗇で悋気なフョードル・カラマーゾフとその三人の息子(実はもう一人……)の女性を巡る、つまりは仲の悪い家族の物語だが、その物語に「神は存在するか」「罪を犯した人間の救済としての、神の赦しとは何ぞや」といった――おそらくはドストエフスキーが最も語りたかったもの――テーマが重なりあうように織り込まれ、読者は(少なくとも私は)、ともすれば、いったい何の話を読んでいるのか、といった置いてきぼりな気分に耐えながら読み進めることを余儀なくされる。ゆえに、物語の進行は遅滞し、父殺しの物語という予備知識をもって読み始めたものの、上巻を読み終わってなお父親たるフョードルは健在である。
    上巻のクライマックスは、やはり上巻の最後での次男イワンが三男の修道僧アリョーシャに語る叙事詩であるところの『大審問官』であろう。シベリア抑留の経験を持つドストエフスキーは、異文化を冷たい土地に閉じ込めた異文化、異端のるつぼのような地に身を置き、異端にも傾倒し、その結果としてスタンダードな西欧のキリスト教的倫理観に感じた違和をこの物語に綴ったのではなかろうか。
    親子での不倫物語、そしてその末の父殺しの寓話としても読める。しかし、この長い物語をもう一つのテーマである「罪に対する、赦し」に注目して読み進めてみようと思う。そうすることで、一世紀以上前に書かれた長い物語は、多くの異文化の疑似体験たりえるだろうし、生きにくい現代を生きていくためのよすがにもなるに違いない。

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著者プロフィール

ロシアの小説家、思想家。トルストイやチェーホフとともに19世紀後半のロシア文学を代表する文豪。

「2008年 『罪と罰 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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