世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史 [Kindle]

  • 朝日新聞出版
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  • 「ガラス」「冷たさ」「音」「清潔」「時間」「光」
    人類が歴史上生み出してきた6つのイノベーション。
    これらのイノベーションが生まれ、世の中に広まり、社会を変えていく過程では、1つの発見・発明が同時代的な別の変化と影響しあい、思いもかけない発展の仕方をしてきた。

    たとえば「ガラス」。
    天然の化合物であるガラスが装飾品として用いられ、やがてレンズとしての用途が見出される。
    時を同じくして印刷技術が発展し、眼鏡が普及、世の人々が遠視であることに気づかされることになる。
    望遠鏡は天文学の発展に寄与し、顕微鏡は生物学や細菌学に長足の進歩をもたらす。
    そして、ガラス繊維をより合わせたグラスファイバーがインターネットの実現を可能にし、スマートフォンの画面にもガラスが使われ、今のデジタル社会を支えている。

    このように「ガラス」の利用を切り口にイノベーションの連鎖を俯瞰することで、人類史を眺める興味深い新たな視点が生まれる。

    さらに面白いのは、イノベーションの連鎖とは、上記のような「王道」ばかりではないということ。
    実は、思いもかけないところで、ある発明・発見が社会の変化とつながっていることがある。

    たとえば、以下のように。

    「ガラス」
    ・鏡によって、人は自画像を描くことが可能になった。それが、ルネサンスを惹起する一因となった。

    「冷たさ」
    ・エアコンの小型化が暑い地域でも快適に生活することを可能にし、亜熱帯地域への人口流動を巻き起こした。米国では南部諸州の人口が増加し、政治地図を塗り替えた。
    ・精子や卵子の冷凍が可能となることで不妊治療・人工生殖の技術が進展し、人口増加の一因となった。

    「音」
    ・電話の発明・普及により、電話交換手という専門職につく機会が生まれることが女性の社会進出の契機となった。
    ・真空管ラジオがジャズを大衆化、アフリカ系のエンターテイナーが存在感を高めたことが、後の公民権運動に影響を与えた。
    ・真空管アンプによる拡声器が、ヒトラーの演説の効果を高め、ナチスの台頭の一助となった。

    「清潔」
    ・塩素消毒により公共のプール・浴場の開業が増えることで、女性が肌を露出する機会が一般化し、ファッションの変化を加速させた。
    ・市販の漂白剤がマス向けの製品として登場し、広告ビジネスの発展の契機となった。

    「光」
    ・石油ランプ・ガス灯により、夜間でも明るみの下での活動が可能となり、雑誌・新聞の発行が増えマスメディアの発展の起点となった。
    ・フラッシュ撮影がスラム街の下層民の生活を世に知らしめ、社会改革の機運を高めた。
    ・レーザーの発明が、バーコード読み取りというイノベーションに連鎖し、大型店舗の生産性を向上させたことで、チェーン店が小売業を支配するに至った。

    イノベーションの発明者が当初まったく意図していなかったところで、社会が進む方向に大きな影響を与えているところが興味深い。

    エジソンは当初蓄音機を「音声の手紙」を送る使い方をするための機器として想定し、一方でベルは電話を遠距離で音楽を伝えて聴く手段として考えていたそうだ。
    現実には、世の中での使われ方が完全に逆になったが。

    いろいろなウンチクを仕入れられるという意味で面白い本だが、それにとどまらず、世の中は人々の熱意やアイデアで発展してきたが、その発展の仕方までを人間がコントロールすることはできない、という視点を得られる点でも興味深い。

  • グーテンベルグとメガネの話。グーテンベルグの活版印刷技術の発明によって、人々に本を読むという習慣が生まれ、自分が遠視だということに気づいた。ガラスがなければ望遠鏡、顕微鏡も生まれず、ガリレイによる地動説の発見、細胞などの微細な構造の発見もなかった。ガラスは現在では光ファイバーに至るまで現代では欠かせない存在だ。

  • 現代社会を作り上げた技術革新についてガラス、冷たさ、音、清潔、時間、光、という六つの切り口で解説された本。

    世界史の本というと歴史上の人物が中心だったり、大きなイベントに焦点が当たることが多いが、「モノ」の視点でその「モノ」の発展が人類や社会ににどのような影響を及ぼしたかという点で、この本は興味深い。そしてその影響は必ずしも発明家が意図しない方向で発達したりする。エジソンは当初、蓄音機が音声の手紙を送る手段として使われることを思い描き、ベルは電話の用途として音楽を楽しむ事を思い描いていたというから驚きである。

    この本を読もうと思ったのはフランス革命などの歴史を変える大きなイベントに興味があり、ただ単に革命というタイトルに惹かれたからだが、歴史を大きく変えるのは、必ずしも一夜にして政権が交代するような歴史的イベントだけではない。何世紀もかけて徐々に技術革新が社会に影響を及ぼし、最終的に私たちの生活は政治的革命と同じように、ガラッと変わってしまう。

    夜になれば当たり前のように電気をつけ、スマホで正確な時刻を確認できる世の中だが、一昔前まで夜の明かりはロウソクのみで夜の読書どころか睡眠の習慣さえも違っていた。正確な時刻を知るには太陽の位置から計る必要があった。私たちは技術革新の恩恵を受けているにもかかわらず、そこにどのような進歩があったのか詳しく知らない。

    この本を読んでつくづく現代に生まれて良かったと思った。そしてこれから新たに生まれる技術革新が将来どのように人々の生活に影響を与えるのか、本書で言う「ハチドリ効果」についても大いに楽しみである。



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著者プロフィール

ライター。7冊のベストセラーがある。訳書は『イノベーションのアイデアを生み出す七つの法則』『ダメなものは、タメになる』『創発』『感染地図』など。

「2014年 『ピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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