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- / ISBN・EAN: 4988105072077
感想・レビュー・書評
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西島秀俊(高倉幸一)、竹内結子(高倉康子)、川口春奈(本多早紀)、東出昌大(野上)、香川照之(西野)ほか
開幕直後、ぶいーーんとカメラがたぶんドローンで浮かび上がったり、
なんでもない庭の緑が風に動く様子や、半透明のカーテンにじんわりじんわり寄っていったり、
妙に飲み物を渡したり置いたり、
大学の窓の向こうでは学生がミョーにはしゃいでいたり、
と思いきや部屋が真っ暗ーになったり、
といった黒沢印の演出で、日常がそのまま異世界になる映画のマジックに酔う。
日本の何でもない家屋が不気味で不吉で、怪奇映画やゴシック建築や廃墟趣味に通じるのだから、マジエクスタシるゥ!
中盤から、あ、これは「悪魔のいけにえ」だ、「マーターズ」だ、と次々と楽しくなる。
心の底へ降りていくには、村上春樹の用いる井戸なんか生ぬるい、鉄扉だ! 拷問器具のそろった地下だ!
と独り興奮してしまった。
この中盤から、サスペンスでもなくミステリでもなくホラーにジャンルを越境している。
展開の都合に登場人物たちが合わせていくことからもわかる。
(ネットの評判がいまひとつなのはここのせいだろう。そりゃ、単独で危険な地下室へ降りていくなんて馬鹿。しかしここはすでに怪奇映画なのだし、構造上ありえない広さなのだし、「羊たちの沈黙」の例もあるし。)
終盤、「電動注射器」の恐ろしさ! 怖すぎて笑ってしまったよ。
もちろんギミックだけでなく、そもそもゆるーい催眠で支配されてしまう人間の不安定さ、殺し合わせるというサイコパスのありかたも。
主役の西島、登場時からすでにサイコパスっぽい顔してるなーと思いきや、どうかしている行動も多く、やはり。(結局は、無理にでもシチューのお裾分けを持っていく竹内も、あの少女も。みーんなサイコパスだよ。)
宇多丸師匠いわく、香川のことがわかったのは西島自身がサイコパスだから。
サイコパス同士の決闘。
さらには西島が勝つ。
これは「CURE」と同じなんだね。
相手を無自覚に超えてしまった、という点、言葉で殺意を明らかにする、という点。
鑑賞後、原作の題材となった北九州監禁事件についてネットで読んで、む、胸糞ーっ。
さらに映画の感想を漁っていて、あの鉄扉が開いたときに空気の流れが発生し庭の半透明カーテンがゆらめていた、と読み、さらにぞぞぞ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
黒沢清監督の『クリーピー 偽りの隣人』、ようやく鑑賞。ブクログの評価がやたらと低いので驚いたけど、観たら納得。冒頭からツッコミ所がめちゃくちゃ多くて、賛否両論映画だと思います。でも私は好きです。
これ竹内結子が出てたのか……。私は昔竹内結子さんが好きな時期がちょっとだけありました。直後に中村獅童と結婚して「くそが!!」(ガンバレルーヤのよっちゃん風)となって、さらに獅童が岡本綾と浮気するという……。獅童に対してはもはや恨みもなにもありません。竹内結子さん、良い女優さんだったと思うので残念です。
黒沢清作品は少ししか観たことない。『ドレミファ娘の血は騒ぐ』『DOOR3』『CURE』のみ。『ドレミファ娘』は置いといて、他のふたつはけっこう怖かった。その怖さは通常の怖さではなくて、不穏な感じ。常に不協和音が鳴り響いてるような怖さです。不条理で変な感じ。
この映画で好きなのは、単純に後半に何個かジャンプスケアのシーンがあるからです。バァン!→ヒイッ!となる。それがなければ★2ぐらいだったかもしれない。ほんとにツッコミ所が多くて、話の前提からおかしい……そもそもタイトルが「偽りの隣人」だし、香川照之は最初からずっと怪しい人だもんね笑。
ただ、他の方のレビューで書かれている「キャラクターの背景の描写不足」という点、これは私は良い点だと感じました。意図的に省略している。竹内結子演じる妻がなぜああいう行動を取るのか?ふたりの間に子供がいないし、想像力で補える部分です。意図的な空白があって、そこが怖い。
西島さんが香川さんに「狂ってる」と言われるけど、私もそう思った。西島さんも狂ってるという話。他の映画でもわりとあるけど、主人公が泥沼にハマっていって、本人がどんどん狂っていく……というパターン。描写不足で、はっきりとそうなってないけど。
私はてっきりバッドエンドになるかと思っていて、そうなって欲しかった。ラストで藤野涼子を撃ち殺すかと思いました。そういうのをかつて作ったのが北野武で、だから私は北野作品が好きなんです。
ちなみに、西島さんも北野武好きで有名ですね。北野武と黒沢清から教えを受けたのが『寝ても覚めても』の濱口竜介監督。
フォロワーさんが黒沢清とポンジュノのことを書かれていて、これ観たら納得。『パラサイト』の元ネタのひとつじゃないかなと。『パラサイト』の元ネタ、私が思ったのは他にトリュフォーの『終電車』(さらにその元ネタは『生きるべきか死ぬべきか』)。
他に『愛のむきだし』なども連想。この映画は隣人との話なので、それだと『レッドファミリー』。こちらは韓国映画なので38度線の社会派要素が入っているけど、『クリーピー』は隣人トラブルやコミュニケーションの断絶の話なので、とても日本的。
香川さんの演技を褒める方が多いけど、けっこう見慣れてしまっているので、いつもの香川照之だった。私が香川さんで一番好きなのはなんだろう……カマキリ先生のウルトラセブンネタ。じゃなくて、鬼平。でもなくて『ゆれる』ですかね。
香川&西島コンビは『MOZU』で、西島さんがメシ食ってるシーンはもはやシロさんにしか見えない笑。
それより藤野涼子さんの演技の方が良かったです。この子は色々やるから良い。今年の大河にも出ますね。川口春奈も好きです。
それで、こういうキャストと、製作委員会に木下グループが入ってるのを忘れちゃいけない。町山さんが以前「社長さんの酔狂」とも言ってたけど、映画がめっちゃ好きで、古い日本映画の特集上映会も協賛していたりする。でも変な会社で、ちょっとズレていて、ガチで評価されている作品は少ないんじゃないかなあ。『クリーピー』もそういう傾向の映画だと思う。キネ旬では評価されてるけど、ヨコハマ映画祭ではベスト10に入ってません。 -
香川照之の顔面劇場。
怖かった。
ただ、怪しい隣人の家に、
とかく警察が一人で行っては駄目でしょうと、
何度も何度も突っ込みたくなる。
あの子はどうなったのとか、
気になるところは満載だけれど、
とにかく怖かったので、それで完結。 -
良くも悪くも黒沢清監督は何を撮っても黒沢清。
俳優陣の演技はいいと思うけれど、それぞれの行動理由がいまいち伝わってこない。どうやら原作ではその辺がちゃんと描かれているらしいので脚本段階で端折り過ぎたのか。というか余計な付け足し
をしてわざわざ意味不明に仕立ててしまっているようだ。(同監督の『CURE』や『カリスマ』と同じ、取り調べの失敗から物語を始めたり)
これは原作の改悪と感じてしまうな。 -
セオリー通りに作った脚本に忠実に(本当に「忠実に」)撮ったという感じ。なるほど黒沢清氏らしさはところどころに見られる。冒頭の取り調べ室の場面は知る者なら『CURE』を想起せざるを得ないだろうし、不吉に吹き抜ける風やそれに釣られて揺れる草木、廃墟、拳銃、死体等などが黒沢清氏らしさを示している。だから、悪く言えば自己模倣に堕しているとも言える(が、カメラワークの遊び方などは確実に九十年代やゼロ年代の黒沢氏から逸脱しようとしているようにも見えるので、私は絶対に悪く言いたくない)。言い方を変えて良く言えばそんなあまりにも生々しい細部が、この話を凡庸な「イヤミス」として整理させ難い野蛮な話として成立させているとも思う。だからどう受け取るかは観衆次第だろう。もう少し主人公とその妻の軋轢や連続殺人犯との交友を丁寧に時間を掛けて撮って欲しかった惜しさと、しかしそれをやってしまうとこの尺では収まらなかったんだろうなと言う悔しい気持ち(?)もあってこの点数に。
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あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。
未解決の一家失踪事件×奇妙な隣人家族
犯罪心理学者が迷い込んだ2つの≪謎≫に隠された真実とは-?
■西島秀俊×竹内結子×香川照之 日本映画界を代表する豪華キャストの共演
主演は、4度目の黒沢清監督作への出演となる西島秀俊。その妻役に竹内結子。奇妙な隣人を香川照之が怪演。更に黒沢組初参加となる、川口春奈、東出昌大、藤野涼子などの若手実力派俳優の活躍も光る。
<第66回ベルリン国際映画祭正式出品作品 ベルリナーレ・スペシャル部門>
<第40回香港国際映画祭クロージング上映作品>
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犯罪心理学者の高倉(西島秀俊)は、刑事・野上(東出昌大)から6年前に起きた一家失踪事件の分析を頼まれる。しかし事件唯一の生き残りである長女・早紀(川口春奈)の記憶をたどるも、核心にはたどりつけずにいた。
一方、高倉が愛する妻・康子(竹内結子)と共に最近引っ越した新居の隣人は、どこか奇妙な家族だった。病弱な妻(最所美咲)と中学生の娘・澪(藤野涼子)をもつ主人・西野(香川照之)との何気ない会話に翻弄され、困惑する高倉夫妻。そしてある日、澪が告げた言葉に、高倉は驚愕する。
「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。」
未解決の一家失踪事件と、隣人一家の不可解な関係。2つの繋がりに高倉が気付いた時、康子の身に【深い闇】が迫っていた。元刑事の高倉が未解決の失踪事件と奇妙な隣人家族のつながりを調べている中で、隣人・西野の無礼なほど無愛想だったり不自然なほど明るく振る舞ったり相手の心理を見抜き操るような奇妙な言動に潜んだ違和感と失踪事件との関わりに気付き西野の闇に引き摺り込まれる展開が、黒沢清監督特有の日常の風景の中に不吉さや不気味さを漂わせた描写や西野の奇妙な言動の中にあるサイコパスの本性、刑事の仕事に未練のある高倉に不満のある心のスキマを突かれて取り込まれる康子と暴力で支配され西野の共犯にされる澪の恐怖とマインドコントロール地獄、後半に登場する西野の家の地下にあるもの、和製サイコホラーサスペンス映画の傑作。西島秀俊、竹内結子、川口春奈の演技も印象的だが、藤野涼子と香川照之の不気味さに背筋が凍ります。