闇に香る嘘 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 第60回江戸川乱歩賞受賞作のミステリー小説なんですが、とにかく参考文献の数がものすごく、余りよく分かっていなかった満州の中国残留孤児の事がよく分かり、非常に勉強になりました。

    また、ミステリー自体も、主人公が全盲である事を活かした数々の仕掛けが織り込まれていて、それがラストでキレイに全て伏線回収されていて、読後感も良かったです☆

    前半部分はいろいろと重苦しい話が続くので、ゴリゴリのミステリーを期待して読んだ人は途中で挫折してしまうかも知れませんが、頑張って最後まで読んで欲しいと思える一冊でした。

  • 中国残留孤児という呼び名は知っていたけど、詳しくは知らなかったのでとても興味深く読みました。
    登場人物全員がなんらかの形でとてつもない苦労をしています。綺麗に終わったけど、全員幸せになりますように

  • 映画シックスセンスを思い出させる最後のどんでん返しが見事。私の亡父が満州からの引き揚げ者であったこともあり、興味深く読んだ。酒を飲むと悲惨な昔話をしたものだが、幸いにも、亡父の家族は生き別れになることもなく無事に日本に帰還できた。その話を、真剣に聞かなかったことが今となれば悔やまれる。亡父も、自分は両親(私の祖父母)の本当の子供ではないようなことを冗談のように話したことがあったが、そしてそれは本当に冗談であったと思うのだが、冗談だとしても亡父にそう言わしめるような、複雑な事実が、戦時中、戦後の混乱時には当たり前のようにあったのだと思う。本書の最後に希望が見えるのが救い。

    同著者の作品は「告白の余白」に続き2作目だが、私の評価は全く分かれた。「告白の余白」を読んだ後は、随分がっかりしたのだが、本作品を読んで、もう一作読んでみる気になった。

  • モチーフは素晴らしいし読み応えもあるのだが、あまりに主人公が疑り深いため、逆にこちらが主人公に対して疑り深くなり、結末がほんのり予測できてしまった。元々を疑り深いキャラクターとして造形したから違和感がないと思ったのかもしれないけれど、それが微妙に逆効果...というか...。
    とはいえ細かい伏線を最後まできっちり回収する手腕は素晴らしい。

  • これも一応"叙述トリック"になるのだろうか?

    いわゆる「映像化不可」のトリックがいくつも使われていて、映像として一目見ることができればミステリーとしては機能しない。
    とは言え、主人公が視力を失った人物ということで、読者"だけ"を騙すトリックではなく、感情移入する主人公も同様に騙される側である点が仕掛けとしておもしろい。

    "映像"を持たないメディアである小説において、この主人公設定はものすごく効果的に機能していて、普段何気なくやっている小説を読むという行為が、ミステリーにおける"手探り状態で謎の真相に向き合う"という行為とリンクしている。

    ストーリー自体は、主人公が"障害者"であることや、真相を探る同期が孫娘の重病にあったり。また謎に深く関係する要素が"戦争孤児"であるなど、ゲンナリするほど重いアイテムが幾重にも重なっている。
    そういう意味で、序盤はちょっと読むのが辛い。

    ただ、それを乗り越えた先にあるのは、暖かく幸せな気持ちだった。
    ただ、その落差が正直あまりにも激しすぎて…。まさかのハッピーエンドに心がついていかないと言いますか。。ちょっと置いてけぼりすら感じてしまったのも事実です。
    「どんでん返し」がハマるのはミステリーの醍醐味のはずなんですが…、ここまであまりにも何もかもが唐突にハッピーエンドに倒れてしまうと、感動の気持ちを育む時間が足りなすぎる気もしてしまった。
    いや、いい話なんですけどね。。

  • 帰国残留孤児の兄の出自に疑問を持ち密かに調査に乗り出す全盲の弟。
    周囲の状況が確認しづらいということで通常の推理作品では起こりえないシチュエーションが度々登場。
    奇しくも自分も主人公と同じ中途失明ということで自らの普段の生活や環境と較べながら読む。

  • 深くて暗い、底知れぬ闇。見たくても見えない、見たくなくても感じてしまう。主人公の葛藤や諦観がビシバシ伝わってきて、居たたまれない気分になった。最後は光が差して胸をなでおろす。その他の著作を是非読んでみたいと思った。

  • ★3.7くらい
    主人公が全盲のため、小説内の風景描写が他の作品と違って新鮮だった。謎が謎を生み次々ページを捲ってしまうストーリー構成だった。
    思った以上に面白かった。

  • よくできている、伏線が回収できてるし、設定が効いている。
    ただ、これには謎がない。
    単なる家族の日常があるだけ。
    言い切ると、単に知らなかっただけ。
    途中の記述が冗長でかなり飛ばして読みました。
    なので、伏線も読み飛ばしていました。

  • 乱歩賞だから普通のミステリで終わるかなあって。
    思ってたけど、違いました。
    社会派推理小説であるのは事実ですが、その中での仕掛けは驚きをもたらしてくれます。本格の面白さ、驚きをこう言う社会派で出すのも含め、今に至る作品ですね。

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著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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