事故により両脚を失った不具者(障碍者のことを差別的に表現しているのか、翻訳当時は差別意識なくそう呼んでいたかは不明)が人生に希望を失っているときに簡単に殺め、悠々自適に豪遊し、美しい女性と何人も関係を持ち、やがて病に倒れ自らも死に至る。
中身のない、薄い人格の主人公の台詞には深みを感ぜられず、また相手の女性にも外見以外の魅力を感じない(カミュはマルトに"ボンジュール、アパランス"と言うのだった)。
主人公やそれを取り巻く女性の、"中身のない"人格を描写することで、異邦人のような"太陽が眩しかったから"に通ずる不条理を描こうとしたのか。
カミュ好きにとっては、未完成作品とはいえ、最後まで楽しめる著書であった。
異邦人の描写やストーリー、主人公の名前など、似通った点が多くあり、盛り上がりに欠けるものの最後までカミュの世界観が楽しめる。とくに、異邦人と同様に、アルジェの美しいまちの描写が素晴らしい。