あなたの知らない脳 意識は傍観者である (ハヤカワ文庫NF) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ■ Before(本の選定理由)
    脳科学系の本はこれまでも読んできた。意識は傍観者、というタイトルも納得。

    ■ 気づき
    想像の5倍くらい攻めていて、とはいえ説得力(エビデンス)があり、打ちのめされた。人間は猿に近い動物だ、というのは簡単だけれど、ここまで脳の働きを提示されると畏怖の念すら感じるし、意識なんてアテにならない、いや、本当に大切なことは意識の外で選択されていることに納得していまう。

    ■ Todo
    驚いた一例:
    ・人間の視覚は目に見えるものを処理するインターフェースの1つであるが、それを口に含んで舌の刺激に変換する装置も実現されており、盲目の方がエベレスト登山に成功している。
    ・動物のバソプレシンを増やすと、本来一夫多妻の種も、一夫一妻の行動を取るようになる。人類も例外では無い。

  • AT1でよく扱われる「アイデンティティ」をどう理解したらいいのか、脳科学から考えることができます。また、氷山モデルで説明される「無意識」をより深く理解するためのヒントを与えてくれる本です。
    その答えは「経験(情報)は脳の中で構築されている」ということであり、「脳にはいくつもの別れた処理プログラムがあってそれがお互いに影響し合い民主制のように働いている」ということです。そしてその多くを人間は普段、意識していません。ここにこそ、LSPがそれらを引っ張り出し、並べさせ、それを整理する機会を与えることの価値があるわけです。LSPで自分の中の考え方を整理することで、どの部分を強調・強化すべきかを脳に教え込む機会を作ることができるということなのです。

  • 「意識は傍観者である」が、この本の趣旨。つまり我々の意識は、無意識が起こす行動欲求を、追認したり意味づけする程度のことしかできないと言っている。だとすると、自由意志とは何だろうか?

  • 人工知能は本当に人間の脳に寄せていっているんだなぁと実感。最近「人間なんてアンドロイドみたいなもん」と思うことが増えてしまった。物事を人のせいではなく脳のせいにし、「なぜそう思考したのか」みたいなことを考えるようになってしまいそう。
    AIの精度がかなり上がってきてるが、いずれ人間と同じくらい省エネにもなっていくのだろうか。

  • ひさびさの満点、面白かった。

  • 人の意識は脳機能のほんの一部でしかなく、主役とは程遠い。心肺や発汗など脳機能のほとんどに意識はアクセスできず、テニスのサーブなどに至ってはできない方がうまくいくのである。
    また脳は生い立ち、環境、特性、腫瘍、薬など機能を大きく変えてしまう外的要因が多く、ある行動のどこまでがその人の意識による物なのかの線引きが難しくなってい。今後検査技術や新規の病気発見によってますます純粋な意識による行動が無くなってゆくかもしれない。
    この時、例えば今日では有罪になる事が、後年の解釈では無罪になる事もありうる。しかしそんな法律はあってはならない。

    そこで必要なのは罰則ではなく、脳の正常な機能を維持して、社会に還元させる方法である。薬や訓練による(間違ってもロボトミーはしない)正常な脳機能の維持を目指すべき。

  • ある人が母親を殺害した。
    その人はどうしてもその時の事を覚えていないが、状況証拠からどうやらその人が母親を殺害したことは間違いないようだ。

    調べてみるとその人には脳のある部分に欠陥があることがわかった。
    脳科学によるとその脳の部分に欠陥があると、殺人衝動が沸いてしまいそしてその記憶はすっかり抜け落ちてしまうらしい。
    果たして、この場合その人は殺人罪で罪に問えるのだろうか?

    実はこのケースでは殺人罪で起訴されなかったそうだ。(アメリカで起こった事件だそうだ)
    精神鑑定の結果で量刑が減じされるというニュースはたびたび報道されるが、本書のテーマはこのように法哲学を論じるものではなく「脳」の機能に関するものである。

    科学は発達するとおそらくこの種の判断は今よりももっと厳密にできるようになると思われる。
    今まで殺人罪になっていたものが、脳を詳しく調べると先天的な脳の欠陥によるものであり、結果として減刑されるなど。
    問題は、脳科学が完璧な学問になるにつれて我々の自由意思はおそらくなくなってしまうということである。

    本書を読むとあなたが知らないあなたの存在が見えてくる。

  • 自由と責任。
    意思決定のあり方。
    意識。

    社会的な規範として、当然のものとして受け止められていることがらに、ふと疑問を感じることがある。

    決定の自由があるから、責任というものが生じるのだろう。
    だから社会的な制裁も妥当と社会から認められているのだろう。
    リンチと刑罰は異なる、と皆とりあえずは安心しているのだろう。

    しかし、よく考えたら逆に刑罰があって、リンチへの渇望に蓋ができているから、なんとか社会を安定させることができていて、刑罰を成立させるためには、自由というフィクションが信じられていなくてはならないから自由という概念は存在している、という側面もあるのではないか、と思うことがある。

    市井のおっさんの思いつきアプローチでポツポツと、どちらかといえば社会科学的に考えていたことを、自然科学的なアプローチで他の面から照らしてくれた本。

    素晴らしい。

  • カレーとは何か?と考えるときに、物理的な組成や香り成分の分析などの科学的アプローチも重要だが、より真実を目指すなら脳科学、つまり受信側の分析も必要だろう。
    世界は脳によって「作られている」。意識には、自分のアクセスできない領域がかなりある。というかほとんどである。

  • 脳と意識の本。科学的ではあるが、テクノロジーの話というよりは心理学的、哲学的アプローチで脳と意識について考察する内容。比較的読みやすい。
    この本で特に重点的に述べられているのは、意識の役割が限定的で、無意識下の機能が行動や世界の認識を行なっており、意識はそれを遅れて観察しているとする事。また、我々が認識している世界は本当の世界ではなく過去に経験した記憶を元に脳で構成され、感覚器から入ってくる情報のうち記憶と違う部分だけを修正しているものであるという事。意識は実は脳の様々なパーツでいくつかあるのだが、それを一つになる様に取捨選択してまとめあげたものという事。
    特に印象的であるのは世界が我々の意識が過去の情報と感覚器からの情報をミックスして組み立てたものであるという点。これは過去の記憶が我々の経験する世界を変えてしまう事を意味する。本当の世界と経験する世界をなるべく一致させるために何を意識すべきかを考える材料となった。

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