誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • mp3の歴史の本。mp3の開発から始まり、メインはインターネットでの海賊版音楽の興亡の解説となる。当初、技術力で勝っていたが政治で規格競争に破れたmp3は、違法コピーのデファクトスタンダードとなったことで、主流へと上り詰めた。

    この本の良いところは、やはり違法コピー集団の内側をがっつり書いているところだろう。みんなが好き勝手にコピーを上げているのではなく、きちんと組織だって活動をしているし、規律もある。それだけならば普通の組織と変わらないが、違法コピー集団の特徴は、互いのことを知らない点にある。相手の名前どころか、人種や住んでいるところも分からず、会ったことは一度もない。にも関わらず、一定の秩序が保たれ、組織的に活動がされているのだ。

    違法アップロードの話といえば、日本では「ひまわり動画」の小豆梓周りのネタがあるが、本書を読むとひまわりもあながちネタとは言い切れなくなる。もしかしたらコピペで出回る以上に、実際は組織的に効率よく違法アップロードがされているのかもしれない。

  • もっとも音楽業界が活況だった2000年代における、音楽に人生をかけた人々の群青劇。まるで小説を読んでいるかのような展開に、「事実は小説より奇なり」という言葉を感じさせる重厚な物語だった。とにかく著者の取材力が凄まじい。

    当時は私もP2Pサイトで音楽をダウンロードしていたが、「なぜ無料でダウンロードできるのか、どんな仕組みになっているのか、どこからリークされているのか」などと深くことは考えることなく、単純に無料で音楽を楽しめることを喜んでいただけだった。お恥ずかしい。

    どんな巨大産業も、新たなテクノロジー1つで破壊されてしまう。テクノロジーの進化を受け入れ、新たなビジネスモデルを常に考えていくことが産業を発展させていくことに重要なのだと感じた。

  • たまたまが重なっていまのサブスク当たり前時代がきた。

    mp3が開発されたことでCDの時代が終わった。
    mp3ができたことでファイル共有ソフトによる海賊版が出回り、音楽がばらまかれた。
    いつの時代も誰かの努力によって新しい技術が現れ、
    その影響で衰退するもの、繁栄するものが必ずある。

  • 2000年台に音楽に熱中しCDを買い漁りMP3を知りP2Pやトレントにハマった事もある正に直撃世代の自分にとっては、とても興味深かった。特にCDが一般化するかなり前からストリーミングサービスが構想されていたという事実には驚いた。
    当時感じていた疑問や違和感が10年あまりを経て解消したようで嬉しい反面、MP3とCDとの音質の違いを人間は聞き分けることが出来ないだとか、人間の可聴域外の音は無駄であるというような論には今だに同意出来ない(やっぱり聴けば分かるんだよなあ……)。

    近年日本では漫画村による出版物の著作権侵害が注目される事になったが、この音楽業界によるとてもわかり易いケーススタディを出版業界はなぜ活かすことが出来なかったのか甚だ疑問である。電子書籍によるビジネスモデルや読み放題サービスの構築に取り掛かるのがあまりにも遅すぎるように感じる。

    この本の出版から数年経ちストリーミングサービスが充実していく一方でレコードやカセットテープのリバイバルブームが起こる等、音楽市場はさらなる移り変わりを見せているので、著者には今作で語り残した部分も含めて続編を期待したい。

  • 今では普通に普及しているmp3の誕生から、当時音楽市場を牽引していたやり手のCEO、そしてそれらの音楽を世界で1番ネット上に流出させていた工場労働者の存在など、それぞれに行った綿密な取材を元に描かれたノンフィクション作品。
    ヒップホップにはまっていたミレニアル世代にとっては懐かしい名前がたくさん登場するし、mp3が登場しなければiPhoneやスマホの普及はあと10年くらい遅れていたかもしれない。
    技術の登場と法の整備が追いついてないことが新しい技術の登場にも一役買ってる面白さがあった。

  • mp3の成立までの歴史や、海賊版の顛末など、興味深くはあるが、特に読む理由が無かったな・・・。

  • ☆違法コピーが溢れ出す。

  • mp3の規格の成立からそれが違法コピーに使われていった過去とそれをめぐる音楽業界の攻防がまとまっている.扱われている時代が90年代で,出てくるアーティストやエンジニアも知らない人が多かったが内容が非常に面白かったのですっと頭に入っていった.ジャンルとしてはノンフィクションだがどの人物もしっかり書かれているのが面白い.mp3を生み出したフラウンホーファー研究所やレコード会社のCEO側はもちろん,CDを盗みインターネットの海に投げ込んだ盗人側にもよく記述できている.というか全体を通して情報量が半端じゃない.どちらのサイドにも正当性があるかはさておいて言い分がはっきりしているし両者への対抗策に抜かりがない.だからこそ終盤の攻防が映画でも見ているようなスリリングさがあるように感じる.舞台は90~00年代の話なのでこの時代を生きた今の40代くらいの人にとってはより一層リアルに感じるのだと思うとちょっとうらやましい.これがその時代の音楽に精通していた人ならなおさらだろう.私にとっては挙げられる例の多くが知らないものだったのでその都度Apple Musicを使って雰囲気を掴んでいった.確かに盗人側が好みそうな音楽として挙げられてたものはそうだなと失礼ながら思ってしまったしこの行為もこの本で起こった出来事なしでは出来ないことだ.もう少し世代が若いと歴史小説みたく感じるかも知れない.この本が良くなかった点があるとするなら,登場人物の名前や音楽作品は当然海外の作品なのだが,それが全部カタカナ表記な点と右開き縦書きな点である.この本に限った話ではないが,翻訳本はすべて左開きの横書きにしてほしい.特にこの本は例示に挙げる作品が多いので目立つ.縦書きだと読みづらくてしかたない.なんなら固有名詞はカタカナで表記するのではなくアルファベットで表記してほしいがここまで来ると大多数の顧客のニーズにそぐわないので原書で読めとなるが.私が電子書籍リーダーにhontoを選んでいる理由もそれだ.もっと知名度があがってもいい良機能だ.それはそれとしてこの本は登場人物が結構多く最初のページに相関図があるので縦書きに抵抗感がない人は本のほうが良いかもしれない.

  • 音楽の在り方が大きく揺らいだ2000年代、考えてみると、私自身が一番音楽、主に洋楽ロックを聴いていた時期に重なると思う。ただ、自分自身はアナログな方で、本書で描かれているようなmp3の勃興にはあまり関心がなかったが、それでも当時の雰囲気を再体験するようなところはあった。本書は3つの軸、mp3を開発したドイツの技術者たち、ヒップホップ勃興の時流をつかんで主役の座に躍り出たユニバーサルレコーズのモリスCEO、そして、ユニバーサルのCDをリークしたアンダーグラウンドのシーン、とりわけCD工場の労働者であったグローバーを辿ることで当時の音楽の在り方の揺らぎ(というか崩壊だろうか)を描き出す。mp3開発の物語も面白い(mp3がまさか連戦連敗の歴史から始まっていたとは知らなかった)が、やはりmp3ファイルの交換とビットトレントを通じて形成されたアンダーグラウンドのシーンがとりわけ興味深い。リリース前のCDのリークを競い合うシーンの存在、海賊版を中心としたアンダーグラウンドの思想。トレント・レズナーもファンを公言したというオインク・ピンクパレスがサブカルチャーとして成り立っていたことなども興味深い。2020年になって、音楽の在り方はさらに変わっているが、いまもどこかで私にはわからない動きが現れているのだろうか。

  • CDという物理的概念をぶっ壊したmp3も、結局ストリーミングにより使われなくなるのね。

    インタビュー調は正直つまらなかった

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