問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論 (文春新書) [Kindle]

制作 : 堀茂樹 
  • 文藝春秋
4.00
  • (5)
  • (13)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 68
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (188ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 第2弾とあったんで、前作から買ったのだけど、こちらは日本での講演集のようで、こちらの方が面白そう。

  • フランス人の歴史人口学者による、国家や国際関係について述べた本。専門は、家族や人口、宗教や民族等であり、必ずしも政治経済についての専門家ではないが、説得力ある論理を展開している。各国が抱える問題点を鋭く指摘し、解決の方向性を示している。ドイツの台頭を危惧し、ロシアとイランの安定と中国の不安定を強調している。
    「あなたの話を突き詰めていけば「ヨーロッパを変える」のにふさわしいのは、もはや「仏独カップル」ではなく、「パリーロンドンカップル」だということになりそうです」p28
    「イギリスでは再建、ヨーロッパ大陸では解体が、これからやってくるプログラムです」p56
    「小さな男の子は、戦争が大好き」p79
    「私は熱烈なスパルタびいきでした。研究者として晩年を迎える今となっては、人類にとってどちらが大事かと言えば、もちろん「アテネだ」と答えますが、小さな子供はスパルタの方がすごいと思い、特に軍事力の強さに惹かれるものです」p79
    「ヂュルケームの「自殺論」の統計を見ても、労働者階級の自殺率は低いことが確認できます。もっとも自殺率が高いのは金利生活者です。要するに、高い自殺率は、低い所得が原因ではないのです」p103
    「直系家族の社会は、核家族の社会ほどには国家を必要としません。なぜなら直系家族自体が、いわば国家の機能を内部に含んでいるからです。家族としての団結そのものが「ミニ国家」的です。その分だけ、通常の意味での国家の必要性は弱まります」p130
    「国家こそ、個人の自由の必要条件です。「個人」の成立には「国家」が必要なのです」p133
    「(米国は多様性を認めない)左派・右派を問わず、フリードマンにしろ、スティグニッツにしろ、クルーグマンにしろ、経済学モデルですべてを説明しようとする。実に貧しいものの見方です。世界の多様性を認めない、攻撃的で単純な普遍主義です」p138
    「中国は、経済問題以上に人口問題でより深刻な危機要因を数多く抱えています。とくに急速な少子高齢化は深刻で、10億人の人口ピラミッドの逆三角形構造は移民導入によっても絶対に解決できません」p176
    「ドイツによるシリア難民、中東移民の大量の受け入れは、危険な行為であると言わざるを得ません。文化的な差異というものは、簡単に見くびってはしっぺ返し食うような、無視できないものだからです」p181

  • 刻々と変化する世界情勢。
    日本で暮らしていると、ニュースなどで流れている情報は国内の事件、事故、政治が大部分。
    何かあった時に隣国(東アジア地域)や米国の情報が流れる、というような状況かと思います。

    しかし世界の中で日本がどのような立場にあるのか、隣国や米国は何に影響されているのかを理解するには、欧州や中東など、他の地域の状況を理解しないといけないのだろうなと思っています。
    なので意識して、世界情勢を扱った本を読むようにしています。

    この本は、ソ連崩壊、リーマンショックなどを”予言した”と言われている、フランスの学者・知識人による一冊。
    題名にもなっている英国のEU離脱をはじめとして、現在起こっている国際的な出来事を、著者ならではの視点で解説しています。

    その視点として特徴的だなあと感じたのは、各国各地域の”家族構成”をキーとして、その国の国民の気質、社会構成を論じていること。
    そして、出生率や高等教育進学率などの数値データと組み合わせて、それぞれの国の安定性、将来性を分析しています。

    著者がフランス人ということで、欧州を論じたページが多いのですが、フランス、ドイツ、英国の各国民が政治や社会についてどのように考えているのか、ロシア、米国とどのように向き合っているのか、これまでと違う視点を得ることができました。

    日本や中国についてどのように書かれているか興味があったのですが、専門ではないということで、ページ数はやや少なめ。
    それでも、日本はもっと少子化対策に力を入れるべきであるということ、中国の将来性にはあまり高い評価はできないといったあたりは、視点として取り入れていきたいと思います。

    日本の雑誌への寄稿と日本でのインタビューをまとめた形になっているので、内容に重複した部分は見受けられます。
    それでも、現在の世界情勢への理解を深めるためには、読んで損はない一冊だと思います。

  •  私たちがゾンビイエ制度(日本会議的な)に対峙するのに今一番必要なのは私たちのための国家だ。今の国家は一部のための国家になってしまっている。そしてそれを国家嫌い(特にエリート)が逆に呼び込んでしまっている。取り返すためには直系家族的なものでもなんでも利用しよう。
     私たち(庶民ですらも)はほとんど経済学的にしか人々の営みを観察してこなかったのではないだろうか。それは結局経済学をも歪めたかもしれない。もっと様々な人口統計などの指標にも関心を向けるべきだった。
     イギリスのEU離脱、そしてアメリカのトランプ勝利。しかしまだ日本のエリートはその事実の受け入れを拒否しているかのようだ。しかしなぜ、彼らは人間の事実を探求することが苦手なのだろうか。庶民は逆にあまり抵抗なさそうなのに。
     「グローバリゼーション・ファティーグ〔疲労〕」は日本でも起こっていると思う。その胎動をしっかり認識すべきだろう。
     そしてエリートは責務を果たそう。エリートはいかに今の地位を手に入れたのかを思い出して欲しい。そして少々大げさだが映画スパイダーマン第一作のこの名言を贈りたい。「大いなる力には大いなる責任が伴う」
    あのWTCが崩壊後の作品であることも合わせて。

  • エマニュエル・トッドさんの日本でのいくつかの講演を集めてられます。俯瞰して読ませていただくことで、著者の研究の姿勢とそこから見出された結論の揺るぎなさを知ることができます。著者がなぜソ連の崩壊そのほかを予言できたのか。家族のあり方が、政治のあり方にこれほど重要な意味を占めるということ、それが個々人や一族ではなく、その場にあるということ、今までの常識を心地よく修正していただきました。私としては、目から鱗の内容でした。

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。76年、『最後の転落』で、弱冠25歳にして旧ソ連の崩壊を予見し、フランス・アカデミズム界に衝撃を与える。その後、歴史人口学の手法で「家族構造」と「社会構造」の連関を示し、全く新しい歴史観と世界像を提唱してきた。主要な著作として『世界の多様性――家族構造と近代性』(99年)『新ヨーロッパ大全』(90年)『移民の運命』(94年)『経済幻想』(98年)『帝国以後――アメリカ・システムの崩壊』(02年)『文明の接近――「イスラームvs西洋」の虚構』(07年)『デモクラシー以後』(08年)(以上、邦訳藤原書店)などがあり、近年は大著『家族システムの起源』を出版。

「2014年 『不均衡という病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論 (文春新書)のその他の作品

エマニュエル・トッドの作品

外部サイトの商品情報・レビュー

ツイートする