君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日― [Kindle]

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  • 2023/10/27、今月ハマスがイスラエルで誘拐や殺害を行い、イスラエルはそれに対する報復として地上侵攻を行うと言っている。
    このニュースを見て、イスラム教、イスラム過激派組織、ユダヤ教、そういうことが分からなかったため調べ始めた。
    アメリカ9.11同時多発テロ、フランスのシャルリエブド襲撃事件、パリ同時多発テロ、神は偉大なりと叫んでいたと添えられる自爆テロ、湯浅誠が話していた難民のこと、難民がぎゅうぎゅうの船に乗って逃れる途中で溺れて亡くなった幼い男の子の写真のニュース、今までこういったニュースを聞いていながら私は深く知ろうとしてこなかった。

    安田菜津紀さんをどこで初めて知ったかは覚えていないが、いつからか安田さんのSNSをフォローし続けていたた。
    イスラエルとハマスのことが起きてから、安田さんが今まで発信してきた国のことかなと思い、安田さんの情報発信に注意を向けた。
    ガザに住む安田さんの友人が英語で語るメッセージや現状が安田さんを通して日本に広がる、このように大々的にニュースになる前のガザの様子を安田さんは写真に残してきていたことを改めて知る、安田さんのやってきたことはこういう役割や効果のある大切なことなんだなぁと今になって思い知った。

    正直、ガザ地区に子供が多いことが不思議だった。
    失業率が45%以上、普段から電気供給に制限がある、支援物資に頼っている部分が多い、と聞き、そういう状況が10何年も続いている中でも、子を産もうと思うのかな?と思った。
    そこに行ったことも、話したこともなく、そこで暮らす人々のことはわからないからなんとも言えないが、私には想像し得ないものがあるんだと思う。
    この本で、シリアからヨルダンに逃れ難民キャンプで暮らす女性は教師として働いているが、妊娠していたという。
    彼女は難民キャンプに来るまで又は妊娠するまで、普通に暮らしていたんだろう、だから子を作れてんだろう、難民になることを予期していなかった、突如普通の暮らしができなくなった人々なんだと改めて思った。

    難民キャンプに住んでいると労働が許されていない、キャンプの生活は最低限のもので寒くトイレ状況も悪く皆外で家を借りて住みたい、お金を得るために不法労働をはじめる、そういう仕方なさがあるんだなぁ。

    難民キャンプで暮らしている子に将来の夢を聞く、キャンプの中で出会う大人たちしか見えない子供たちが描く夢。
    働けない親や周囲の人を見ながら、では何のために勉強するのかと聞かれても答えられないという。

    初めは、歌や声だけで訴えかけていたが、それではどうにもならず、逆に暴力を受けたことで、どうしようもなく武力で争うようになったこと。
    なんだかなぁ。

    私が中東情勢、難民の生活、巻き込まれる人々についてたくさん知っても意味があるのか?と思ってしまった。
    私が知ることも大切だが、こういうことが起きているということを人々に伝えなければならないと思う本だった。今まで読んだどんな本よりも。
    この本を読んで自分を磨くとか、勉強するとか、自己投資にするだけではいけないなと思う本、身近な人にうるさがられないように語り、伝え、なければ、私も周りの人々を大切にしなければと、思わされる本。

    シベリア抑留について書かれた『望郷』を読んだとき、自分の知らない人間の領域はこんな感じなのかと思った。
    それと近い知らないことが書いてある。

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著者プロフィール

1987年神奈川県生まれ。フォトジャーナリスト。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『国籍と遺書、兄への手紙―ルーツを巡る旅の先に』(ヘウレーカ)他。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

「2024年 『それはわたしが外国人だから?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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