◆ 堕ちていく… ◆
物語の元とされてい2001年におこった
附属池田小事件。忌まわしいあの事件の犯人が、本作で事件を起こす葛城 稔という設定になっているらしいのだが…
父親の葛城 清役に扮した三浦友和のやさぐれ感、屁理屈、小言の雨あられに唖然となる。
南 果歩が演じた母親の伸子は専業主婦として夫に服従してきたようなのだが…
引きこもりの次男:稔や長男:保のリストラなどから、夫の清とぎくしゃくしだした勘があり。
家族のために食事を作るということが出来ない主婦へと堕ちていた。コンビニ弁当や、お湯を注ぐだけの食事を家族全員でしている光景の異様さそれだけで、心に暗雲が一気にたちこめてくる。
次男が凶行に及び死刑囚になり、その彼を救うべく現れる、田中麗奈演じる謎の女性:順子。彼女は日本の死刑制度に反旗を掲げ、何と獄中の稔と婚姻し、自分の家族からはそれを理由に絶縁されたとして清のもとを訪ねてくる。
稔の死刑確定後からますます精神を病んでいく母親の伸子は、体を求めてきた夫の清を拒み、「あなたなんて大嫌い!」と吐き捨てる。壊れていく妻をどうすることもできない夫。
やがて、出来が良いと清が褒めていた長男の保はリストラを苦に、謎の自殺をしてしまい…
親から譲りうけた金物店を、潰しこそしないまでも、展ばすこともせず、閑古鳥が鳴いている汚い店にそれでも通ってはシャッターを開け、店番を続ける清だったが・・・
異例の速さで、次男の稔の死刑が執行されたあと、清は荒んだ心を更に荒ませていき、あげくの果てには。。。
観終わったあとで、どっと疲れが出る。何らの救いも得られない。そんな現実、それが、現実なのかもしれない。冒頭でふれた事件が元にあるということを、本作を観終わって知った次第であるが、かと言ってもう一度観なおすという気持ちには今はまだなれない。衝撃が大きすぎるからだろうと思うが、今を生きる者たちの誰しもにいつ起こるやもしれないこうした事件。被害者になるのか、危うくは加害者になるのかは誰にも分からない怖さがある。
現代人のに潜む、《得体のしれない闇の深淵》を、これでもか!の勢いで覗き込ませてくる作品であった。
目を背けてはいけない