裸足の季節 [DVD]

監督 : デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン 
出演 : ギュネシ・シェンソイ  ドア・ドゥウシル  トゥーバ・スングルオウル  エリット・イシジャン 
  • ポニーキャニオン
3.74
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013163492

感想・レビュー・書評

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  • 女性が抑圧される姿と、その中でも精一杯、束の間の若さを謳歌しながらなんとか抗おうとする少女たちの姿を、瑞々しくて魅力的な映像構成の下、愛着を持って描いたことがわかる、トルコ出身の女性監督の作品。

    トルコの辺境にある田舎の村。両親が早世し、祖母と叔父と暮らす、五人姉妹の長女ソナイ、二女セルマ、三女エジェ、四女ヌル、そして、五女のラーレ。

    五人は、学校帰りに男の子たちと海で騎馬戦遊びをしたことを、家族や周囲にひどく咎められ、学校にも行けず、家に監禁されてしまう。
    息苦しい監禁生活に疲れ、自由を求めて、五人はつかの間秘密の外出を決行するけど、事態はより悪化してしまう。

    祖母や叔父の強制のもと、チャッカリ者の長女ソナイは運良く付き合っていた彼氏と結婚できたけど、二女セルマは望まない相手に無理やり嫁がされる。
    そして、同じく望まない相手と結婚させられそうになった三女エジェは、壮絶かつ悲惨な選択をしてしまう。
    そして、今度は四女ヌルが望まない結婚を強いられた時、五女のラーレは、以前から計画していたある行動に出て…。

    姉妹たちの置かれた境遇は、日常でまったく男女差別を感じないわけではないけれど、日本で自由を謳歌する私からすれば、極端な男尊女卑を軸にひどく時代遅れで、とても不当なものに思えます。
    特に、10代前半の子が学校にも行くことも許されず監禁されるなんて、もはや、虐待レベルです。

    実際、彼女たちは、あがいても逃れられないその境遇に苦しんでいます。
    同性としては、とても胸が痛いシーンも多いです。

    それでも、この映画の魅力的な部分は、幼いゆえに反発心旺盛でお転婆な五女ラーレの視点を中心に構築された少女たちのもがきと、大胆な行動の描かれ方の等身大な姿、そして、どんな境遇にいても、姉妹たちが寄り添っている時の映像の美しさのおかげでしょうか。

    自然光らしい柔らかな光や影を巧みに取り入れた映像の中で、仲良く床にだらしなく転がって悪ふざけしてみたり、ケンカしてみたり、悲しく不幸な時は、微動だにせず、虚ろな表情でただただピタリと身を寄せ合っていたり。(ただ、最初は五人だったのが、一人、また一人と欠けていく様は、やはりつらいですが…。)

    五人の、まだあどけなさが残る表情や、ゆらゆらとなびく長い髪、いかにも10代らしい華奢でしなやかな肢体、ジーンズやキャミソールのカラフルなファッションなども、とてもかわいらしく魅力的に撮られています。

    そして、登場する大半の男性が、女性を所有物として支配し、抑圧するように描かれている中で、ラーレに手を差し伸べる男性がいることにも、わずかながらですが、救われる気持ちになります。

    反乱を起こしたラーレたちが辿り着いた先の、決定的な結末は描かれないままで、観ているうちになんだか姉のような気持ちでだんだんと感情移入してしまっていた身としては、彼女たちはどうなるのか(どうなったのか)不安になると同時に、幸せになることを切に願って見終えた作品でした。

  • 『裸足の季節』(ギュネシ・シュンソイ)
    5人の娘は両親を喪い、トルコの小さな村で祖母と叔父の手で育てらていく。
    前半部分で映し出される、自由気ままに振る舞う5人の娘たちを見ていると、1980年代後半のアイドルグループ“おニャン子クラブ”に胸を弾ませていた感覚が蘇ってくる。
    それが、一転して、そんな彼女たちの振舞いが近所の女性の非難を生み。祖母、叔父の教育の仕方を猛省させることになっていく。

    家族というのは、親が培ってきた文化を子どもを育てていく過程で、自然と継承していく場であろう。時代の変化のスピードが著しく早くなった現代では、一世代であってもその始めと終わりでは全く違った価値観が社会を席巻しているので、私の若かった頃には親子の間でもジェネレーションギャップ強くを感じることが多くあったが、最近ではそれはもう口に出すことでもない当然の日々の現象の一つになっている。
    そんな、現代のトルコの小さな片田舎で、“両親”という一世代を通り越して、祖母と叔父が文化の襷渡しをすることが、この5人の娘に人生の試練を引き起こす。
    生きていくことに“何が正しい”なんていうこともないし、“何が幸せ”になるかは、歩んだ後にしか分からないから、このトルコの片田舎の文化も祖母、叔父の教育も否定はできない。
    ただ歩んであるときに「こう生きたい」という自由意志の欲求をぶつける対象が無かったことが、この映画を観ているときに息苦しさを感じた理由にあるなのかもしれない。
    一番下の末娘ラーレの視点で見つめた姉たちの姿でこの映画が描かれていることが、ラーレの気持ちも同様であったことをうかがわせる。

    最後にバスの窓から都会イスタンブールの景色を観たときにラーレと四女ヌルの胸中に訪れた感覚を想像するだけでも充分楽しめる。

    私が社会人になって、不仲だった両親から離れるために、家を出たとき引越しのトラックの助手席に乗せてもらった記憶が蘇るが、そんなチッポケな感覚じゃなくて、複雑で、道なき道を歩んでいる実感(大きな不安と小さく確実な期待)がまだteenagers の彼女たちの胸に広がっていたに違いない。

  • 美しくも胸が苦しくなる作品

    朧気に映す光の表現、娘たちが戯れる瑞々しさが美しいが、保守的な叔父のもとで閉じ込められた境遇の中の美しさという点が悲しさを際立たせる。

    ジェンダーの観点から娘たちの環境を非難するのは容易いながら、映像表現の美しさがその環境を強いるものたちの視点を観客に突きつけているようにも見える。「ほら、君たちも『美しい』と思ってしまったろう?」と。考えすぎだろうか。

    自殺した三女の結末が一番つらい。レビューを書くにも気が重い。

  • ストーリー展開は予想通りで特に予想外の展開が起きたりはしないけれど、父親や祖母やその知人たちからの抑圧や教育シーンは辟易とするのだが、その中で主人公や姉妹たちがそれを打ち破ったり、掻い潜って自らの楽しみを獲得するところがすごいタフだなぁと思いました。

    なんというか、ここまで大っぴらな抑圧(家に監禁して外出を制限したり)はおそらくほとんどないのだろうけど、それでも明らかに抑圧は存在して、その中で生きるたくましさや抜け出す力の描き方が、あまりに力強いというか、いい子じゃなさがバーーンって溢れていて、私自身がすごい萎縮してるなと気づいてしまった。

    例えば、主人公が内緒で車の運転を教えてもらうシーンでクラクションの存在を知り、面白がって何遍もクラクションを鳴らすってシーンなどは、内緒でやってるわりに大胆だなとか男だって危険を犯して教えてるんだからそんな事すんなよとか思ってしまい、いやいやその感想どうなんだよと我ながら失望した…。

    これくらいたくましく勇気のある行動が取れる女として生きていきたいと思いつつ、我ながら随分と違う女になりつつあるな。

    あと、こういう作品にこんな事言うのもあれですが女の子は本当に可愛かったし、風景や家の中の小道具どれをとっても美しかった。

  • トルコ郊外の田舎に美しい5人姉妹が暮らしていた。
    両親を亡くし、祖母の家で叔父と祖母が親代わりとなって姉妹らと暮らしていた。

    そこは、年頃の彼女たちにとっては、あまりにも理不尽な因習の残る土地柄であり、祖母は封建的な教育の元に姉妹らを外の世界から隔絶し、部屋の中のみで生活させていた。本編には柵の中で遊ぶシーンがあり、自宅軟禁状態といっても過言ではない。
    女性としての自由を完全にシャットダウン(結婚条件=処女)し、親の決めた結婚相手の子供を産み育てる、、という一昔前の日本を現代まで厳格に引きずっている様な風土が残る。

    天真爛漫な末っ子ラーレはその状況に違和感を一際抱いていた。ラーレはすぐ上の姉ヌルと大好きな先生の元へと家を飛び出して、馴染みの兄ちゃんにトラックに乗せてもらい、イスタンブールに住む女性教師の元にたどり着く。

    5人姉妹の人生は、封建社会と男尊女卑の思想に翻弄された。長女は須らく恋人であった男性と結婚でき
    自ら自由の名の下に幸せを勝ち取るも、次女は心の通わない、全く知らない男性と強制的に結婚させられる。三女のエジェは、叔父から性的虐待を受けたと思われるシーンがあり、何と言っても残酷。。というか下卑た匂いを強烈に放つのだ。
    そのシーンは淡々と描かれており、叔父からの性的な道具となるのは、さもありふれた光景の様に自然に収まっているのだ。何のこともないだろう?とでも言われたかの様に描く事こそが、因習の恐ろしさ、虚しさ、悲劇性を際立たせている。

    三女のエジェは、美しい花が無残に刈り取られる様に
    、運命を放棄する意味で自死を選び、祖母は悲嘆に暮れ、残された妹たちはやりきれない現実を目の当たりにし、自分たちの運命を見つめ直すのだ。

    5人姉妹の青春を因習が齎す明暗ともに描き分け、ラストは、その因習に争い、そこから解放された爽快感と今後の展開を期待させる。外に飛び出す勇気と行動力が本作の救いとなっている。

  • 設定がヴァージン・スーサイズに若干似ているのだが、こっちのほうが抑圧/抵抗/解放のロジックが婚姻制度とかとして描かれているぶんわかりやすい

  • 途中でオチがわかったものの、楽しめた。残暑によいかも

  • 強い意志を持つことでやっと美しく生き延びられるような窮屈な街。運転手のヤシンがくれる純粋な手助けがあたたかい。
    c.f.籠の中の乙女

  • 2016/12/31

  • MUSTANG
    2015年 フランス+トルコ+ドイツ 94分
    監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
    出演:ギュネシ・シェンソイ/ドア・ドゥウシル/エリット・イシジャン/トゥーバ・スングルオウル/イライダ・アクドアン
    http://www.bitters.co.jp/hadashi/

    端的に言うとトルコ版「ヴァージン・スーサイズ」。厳しい保護者により自宅に監禁された美しい5人姉妹の物語。「ヴァージン・スーサイズ」同様、5人姉妹はそれぞれに違う美しさがあり、姉妹でキャッキャとくっついて戯れてるさまはそれだけで目の保養。映像的にはソフィア・コッポラにも劣らないガーリーな色彩で、ベッドやシーツの色もピンクを多用してありとても可愛い。ハエ叩きですらピンクでお花型(これ欲しい)。

    とはいえ、彼女たちの辿る運命はキュートなガールズムービーのそれではない。トルコの片田舎、ムスリムの古い因習が残る中、5人姉妹は10年前に両親を亡くして祖母に育てられているけれど、横暴な叔父が彼女らに干渉してくる。無邪気な姉妹が男の子たちと海で騎馬戦をして遊んでいただけで、目撃した近所のおばさんは「男の首を股ではさんで快楽を得た」みたいな告げ口をする。おいおい、その発想のほうがよっぽどゲスだよ!とこちらは思うのだけど、トルコではそうではない。姉妹は早速病院へ連れていかれ、処女であるかどうか検査される。処女でなければキズモノとされ嫁に行けなくなるから。

    あげく横暴な叔父は家の窓に鉄格子をつけ、柵をはりめぐらし、姉妹を学校にも行かせず家の中に軟禁する。それでも脱走をかさね、姉妹揃ってサッカー観戦にでかけたり、5人揃っているうちは彼女たちはめげない。最初は厳格に見えた祖母も、横暴な叔父に比べたら少女たちに優しいし、近所のおばさんが、姉妹のサッカー観戦が叔父にバレないようにある行動をするところはとても微笑ましかった。しかし脱走がばれてどんどん監禁度合は厳しくなり、さらに姉妹は上から順番に結婚させられていく。

    恋愛結婚できた長女はまだ良かったけれど、次女以下、あちらの「お見合い結婚」のやり方にはビックリ。日本だと両家揃って顔合わせしてもその後は「若い二人で」となり、数回会ってから決めるなり断るなり判断する自由があるけれど、あちらでは顔合わせ、即その場で婚約。もちろん形式的なもので断る余地はない。さらに次女は「初夜」で血が出なかったため(なんとコトのあと夫の両親が夫婦の寝室に血痕を確認しにくるしきたり)処女性を疑われまたしても病院へ。この侮辱、屈辱。

    そして一番腹立たしかったのが、そうまでして処女性を重視し、結婚前に「ふしだら」なことをしないようにと姉妹を厳しく監視しているにも関わらず、当事者である叔父が、長女次女が嫁入りしたあと、三女におそらくは「性的虐待」を加えていたこと。このオッサンにはマジで殺意を覚えました(怒)長女と次女が同時に結婚式を挙げる前、恋愛結婚である長女が自分はまだ処女だと次女に打ち明けるくだりで、なぜかというと結婚前は「後ろの穴」を使っていたからだと言う、この一見姉妹の他愛ない秘密の会話が、実はつまり叔父の手口をほのめかしていたのかと思うとゾッとする。そしておそらくは叔父から受けたその行為で心を病んだ三女は自殺。

    四女にまで叔父の手がのび、気付いていても祖母は守ってくれず、四女の結婚話がもちあがるに及んで、ついに末っ娘ラーレ13歳は大掛かりな反逆を企てる。それにしても姉妹への監禁っぷりはもはや異常。彼らの基準では「しつけ」なのだろうけど、先進国の感覚では明らかにここまでやったら「虐待」。しかも叔父はロリコンのクズ野郎。強い意志をもって戦い、逃走のために車の運転も前もってマスターしておくラーレが逞しく頼もしい。彼女を助けるトラック運転手のあんちゃんが良い人で良かった。

    二人はなんとかイスタンブールの先生のところまで逃げ切るけれど、その先の彼女たちの人生がどうなるかはわからない。悲惨なことも起こるけれど、基本的にはイキイキと眩しい姉妹たちの魅力が素晴らしく、前向きで明るい映画だと思う。

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