SMAPと平成 (朝日新書) [Kindle]

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  • 朝日新聞出版
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  • SMAPについて語ると収拾がつかなくなりそうなので…小学生の頃中居くんが好きすぎて、こんなに好きだと私は中居くん以外とは結婚できないのではないか→しかし人生において中居くんと巡り会える確率は限りなく低い→よって私は結婚できない、というところまで思い至っていた過去を告白するに留めることとします。

    この本は、あとがきに書かれている通り、木村拓哉の魅力を解剖するとか、SMAP解散の真相だとか、SMAPが変えた何とかとか、そういうことを書いた本ではありません。平成の歴史とともにSMAPの軌跡を記したものです。もっとも多くページが割かれているのは、結成からテレビ界制覇そして森くん脱退までで、以降は印象的なシーンの点描となっています。

    浅い、物足りない、といえばそのとおりかもしれない。でも、それほど熱心なファンではなかったけれど彼らの解散を受けて自分でも意外なほどに喪失感を抱いているような人が、主観や憶測にまみれたネットの記事では飽き足らず、なるべく公平で事実(あるいは関係者本人の言)に即した彼らの足跡をたどりたいと思ったときに、この本は最適なのではないでしょうか。

    私とて、冒頭に書いたようにのめり込んでいた時期もあったけれど、実際のところファンクラブに入ったりもしていないし、見ていないドラマや知らない歌もたくさんあるし、正直、この解散騒動によって好きだった気持ちを猛烈に思い出しているだけで、近年の彼らの活動は全然チェックしていなかったというのが実情です。

    この本を読んで、私の知らなかったSMAPの活動内容を知ることができたのはもちろんのことながら、知っていた情報について読んでいるときに込み上げてくる「ああ、あのころ」感、これに熱くなるものがありました。

    「SMAPと平成」というタイトルですが、それって昭和59年=1984年生まれの私にとっては、まさに物心ついて以降の私の記憶とほぼイコールなんですよね(それでいうと平成27年生まれのうちの娘も、平成を知らない平成生まれになるのでしょうねえ)。
    さらに、本書によるとSMAPブレイクの年である1996年(スマスマ開始とロンバケ)から、世界にひとつだけの花で初めて年間オリコン1位となった2003年3月、この期間はちょうど私の小学校6年生~高校卒業の年にあたり、いちばんよくテレビを見ていた年ごろでした。新曲が出ると覚えるまで聞いていたし、今シーズンのドラマには誰が出るかもきちんとチェックしていた(スマスマを毎週見ていたことは言わずもがな)。だから、この時期の彼らのどんな活動も思い出深くて。。。

    これもあとがきで述べられていることですが、筆者の中川右介さん(1960年生まれ)はアイドルでいうと山口百恵、松田聖子、中森明菜、郷ひろみ、田原俊彦、近藤真彦といった世代で(私は読んでいないけど中森明菜と松田聖子の本なんかも書いておられる)、SMAPは一世代下。だから、去年出された「SMAPは終わらない」「ジャニーズと日本」といった著書で「SMAPにもろに影響を受けてきた」と述べている1983年生まれの矢野利裕さんと違って、良い意味で冷静な距離感があるんですね(とはいえこちらも良い本よ!)。アイドル論とか文化論とかそういった方向に熱くなることはなく、淡々と歴史が綴られていることで、かえって読んでいるこちらが勝手に熱くなってしまうのかもしれません。その点、今上天皇及び皇族の活動や政局の動きがSMAPと並走するように描かれることも、その一助となっているのでしょう。

    なんというか、タイトルに偽りなし、SMAPと平成、そして私、といった読書でした。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。「カメラジャーナル」「クラシックジャーナル」を創刊し、同誌のほか、ドイツ、アメリカ等の出版社と提携して音楽家や文学者の評伝や写真集などを編集・出版。クラシック音楽、歌舞伎、映画、漫画などの分野で執筆活動を行っている。

「2019年 『阪神タイガース1985-2003』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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