- Amazon.co.jp ・電子書籍 (122ページ)
感想・レビュー・書評
-
芥川賞受賞者なら元ひきこもりでもなんとでも言えるよな~と思いながら読みましたが、説得力がとてもありました。何もせずただただ書いていたというのも才能のひとつなのでしょう。こんな境遇、私なら不安だし、書きながら小遣い稼ぎバイトなんかしちゃいそう。やはり確固とした芯を持っている人の言葉は説得力を持つのでしょう。著者のお母様も偉い方だと思います。孤独論だけでなく仕事論人生論にまで発展して、やさしい口調ながら力強い主張でした。変人だなと思うけど、私はこの作家わりと好きです。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この方は作家として結果を残せたからいいもののそうでなかったらこんな事を言えないだろう。
そもそも、言い方は悪いが親のスネかじって引きこもりでずっと生活していた人が、社畜やブラック企業勤務で心身疲労困憊している人たちに「逃げてもいい、逃げよ」と言ったところでその言葉を受け入れるのは少し複雑だ。そもそもそういう環境下にいないからこそ奴隷にならざるをえないわけで。
ただ言っていることは理にかなっているしサッと読めるので学びにはなる。 -
「共喰い」で芥川賞を受賞した筆者による、
生き方の提案の書。
組織に縛られて雁字搦めになっていると感じる方には、発見があるかと思う。
ただ、
孤独に、ここまで耐えられるかどうかは人を選ぶかもしれない。 -
つまるところ、わたしが作家になってもっとも変わったのは、その覚悟の度合いです。 霧が立ち込めて見通しが利かなくなっても、わたしは山を登るでしょう。腹を括れば、たいていのことはなんとかなる。なんとかならなくても、なんとかする。書く、書き切る。
-
孤独に耐えて、やるべきことをやった先に、望んだ未来が来るかもしれない。
-
時間拘束に加え思考的にも仕事から離れられないのは奴隷状態、逃げ出すべき親元に引きこもるべきと作者は言う。現実、引き込まれても困るので自分で食っていけるようになって欲しい親心。私自身は、仕事が暇になると何したら良いか分からなくなる、何するにも資金が無い、結局のところ奴隷状態が居心地いい。作家として大成したから論じる事が出来るのでは無いだろうか。
-
田中慎弥氏の小説は読んだことがないのだが、kindle版がセールだったのでさくっと読了。新書だし、観念論だし、内容そのものはphaさんとか栗原康さんのような半世捨て人の人々と同じような主張なので、とくにこれといって目を見開かされるようなことは書かれていなかった。もちろん、ご本人の体験から会得した哲学であるのは間違いがないと思うのだが、やはり残念なのは構成とか執筆の部分でライターを使っているので、文章としてのおもしろさに欠けているところ。結局、ふつーの文章で、精彩を欠いていた。
-
914.6
-
SNSの目覚ましい発達で、自分達は、いつでもどこでも誰とでもコミュニケーションできるようになりました。
しかし、誰とでも繋がれるようになっても、今、「孤独」に感じている人は、増えているんじゃないでしょうか。
著者の田中氏は、今の日本では相当異質な方です。小説の原稿は手書き、ネットもしない。携帯もない。
小説を書くことだけをひたすら続けている。その小説も大衆小説ではなく、純文学です。
それで、ご飯を食べているのだから、驚きです。
日本の小説家で、純文学一本で生計を立てている人は、どれぐらい一体どれぐらいいるんでしょうか、
数十人もいない気がします(勝手な予想ですが)。
幼い頃に父親を亡くし、兄弟はなし、家族は母親とおじいさんだけ。東京に拠点を移す前までは、
山口県の下関で、実家暮らし。高校卒業後、定職に一回もついておらず、ひたすら本を読み、
そして、小説を書き、33歳で小説家として、デビューする。
この経歴を見ても、著者の「人生観」を知る価値があると思います。なぜなら、今の時代は変化が激しく、
明日、自分自身が、どうなるかわからないからです。明日仕事がなくなるかもしれない、
会社が倒産するかもしれない。病気にかかったり、親類がなくなって、生活基盤を失うこともありうる。
そういういった可能性は、誰にもあります。いつ、自分が築き上げてきた基盤が揺らぐとも限らない。
人は絶望した時に、多かれ少なかれ「孤独」に陥ります。
著者の凄い所は、自分をさらけ出している所です。開き直っているというわけでも、
絶望しているわけでもない。(失礼ですが)高卒で学歴もない、仕事も経験もない。
自分のスタイルを受け入れつつ(ただ、やはりコンプレックスもある)、
著者の人生観、仕事観を展開しています。
今の日本社会は、努力しても、報われないと思っている方が多いのではないでしょうか。
それは、ある一定の真実だと思います。生まれた時から、不利な状況を背負っている方もたくさんいらっしゃいます。
努力が報われない社会なのに、どう生きていけばいいのか?この視点からでも、この著作は、非常に参考になります。
個人的には、著者の小説にかけた努力と今も継続している努力は、家族の支えがあってのことだと思えました。
厳しい言い方ですが、世間一般の価値観だと、高卒、無職、引きこもりの状態の場合、
どんな理由が、あろうが、日本社会は、かなり冷酷です。
労働市場では、無価値だと判断されます。
一度、労働市場から、退散して、復帰するのは、非常に困難です。
好きなことを見つけ、それに真剣に取り組んで、成果をだす。
その下地は、やはり周囲の支えです。
著者も、著作の中で家族の存在に、言及しています。
では、それがなかったら、いったいどうすればいいんでしょうか?この点だけ、
自分が気になった所です。
なぜなら、多くの家族は、田中氏の以前の状態(仕事なし、引きこもり)を、受け入れてくれません。
その状態が起因として、起こった不幸な事件は、今の日本では容易に探すことができます。
①労働市場に通じる、何か特別な能力がある、②家族が支えてくれる、
この2条件が、まずないと、孤独にも陥れないのが、今の日本だと思います。