自然農法とは何か: ゆらぎとエントロピー [Kindle]

  • 電子園芸BOOK社 (2016年12月11日発売)
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  • 自然農法を俯瞰して、専門的知識も豊かで、ロジカルに説明しているので、わかりやすい。
    私は、福岡正信の自然農法のアプローチの手法がよくわからなかったが、この本を読んで、正当に評価できるようになった。
    有機農業の黎明として、ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)とアルバート・ハワード(1873-1947)をあげて、有機農業の始まりを説明している。日本の有機農業の始まりと欧米では有機農業の概念が少し違うような気がしていた。そして、欧米の方が明らかに進んでいるが、シュタイナーの「バイオダイナミック農法」とハワードの「農業聖典」が重要な役割を果たしている。レイチェルカーソンによる「沈黙の春」の警鐘によって、大きく有機農業に進んで行く。レイチェルカーソン(1907-1964)は、徹底した調査と研究者の協力に基づいて「沈黙の春」を書いた。DDTやBHC(ベンゼンヘキサクロリド、水田の害虫駆除、1971年に使用禁止となる)などについて環境への影響について分析した。沈黙の春を書いている時には、がんと告知されていた。沈黙の春を出版して、わずか2年で故人となった。生きていたら、もっと大きな影響力を与えたと思う。その後IPM(総合的病害虫管理)が急速に進むことになった。私も、沈黙の春は、学生の時に読んで、恐ろしい本だと衝撃を受けた。
    「科学的成果が、名声や利潤につながることが多いために、成果だけを強調して、都合の悪いことを隠蔽することがしばしばある」と指摘している。その頃は、環境への影響や生物濃縮のことが十分に検討されていなかったこともある。
    この本の重要なことは、リン資源の枯渇問題があり、そしてリンの持つ土壌における挙動が重要な意味を持っていた。私は、土壌の問題はカリウム過剰と思っていたのだが、最近やっとリン過剰の方が大きな問題だと理解した。難容性リンを吸収する植物をうまく使う手法がいる。
    リン施用は、中国、日本で早くから人糞などが使われていた。
    自然農法の福岡正信(1913-2008)に関する記述は、非常にわかりやすい。なぜ自然農法となったのか?福岡は、理性に懐疑を持った。理性や主体を人間が持つことによって堕落したという。科学とは、知とは何かを徹底的に突き詰めようとした。ヒュームが「印象」と表現したことを「無知・無心・無為」とした。ヒュームの「アイデア」を「悟り」とした。福岡は、何も無いということを理解したのだ。自然には因果はない。原因もなく、結果もないとした。
    自然農法の4大原則①無耕起(不耕起)②無肥料③無除草④無農薬とした。コメ麦連続不耕起直播が確立された。しかし、これは、ビジネスではなく、自分が生きていくために必要なことだった。「草生栽培であり、緑肥栽培」とした。福岡正信は弟子を取らず、福岡の自然農法が伝承されていない。唯一日本では、本間裕子が受け継いでいる。粘土団子の作り方も、「割れない粘土団子をつくること」と本間に伝承されている。自然農法は、自然の道、無知・無為の道で、「何もしない」が出発点となる。自然農法が、救世教に商標登録されていることに、福岡は怒っている。
    自然農法がうまくできず、「自然農」をしている川口由一がいる。「雑草草生不耕起移植栽培」という。草が土を肥沃にする。棚田で「赤目自然農塾」を開いている。
    木村秋則の奇跡のリンゴも紹介している。土壌分析の結果リン酸含量が少なく、可給態窒素、微生物窒素、微生物炭素量が多い。長年にわたって草生栽培をしてきたので、有機物が増えて土壌の団粒化が進んでいる。木村秋則は「山の土というのは、リン酸、カリがほとんどありません。それなのに草木が元気に育ちます」と言っているのは、科学的事実とは違うと指摘しているのがおもしろい。
    エネルギーとエントロピーに関して、ハワードと福岡正信について詳しく説明している。
    やはり、リンに関しての記述が 実に参考になった。
    有機農業の理解を深め、自然農法に関して、極めて概括的な良書である。

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