イスラームの神秘主義思想であるスーフィズムを題材にしたミステリーです。日本人には馴染みのない題材ですが、作中で上手く解説されているため、イスラームについて何も知らない方でも問題なく読み進めることができると思います。私自身もイスラム教については詳しくありません。スンニー派とシーア派の違いくらいは辛うじて知っている、という程度ですが、序盤からストーリーに引き込まれて丸1日で一気に読んでしまいました。
ミステリーとしてはかなり面白い方ではないかと思いますが、最後の種明かしに関しては少々安易なのではないかと思いました。スーフィズムが土着のシャーマニズムと結び付いて独自に発展した宗派だった、という話であれば、実際にそうしたケースもあるようなので納得がいきますが。
そういえば、全体的に京極夏彦氏の京極堂シリーズと通じるところがあるように思います。京極氏の小説に比べると登場人物に癖がなく淡泊なように思いますが、その点は読者によって好みが分かれるところでしょう。