永い言い訳 [DVD]

監督 : 西川美和 
出演 : 本木雅弘  竹原ピストル  藤田健心  白鳥玉季  堀内敬子 
  • バンダイビジュアル (2017年4月21日発売)
3.87
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  • レビュー :43
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4934569647269

永い言い訳 [DVD]の感想・レビュー・書評

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  • 冒頭の夫の髪を妻がカットしてあげるシーン。
    そこからイヤーな感じ(笑)
    明らかに夫が甘えきっている。
    ぐだぐだと愚痴をこぼし、そこには妻に対する思いやりがひとかけらもみられない。
    受け流す深津さんの笑顔なのに微妙なやや固い表情が上手い。

    妻が旅行に出掛けた後、家に若い娘を招き入れる夫。
    浮気かー。あの妙なハイテンションと饒舌はうきうきとはやる心を押さえるためのものか。妻にバレバレっぽいなー。

    そして、妻の旅行先での交通事故。
    夫にとって最悪のタイミングで妻は死んだ。

    妻のお葬式で夫はさめざめと泣く。
    作家の仕事で培った言葉のスキルで「感動的」なスピーチをしながら。

    その後浮気相手が家に訪ねてきて、懺悔の気持ちで泣く彼女を夫は強引に抱く。最中に彼女は呟く。
    「バカな顔」
    そして「あなたは誰の事も抱いたことがないのよ」
    と言い残していく。

    旅行会社の事故説明会で夫が出会ったのが妻と一緒に亡くなった友人の夫。
    夫とは正反対で直情的、てらいがない。
    自分の妻への愛情と悲しみをストレートに表す。
    彼の性格のせいかだんだんと仲良くなっていく。

    友人の夫役の竹原ピストルさんが評判通りとても良かった。
    コワモテの外見と他人にも自分の感情にもまっすぐ飛び込んでゆける強さ。適役。

    もう一人夫のまわりにいる人物で気になる人がいた。
    編集の担当者の若者。
    夫の欺瞞を指摘し、作家として利用(お仕事ですね)しようとしながらも夫をサポートしているように見える。距離感が絶妙。
    妻の死後みつかったスマホに入っていた送信されなかった「言葉」にショックを受け荒れる夫が「俺、どうしたらいい」と呟くと「一緒に考えましょう」と言い水を飲ます。
    演じる池松君が今回もまたまた良かった。
    彼は主脇、硬軟なんでも素敵ですねー。

    子供達も、理科教室の乞音の先生も「ああ、その気持ち分かるよっ」という気分になる。
    主役の夫のイヤーなところも自分と似かよった部分もあり、
    猛省。

    監督の対象を見つめる目は相変わらず鋭く、それを分かりやすく見る人に伝える手腕はさすがです。

    彼が妻を失うという取り返しのつかない出来事の後つかんだ「本当の言葉」とは...。

    字幕付きでした。

  • 2016年 日本 124分
    監督:西川美和
    出演:本木雅弘/竹原ピストル/藤田健心/白鳥玉季/堀内敬子/池松壮亮/黒木華/山田真歩/深津絵里
    http://nagai-iiwake.com/

    売れっ子作家の衣笠幸夫(きぬがささちお)=モックンは、美容師の妻・夏子(深津絵里)にいつも髪を切ってもらっている。髪を切った翌日、学生時代からの親友ゆき(堀内敬子)と山形へ旅行に出かけた妻の乗ったバスが雪道で湖に転落、彼女らは亡くなるが、そのとき幸夫は妻の留守に乗じて愛人(黒木華)を部屋に連れ込んでいた。

    西川美和は、人気原作等に頼らずオリジナル脚本で商業的成功も可能な上に素晴らしい映画を撮れる数少ない監督だけれど、本作でもその力量は圧巻。冒頭の、髪を切りながらの夫婦の会話だけで、幸夫の高慢で自意識過剰なわりに卑屈で自己肯定感が低く他者に攻撃的な性格と、そこそこ売れっ子作家である幸夫の立場、自立しながらも献身的な妻の幸夫へのあしらい方、すでに冷え切っている夫婦関係、でもまるで我侭息子と母のような二人の関係をあますところなく描いていて凄い。

    とにかくこの幸夫のクズっぷりの表現エピソードが上手く、そしてそれを演じるモックンの上手さときたら!なまじイケメンで頭も良いだけにナルっぽく、でも外面だけはいいお調子者、しかし妻や編集者などにはネチネチとしつっこく嫌味や愚痴を言い、酔うと余計なことまで言ってしまう幸夫の性格が、好き嫌いは別にしてとにかくわかりやすく観客に伝わる。

    一方、夏子と一緒に亡くなった親友ゆきの夫・陽一は直情的で単細胞で声の大きいトラック運転手。およそスマートとは言い難い男ながら、妻に対する愛情いっぱい、妻の死にストレートに悲しみを表現する純情一途な男。普通なら絶対に友達にはならないこの陽一と幸夫、そして陽一の子供たち(小6男子と幼稚園女子)の世話を幸夫が引き受けたことで、奇妙な疑似家族が構成されてゆく。

    男としてかなりクズな感じの幸夫だけれど、思いがけず子供の相手は上手く、繊細な息子ちゃんとも、まだ頑是ない娘ちゃんとも、結構ちゃんと打ち解けられるし、ここだけ切り取るとかなり素敵なおじさんだ。その実、幸夫の無意識下には亡くなった妻に対する罪悪感のようなものがあり、若い担当編集者(池松壮亮)に指摘されたように、母を亡くした可哀想な子供たちに優しくすることで妻に対して贖罪する気持ちもあったのかもしれない。

    しかしそれだけでなく、もっと複雑な葛藤があったのだと思う。自分のような人間の遺伝子を残したくない、妻だって俺の子供を産みたくなかたはずだ、と頑強に言い張る幸夫が、接してみれば案外子煩悩だったというこの自己矛盾。妻の死を泣けなかったのは、彼女への愛が冷めきっていたからではなく、生前妻に感謝することをせず愛人まで作っていた自分に嘆く資格などないという気持ちが強かったのもあるだろうし、ただただ認めたくない、現実を認識できない彼の弱さもあったのだろう。陽一を励まし、子供たちを慰めながら、実は自家撞着をおこしていたのは幸夫自身のほうで、そしてテレビカメラの前でそれを噴出させてしまった場面よりも、家族のだんらんの場面で悪酔いしてしまった場面のほうは本当にハラハラした。

    実は幸夫と同じく、母親が死んだときにある理由で泣けなかったと言う陽一の息子の言葉が、実は逆に幸夫を救ったのではないかと思う。クズでゲスで最低だけど、どこか滑稽で憎めない幸夫を演じたモックンはもちろんのこと、出番は僅かながら相変わらず抜群の透明感で本心を読ませないまま逝ってしまった夏子を演じた深津絵里の存在感が素晴らしかったです。子役ちゃんたちも可愛かった。

  • 邦画だからこそできる、繊細な心の描写とストーリーで、「泣く」といった単純な感情表現よりも、もっと複雑で苦しい幸雄の描写が生きた作品。

    妻が事故で死んだ時、彼は部屋で不倫の真っ最中だった。愛も冷めていて、ただ、突然20年連れ添った妻が居なくなり、戸惑う自分がいる。
    全く泣かず、それほど凹まず。作家のスキルを活かして葬式のスピーチはもっともらしく振る舞い、その後はネットでエゴサーチ。
    人間の汚いところ、弱いところを巧みに演出している。

    傲慢で偉そうに編集者に当たったり、モノを投げつけたり。
    いるよなあ、こういう人。
    でも、そんな一見最低の男である幸雄が、本当に根っからの悪いやつじゃなくて、彼なりの繊細さや優しさも持っている。
    人一倍繊細で、傷つきやすくて、自尊心も強い、感情表現が苦手な不器用な人間なだけなのだ。

    妻とともに亡くなった友人の一家で主夫として家事を手伝い、子供達とも仲良くなる。彼らの生活の中で支えになりながら、「人と交わること」で得られる温もりのようなものを思い出す。
    そんな行為を、マネジャーからは「子供達の面倒をみるのは最高の免罪符だ」とズバリ指摘を受ける。
    幸雄なりに妻の死は辛かったが、不倫もしていて最低な自分であるのもわかっていて、そんな状態を受け入れる、昇華するための罪滅ぼしなのだ。

    とはいえそんな自分が、実は妻に愛されていなかったことが分かるメールが見つかり、さらに家族にとっても「要らなくなるかもしれない」というシチュエーションが出てきた。急に不安になり、不器用になり、本音だが言ってはいけないことをぶつけてしまう幸雄。
    これまで素晴らしい関係を作ってきたのに、最後までどれだけ不器用なんだ…。

    自暴自棄に再びなった幸雄だが、家族の危機に再度呼び出され、そこで素直な本音を。
    「自分を大事にしてくれる人を大切にしないとダメだ。そうしないと、僕みたいに誰も愛せなくなってしまうんだ。」
    なんという、脆く、そして確信的な一言。彼の不器用さは、やはり、そういった免罪符の中で生まれてきていたのだ。

    最後は妻とのストーリーを本に書き、みんなと幸せになり、エンディング。本の中では「人生は他者」という一言。これも深い。
    不器用な幸雄が、人と関わり始めるような一歩目なのだろうか。

    憂だ感じや、感情表現がとつとつとしているところ、妙に男前なところ含めて、モッくんが最高にハマリ役だった。
    竹原ピストルさんや子役の2人も上手い。
    すごく、よい映画。

  •  熊切和嘉監督の作品に竹原ピストルが出ていて、この役者さん(実はミュージシャン)は妙に味のある演技をする役者だなと思っていた。ベテランではないが彼にしか出来ない個性的な雰囲気がこの『永い言い訳』の中でもトラック運転手の役で際立っている。わっ、なんだこいつおっかねえぞ何言い出すんだという空気の中、ニコリとした表情から不思議な優しい雰囲気を出すギャップがたまらない。
     そして、花子とアンの毒舌小説家で宇田川満代を熱演して話題となった、山田真歩も出ていた。彼女も不思議な役者さんだ。あの、吃りとオドオドした台詞回しは彼女にしか出来ない演技だろう。サイタマのラッパーアユムちゃん、宇田川満代、そして今回の鏑木さんと多才な才能を魅せる女優さんなのだ。
     今後この二人の俳優さんに期待したい。この二人の俳優と可愛い子役がいなかったらつまらない映画になっていたに違いない。

  • 2018年1月3日鑑賞。妻を失った中年小説家の幸夫は、同じく妻を失った陽一の子どもたちの面倒を見始めるが…。西川美和監督作品を見るのはこれで3作目、どれも面白い。いやなものは見ないようにして生きてきた中年男のいやらしさとそれに自らが気付いた時の絶望感、子どもに会って自分が肯定されたような幸福感、それがつかの間のものにすぎないことが分かったときの焦燥感…。身につまされるところもあり、幸夫が救われるよう・大いに彼に共感しながら物語を追っていた。ただラストはイマイチ蛇足感があり…。電車のシーンで終わってもよかったのでは?

  • いろんな立場の人がいて、いろんな価値観があって、傷付けたり、傷付けられたり、癒したり、癒されたり、助けたり、助けられたり。

    それは、いろんな立場や価値観があるからこそだなと思ったし、だからこそわかることがあるんだなと思った。

  • 幸夫くんと子供たちの髪がどんどん伸びていく…切ってくれる人がいなくなってしまったことを痛感させる。
    バスで寝過ごして、幸夫くんに「真ちゃん」と起こされて泣いた真平くん。きっと、お母さんにそう呼ばれていたんだろうな。こんな風に起こされたことがきっとあったんだろうな。

    説明なんかなしに、画面で見せてくれる。
    小説もよかったけど、映画も素晴らしかった。

  • 小説は未読。
    この映画に神の視点は無く、主人公の幸夫が見た・聴いたことしか分からない。妻が死んでも泣けなかったって、そりゃそうだ。だって泣くには、何も知らなさ過ぎる。ただごっそりと滑り落ちた過去に対する不安感が全編に横たわっている。
    幸夫はクズ男の見本のような人間。周りのことは見ようとしないのに、世間の評価に怯えている。(幸夫の行動を見ていると、自己嫌悪も一種のナルシシズムだと実感する。)生活の舵を、妻が良い方向に取ってくれることにも気付かない。
    妻というシェルターに甘えて生きて、失くして、ポンと世間に放り出されて初めて、ほんとうの孤独の恐ろしさを感じる。先の人生の途方もない永さに尻込みする。
    そんなとき夜のタクシーで、自分と近しい孤独を抱える真平に、その家族に、次のシェルターを見いだす。同じように突然家族を失い、その一人分、家族という箍が緩んでいたので、そこにするりと入り込めた。ほんとうの家族のように。
    疑似家族に縋る幸夫の危うさは、薄氷を履むというには繊細すぎるけれど、泥濘の上のベニヤ板を歩いている感じ。落ちたらみっともなく泥まみれになるから、こわごわ歩いているような。それでも他者と触れ合い、世間という不特定多数ではない、「誰か」の中にいる自分を感じて、疑似家族に逃避以上の意味を感じていく。
    いつまでも妻の死を引きずる陽一を叱責するシーンがあるけれど、陽一がしゃんとして、一家がまとまって行くほど、紛れ込んだ幸夫が異分子だと突きつけられる。その事が、恐ろしくてたまらなくなり、自分から破滅的に飛び出してしまう。
    最後に真平と、事故を起こした陽一を迎えに行った帰路、真平は陽一のトラックに乗るけれど、幸夫は乗れない。辿る道は同じでも、ほんとうの意味では同じになれないことの象徴的なシーンだ。
    行き道には確かに居た一人分の空席を感じて、帰り道はきっと寂しい。その孤独を埋めるものが、物書きとしての自分だと思い出してペンをとる。今書かなくてはいけない、と。
    過去の墓標に、妻と陽一一家が笑う写真を掲げて、幸夫は物書きとして、自分の足で、破れかぶれでも生きていけるようになったのだと思う。

  • 普通の人間のちょっぴり見られたくない部分を抉るのがうまい西川監督らしく、妻の死という哀しいテーマなのに、少し滑稽で、きれいごとにしないところがリアリティがあって好きでした。

    自分の後ろめたさを隠すように妻に嫌味をい続けるとこや、妻を失うと自分のことが何もできないほどなのに、他人の家庭に一生懸命関わって自分の背負っているはずの十字架を少し軽くしてみたり、、後から色々なことに気がついてそれが手遅れだったり、、
    西川監督はとことん男の弱い部分とか、嫌らしい部分をまるで胸のなかをメスで切り分けるかのように描き出すので、男性は観ていて少しソワソワしてしまうかもしれない。

    人はみんな完璧に良い人にはなれなくて、小賢しかったり、ズルかったり、残酷だったりすることもあるけど、そんな自分の過去の行為に蓋が出来ないから、なんとなく他で良いことしたりして自分に対して言い訳をしているところがある。だから永い言い訳ってこの映画の幸雄くんだけじゃなくて、みんなにとっての言い訳の物語なのかな。少し自分もドキッとさせられました。

    キャスティングかとてもよくて、特にとと姉ちゃんで青葉ちゃん役してた子役の子の演技が自然体のうまさで驚きました。

    子供の演出も含めて、今までの西川監督の映画の中でも是枝監督色の強い作品で、役者そのものの素材とか本質をしっかりと活かした脚本なので、勿論好き嫌いが、あると思いますが、個人的にはすごく好きな作品です。
    深津絵里さんを、美しく映していた映像が印象的で、特別に泣かせるシーンはないのに随所で涙が出ている自分に気がつきました。

  • 夫婦って。いるのが当たり前になるってコワイな。子供たちが可愛かった。
    面白かった。

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