龍臥亭事件(下) 御手洗潔シリーズ (光文社文庫) [Kindle]

  • 光文社 (1999年10月20日発売)
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みんなの感想まとめ

探偵が不在の中で、主人公の石岡が連続殺人事件に立ち向かう姿が描かれる本作は、緻密なプロットと巧妙なトリックが特徴の本格ミステリです。津山30人殺しの詳細な背景が織り込まれ、物語はドキュメンタリーを思わ...

感想・レビュー・書評

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  • 御手洗の居ない中、なんとか調査する石岡君。
    そんな中で津山30人殺しの詳細な背景説明が入る。
    好みは分かれるけど、楽しい本格ミステリでした。

  • お前かよ!て3回くらい声出たなぁ
    それだけの動機でそんなにいろいろやっちゃう?てちょっと腑に落ちない
    完全とばっちりで死んじゃった上に死体損壊までされちゃった人たちは本当に可哀想だし…ちょっと複雑すぎん…?

    まぁこれは単なるミステリー作品というよりも著者の主張を語りたい作品なのかも
    あとがきにもあった通り、著者の思い入れが強いもんでなっっがい
    申し訳ないけど、その思い入れは知らなかったのでその辺飛ばしちゃった…(私は単なるミステリー作品を楽しみたかったので)

  • 吉敷2作分と御手洗短編のトリックに、昭和猟奇殺人集を足して「アトポス」の手法で書いた、吉敷シリーズの新本格猟奇社会派ミステリ(館付き)といった感じです。長かったし、ドキュメンタリーを思わせる別の事件が冗長で、読ませる作家さんでホント良かった。吉敷を登場させられないために石岡くんを登用ですかね、作家を探偵役にしたのはグッドアイデアでした、おかげでスラスラと読めました。「飛鳥のガラスの靴」の続きで通子さん親子の今後が気になります。犬坊嬢はレギュラー入りですかね。シリーズ必須の秀作です。(1996年)

  • 悪霊を祓いに岡山に行った石岡が偶然泊まった旅館龍臥亭で起こる連続殺人。御手洗なしで石岡がこの謎に挑む。頼りない石岡を再生させるあたり、さすが島田荘司。プロットといいトリックといい読み応えたっぷりの傑作。

  • 【audible】
    史実をベースにしているのだろうなと思っていたが、まさかほとんど丸ごと使っているとは
    津山30人殺しについては、村八分にされた気違いがやった凄惨な事件という認識しかなく、著者の狙いは自分にとっては大成功だ
    この事件の経緯を描く9~11章の破壊力が高すぎて、本筋の展開が霞んでいる
    惨たらしい凶行に走らせた経緯とその描写
    そのまま鵜呑みに出来無いが説得力は十二分にある
    アポなしで突撃するテレビのバラエティ番組では伝わらない、閉鎖したコミュニティの絶望――退屈による狂気、緩やかな退廃、同調圧力の窒息感、土地と生活への無謬性、救いようの無い頑迷な信仰、温厚だが否定したものは拒絶する気質、純朴だが外部を理解できない住民……
    これらをここまで描いたものこんなのは見たことがない
    本は読まないし映画もドラマも見ないので当たり前か
    ただし、著者がソースにした筑波昭のルポも後の取材者により否定されている部分があるらしく、結核の症状はそこまで重くなかった、徴兵検査に不合格後、遊郭で遊んでいたという本作の内容と辻褄が合わない記事もある
    犯人の性質は主観が強すぎ、客観性が足りない、つまり鈍感なところがあると感じた
    この原因は祖母にあり、一番最初に首をはねた理由に関係しているように思えてならない

    犯人も自殺したので結局のところ真相は分からない
    結局のところここに記された内容はストーリーであり、全ては創作であるという認識だが
    人が狂うには狂う瞬間が確かにあって、それをよく描けている
    正常から異常への滑落は
    全てから否定されたと確信した瞬間にあり
    それを自覚した時、理性が打ち消すかが命運をわけるが(通常理性が勝つ)
    あまりにも否定要素が多いと反転し押しつぶされる
    夜這いや不貞行為をバラしたとかでは無く、あったことを無いことにされた、つまり事実を否定されたからという理由もすごい、今の感覚では理解不能だ
    しかし遺書に記した理由など実は後付けなのかもしれない
    積み重なった精神の負荷が憎悪となって、明確に言語化されている段階ではすでに手遅れで
    事実は関係なく、具体的な方針の決定があった時では機を失しているのだ
    その前のタイミングになんとかせねばならない
    そのチャンスは冷静と情熱の間にあり
    事情とは無関係な未知の存在の力により、負の情熱を消火させる努力が必要だろう

    見過ごされがちな重要な因子は退屈だと思う
    これに死の恐怖が加わり犯人を強迫観念的行動に駆り立てる
    自己実現が否定され代替行為としての性行為、取りつかれたように夜這いに没頭する
    まるで奪われ戻らない自身の未来が景品のギャンブルのように、退屈の飢えは漁色の暴飲暴食に変わる
    あげく更に高い代償を払わされる
    これに関しては自業自得でまったく同情はできない
    そしてやはり凶行を支えているのは、計画実行は正義の鉄槌であるという意識だ
    あと善人の一面もあった(現実でもよく見かける意見だ)という弁明もあるが、これは「大阪は大雨だけど東京では晴れてるよ」みたいな無意味すぎる情報と同じで、全く擁護になっていないことを指摘しておきたい
    村人にとっては知られざる透明な防波堤の決潰である

    近年は共同体の崩壊、人との繋がりが希薄になったとかいった危惧がよくあるが、最初から孤立しているなら、孤立を認める社会であるのなら、大した問題ではないと思えてくる
    近年こうした地域部落自体への怨恨事件は無くなっている
    しかし村社会はインターネットに移行し、津山の殺人被害者数記録を塗り替えた京アニ放火殺人事件が起きる
    退屈を埋める娯楽は増えたが、それにより孤立しパラノイア的狂人が増え関連する事件が増しているような気がする
    相手がいなくても1人で勝手に狂うのだから結局は解消困難な問題だ
    それとももしポルノに埋もれていればここまで狂わなかったのだろうか

    本編のラストシーンは無茶苦茶である
    不謹慎だが、2人を狙い6(+3)?人が犠牲になったのは効率が悪すぎる
    最早無差別自爆テロだ
    都井睦雄と同じ真似をしているこの犯人たちと同じ理屈を用いるなら、自分たちの血筋も絶った方がいい
    犯人らの犯行動機は狂っていて頭がおかしいが、否定できない者も多いだろう
    なぜならその動機と繋がっているのは優生学と類似した信念だからだ
    頭に血が昇り、日もまた昇り、歴史は繰り返している
    戦争などにも言えるが、こういう悲惨な事件で人々の意識が変わるというのは
    実行者や創作家などの妄想にすぎない
    小説や事件を取材した書物の価値は、本作品の犯人たちのようなバカげた妄想を消滅させることにあるだろう
    そういう観点で本作品のレベルは高く誠実さがある
    事件を美化したり余計な意味付けをするわけではなく、作者の自意識は可能な限り抑えられている

    トリックなどかなり無理矢理で綺麗とは言えないが
    全て回収できるのか?と疑った数々の不可解な出来事にしっかりケリを付けているのはすごい
    主人公にはもうちょっと見せ場を作っても良かったのではないか
    最後まで尾行くらいしかしてないし、最後に親子を救ったのも樽本だし
    真相を明かしているのもほとんど上山と樽本だ
    それにしても母サチの病的なお参りへの執念はなんなのか
    思考が現実化していることに気付かず、さらに部外者が脚色した自作自演の不確かな運命劇を演じている
    まるで負の観念の重力圏内に近付いた者を吸い込み消滅させる、認知不可能なブラックホールだ
    自信過剰も問題だが、自信が無さすぎるのも厄介だ
    なんにせよコンセプトは素晴らしく、過去の事件を引用し、エンタメ的なインパクト狙いで消費しているだけの陳腐な作品ではないのは確かだ

  • 登場人物が多けりゃ死人も多い、手間のかかるグロテスク、オカルト、実際の事件、ウラン鉱、広げまくった風呂敷をまったく見事に折り畳まれた。
    これは本格であり社会派であり。

    津山三十人殺しのレポートは長いが一読の価値あり。
    「あのオカルトはなんだったの?」という部分も余すことなく説明されて満足。
    最後に明かされる、はじめの事件の真相にはゾクゾクした。これに限っては、本当に、むつおの時を越えた怨念と言っても過言ではない。
    ただね、事故や間違いどころか、ただの頭数で殺された人おるよね?説明も雑過ぎた。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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