「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 因果推論の手法を、数式を使わずに分かりやすく解説。

  • 比較統計の大切さを解説した本です。あなたの周りの物知りが、「これは、統計的有意だね」とか言ってきたら、「具体的にはどの程度の誤差の有無をいうのですか?」と聞いてみよう。「5%以下」と即答できれば本物です。ちなみに、5%とはコインの表が4回連続して出る確率(6%)と5回連続(3%)の中間です。
    本書では、我々の生活に直結する多くの政策(例えば、ゆとり教育)が、厳しい事前の統計的比較を検証せず、安易に進められ、結果失敗してもだれも責任を取らない状況に警鐘を鳴らしています。(P112)
    また、「女性取締役の数を増やせば、企業価値が下がる(ニュージーランドでは女性取締役を10%増やすと、企業価値は12.4%低下)」という統計的事実は背景を知れば納得できる。取締り役員の女性比率を上げるという数値目標に縛られて経験不足で資質に欠ける女性の登用が増えたことに起因しており、少し前に盛んに言われた政府の「女性活躍社会」のスローガンの危うさを指摘。そもそも男女関係なく、働き方の柔軟性を高め、性別によらない公平な評価と報酬制度を構築するという労働環境整備の必要性を訴えています。(P129)とはいえ、経験値の少ない女性役員が多いという実態の原因は、女性に活躍できる機会を与えなかったからともいえ、そうなると鶏と卵のどちらが先かという議論にもなりそう。
    また、気になった個所もいくつかありました。
    「女性医師が担当すると患者死亡率が低くなる」その理由は、女性医師の方が診療ガイドラインに忠実で患者との密なコミュニケーションによる予後の回復の差にあるのではというところまではいいのですが、その後、「アメリカでは女性医師の方が男性医師よりも給料が安く、昇進が遅いことが社会問題となっている。この研究からも、女性医師の方が質の高い質の高い診療を行っていることがわかってきている」という説明(P83)はまったく意味不明です。
    そして、「学力が高い友人に囲まれても自分の学力は上がらない」では、「自分の実力を棚に上げて、周囲の友人に過剰な期待をしてはならないということなのかもしれない」(P137)と結論付けていますが、「自分の実力の棚上げ」が前提であればどんな環境でも努力しないわけだから命題自体が無意味です。学力の高い友人のいる環境のメリットは、効率のいい勉強の仕方を身近で参考にできることや、静かに勉強できる環境(悪友がいない)や学校自体の高度なカリキュラムや優秀な先生の存在なども含めると、勉強へのやる気と環境は大きく違います。要は「勉強する努力」の有無で、結果はまったく違ったものになると思われます。現に、筆者も「学力の高い友人と付き合う因果関係に迫った研究では、同様(学力が上がらない)の結論に至っているものも多い」(P136)と書いているように、少なからず反対(学力向上)の結論の研究もあったはずでしょう。
    統計設計や統計効果を吟味するのに慎重であるのはもちろん、出てきた結果についても評価は慎重であるべきだと痛感させられました。

  • 原因と結果、と書いているが因果推論や共線性などの統計的説明はなく、どうしてそう分析できるかわからないものが多かった。

  • 因果推論のエッセンスを、数式を使わずに概説した一冊。専門性を求める人、たとえばABテストを実際にやりたい人には到底足りるものではないが、中高生や年老いた肉親に推薦するには良い本だと思う。ビジネスマンはとっかかりとして読むには良いが、ビジネスに活かすならこれだけでは足りないことは言うまでもない。

    実際には交絡を見極めることは難しく、RCTをはじめとした実験を正しくデザインすることは至難であるが、それは実際に実験にいく人が専門書で苦労に当たる箇所であろう。

  • 原因と結果の経済学を読んで

    因果関係と相関関係

    因果関係を証明するには、反事実が必要。ただ反事実は現実的には作れない。だから適切なコントロールを用意する。

    反事実の克服法、比較データの用意法
    →ランダム化比較試験(第二章)、自然実験(第三章)、差の差分析(第四章)、操作変数法(第五章)、回帰不連続デザイン(第六章)、

    自然実験との対比に擬似実験があり、擬似実験には第四章から第七章の内容が含まれる。

    前後比較が使えない理由→時間と共に起こる自然な変化(トレンド)の影響を考慮できないから、平均への回帰の可能性があるから


    感想
    理系としてこの考えは当たり前に感じた。ホルモン補充療法の話は、僕も気をつけないとなとは思った。あるなしで決めずに、その裏にある交絡因子も見つけるのは大事。(ホルモン補充療法は、健康意識の高い人がそもそもこの治療を受けてたから、この療法が効果のあるものだと誤認したというもの。)

  • 因果推論を勉強したいけど、専門知識ゼロでどこから勉強したら良いかわからないかたにお勧めできると思いました。
    数式はなく、表、グラフを使ったわかりやすい説明により中学生以上であれば理解できる内容なのではないでしょうか。

    また、巻末に専門的な書籍の紹介もあり、高度な勉強につなげやすい点も好印象で、2~3時間程度で読み切れるというボリュームも絶妙です。

    著者の研究成果を一般の方に理解してもらおうという優しさをバファリン以上に感じることができました。

  • 例示を元に読み進める構成。前提知識は都度説明が入るのでわかりやすい。難しい話をシンプルに書いているため、ある程度本書の趣旨が理解できると読みやすい。

  • どうすれば、根拠のない通説にとらわれることなく、正しい判断ができるのか?そのカギとなる「因果関係」と「相関関係」の見分け方を、経済学の研究を踏まえ、解説する書籍。

    「メタボ健診を受けていれば長生きできる」といった、根拠のない通説にだまされる人は少なくない。それは、因果関係と相関関係を混同しているからである。
    ①因果関係:2つのことがら(変数)のうち、片方が原因となって、もう片方が結果として生じた場合。
    ②相関関係:片方につられて、もう片方も変化しているように見えるが、原因と結果の関係にない場合。

    2つの変数が因果関係か否かを確認するポイントは次の3つ。
    ①「まったくの偶然」ではないか。
    ②「第3の変数」(交絡因子)は存在していないか。
    ③「逆の因果関係」は存在していないか。
    2つの変数が因果関係にある場合、①~③は存在しない。一方、相関関係の場合、①~③のうちいずれかが存在する。

    因果関係を証明するには、現実と「反事実」(実際には起こらなかったシナリオ)を比較しないといけない。例えば「子どもにテレビを見せなかったから学力が高くなった」という場合、「その子どもがテレビを見た場合の学力」と比較する。

    2つの変数が因果関係か相関関係かは、実験で明らかにできる。
    ・ランダム化比較試験:例えば、病気のネズミを「ランダム(無作為)」に2つに分け、投薬したネズミ(介入群)と投薬しなかったネズミ(対照群)を比較する。投薬したネズミの治癒率が高ければ、薬に効果があったといえる。
    ・擬似実験:政府の統計調査などの「観察データ」と「統計的な手法」を用いて、ランダム化比較試験を実施しているような状態を作り出す。

    ジュエリーショップの例で説明しよう。全国にある店舗のうち、A地方の店舗は2015年に広告を出したが(介入群)、同じ時期にB地方の店舗では広告を出していなかったとする(対照群)。
    A地方の店舗では、2014年12月には1000万円、2015年12月には1400万円の売上だった。一方、B地方の店舗では、2014年12月には600万円、2015年12月には800万円の売上だった。
    広告を出したA地方の店舗では、2014年から2015年にかけて、売上は1400万円-1000万円=400万円増加した。広告を出していないB地方の店舗では、800万円-600万円=200万円増加。
    この2地方の売上増加幅の差である400万円-200万円=200万円が、差の差分析によって得られる介入の因果効果ということになる。広告にかかるコストが100万円だったとしても、広告を出すことで200万円-100万円=100万円の追加的な売上が期待できるということになる。

  • 「因果推論」因果関係と相関関係の見分け方
    1.Evidence Dataに基づく 因果関係・相関関係
      個人の体験はデータではない
      DATAを見る←全体像を押さえて
    2.化学=Data・統計・仮設・検証→長期的利益
    3.因果関係を証明=反事実
    4.Evidenceには階層がある
      ①メタアナリシス 複数のランダム比較研究を統合
      ②ランダム化比較試験
      ③自然実験と疑似実験
      ④回帰分析
    5.統計的に有意 5%以下 誤差や偶然で説明不能

  • とても学びのある内容でした。
    特に文献の読み方が雑になってしまっているのを感じていたので、この辺りを学び直してより適切な解釈をできるようにする必要があると切に感じました。

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