本作のテーマは「老いと若さ」また「悪の性質」。
老いて滅びた世界チャーンと創造されたばかりの若い世界ナルニアの対比。若いディゴリーやポリーと年老いたアンドリューおじの対比。病に伏す母の若さを取り戻すためにディゴリーは旅をする。
悪はアンドリューおじと魔女ジェイディスに共通する性質として描かれる。彼らは、自分の知識を誇り、凡庸で無知な者を見下し、選ばれし者である自分は世間の規範には縛られず欲しいもののためには何をしてもいいと考える。「罪と罰」のラスコーリニコフの論理にも通じる。それは、国家の論理とも呼ばれる。民は女王の役に立つためにおり、平民が行えば罪となることも女王(国家)が行えば罪にはならない。魔女は恐ろしく実利的であり、自分が利用しようと思った人間以外には全く興味を示さない。
物語の最後でアスランは、ジェイディスのような冷酷な支配者が私たちの世界にも登場することを警告する(本作の時代設定的にヒトラーやスターリンを指しているのか)。ジェイディスがチャーンを滅ぼした滅びの言葉は核戦争の喩えとも思える。
「ライオンと魔女」でルーシーが初めてナルニアに来た所にあった街灯は、本作でジェイディスが私たちの世界から持って行った街灯の一部がナルニア創造時に成長した物。また、ルーシーがナルニアに来るために通った衣装箪笥は、異世界間を行き来する魔法の指輪とナルニアからディゴリーが持ち帰ったリンゴを埋めて生えた木から作った物。