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感想・レビュー・書評
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荒井昭二という少年は、これだけでないから恐ろしい。
『学校であった怖い話』というゲームで女性人気ナンバーワンを誇る荒井昭二というこの男、「人形」という恐ろしくも儚いシナリオのイメージが流入したのか、少々耽美で線の薄い美形として描かれることも多いようです。
一方で、猫背という姿勢の悪さだったり、どことなく歪んだ自尊心と劣等感が同居する性格だったりと、矛盾しか抱えていないような内面と外面の両面は、今回のこの話で荒井昭二かくあれかしというパブリックイメージを原作者自らの手で送り出されてなお、掴み切れない奥深さを持っているようです。
前置きはここまで。
この作品の執筆にあたって飯島氏が各所に電話取材を敢行されただけあって、荒井さんは衒学的な口調と相応の知識をもって語ってくれます。
私、熱心なファンであるので、この話を聞くのは別にはじめてではないのですが、初見で圧倒された記憶があります。今回も再確認しました。
ひひヒ……。
って、今時その笑い方はどうなのよと、最初は思っていましたが、うすら寒い隙間風が体内を通り抜けていきそうな語りと加わると、実に嫌らしいんですよ。
戦前の怪奇趣味を思わせる彼の話は、人は選びますがハマる人はハマることの証明とでも言いましょうか。
一方でこじらせた少年の打算が純粋な友情に変化していく物語の展開は、同好の士を求める人にとっては見につまされる物があります。
あからさまに歪んでいるんですが、純粋なんですよね。
鬼気迫るというか、語りの中で人が鬼ですらないなにかに変じていく芸術家の物語、絵面は美しくもおぞましいんですが理解者の視点だからこそ、色々なものを孕んだまま終わらせることができたといいますか。
“正しい”とはなんなのでしょうね?詳細をみるコメント0件をすべて表示