寂しい生活 魂の退社 [Kindle]

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  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災に遭遇して節電を決意した著者。こまめに電気を消すことから始めてどんどんエスカレート。灯りを点けない生活、掃除機を棄て、電子レンジを棄て、コタツを棄て、冷蔵庫を棄て…。ついでに洋服や化粧品、本、食器や調味料なども棄てまくり、究極の断捨離を実行。電気だけじゃなくガスも使わず水道もほとんど使わない。そして野菜の天日干しにぬか漬けに湯タンポに火鉢に銭湯に。「電気代は月150円台、洋服も靴も例のフランス人レベル(10着)しか持たず、暑さ寒さはただ甘んじて受け入れ、日々の家事は手足と試行錯誤でこなし、食事はカセットコンロで炊く飯と味噌汁と漬物。さらにはガス契約もやめてしまったので二日に一度の銭湯が最大の娯楽という体たらくの独身51歳である」。まるで江戸時代・長屋暮しの清貧生活!

    どう考えてもやりすぎでしょ。でも読んでいて面白い。サバイバル生活、ワクワクしてくるなあ。

    節電チャレンジを通して著者が発見したことは、生きること=面倒くさいこと。でも面倒くさいからこそ楽しい。面倒くさいことも、心を込めて一生懸命やれば面白くなる。なるほどなあ。

    「物足りなくもないし惨めでもない。むしろ「美味しすぎない」からこそ毎日食べてもまったく飽きない」。これも深い言葉だ。

    気に入ったお店には「お金を「応援券」として使うのだ。自分じゃなくて、相手にトクをしてもらう」、という考えも見習いたい。ついつい安い店を探しちゃうんだけど…。

    人はなんのために生きるのか。著者は「働くって究極のところ、人を助けるということ、人を喜ばせるってことなんじゃないでしょうか、人は一人では生きていけないのです。その中でなんとか助け合いながら生きること、頑張って生き抜くことそのものに意味があるんじゃないでしょうか。その必要がなくなった世界で、人はいったい何をするというのでしょうか」、と仰っている。本当にそうだよなあ。

    「魂の退社」でも感じたことだが、著者はとにかく頑張っちゃう人なんだな。手抜きがない。何でも一生懸命、全力投球。そこに可愛さというか魅力を感じる。

  • きっかけは福島の原発事故から
    節電につとめ それが
    シンプルな生き方とは何なのか
    という 哲学というか
    生きた実験であり 冒険になっている本でした
    自分でする しないは別として
    地に足つけて たくましく生きれるんだ
    という気持ちにさせる本です

  • 面白く楽しく読みました。
    自分は震災後何も反省していないし、行動していないな、と反省。
    家電を捨て、五感が敏感に、というのはわかる気がする。

  • 連続読了の稲垣えみ子さんの本2冊目「寂しい生活」。

    直前に読んだ「魂の退社」は「会社を辞めること」をメインに書いていた本で、こっちは「電気を辞めること(所有を辞めること)」について書かれている本、という役割分担なのかな。

    原発事故に端を発して、電気を極力使わない生活を目指した著者さん。でも、その努力が「質素倹約」の悲しい生活ではなくて「面白い!」という方向に行くところが「面白い」。

    そして、電気を使わない生活をしていたはずなのに、うっかり「オール電化」のマンションの部屋を契約してしまって、IHヒーターや夜間温水器と戦ってみたり、面白すぎる。

    そして、最終的には

    家事を楽にするために生まれたはずの「家電」は、本当に家事を楽にしたのか? 主婦には余剰時間が本当に増えたのか?

    というところにまで辿り着いていて面白かった。


    うーん、確かに。
    「便利」という言葉に翻弄されすぎているのかもしれない。
    「便利」という言葉で必要性のないものまで欲しがっていたのかもしれない。

    ある程度の「便利」までは、本当に「便利」だったかもしれないけど、途中から「便利」を作り出そうとした家電メーカーに踊らされているだけなのかもしれない。

    うーむ。
    いろいろと考えさせられる本でした。
    そして、面白かった。


    稲垣さんのような、究極の生活はできないけれど、身の回りのものを見回したときに、「便利」という言葉に振り回されている自分に気がつけるキッカケになった気がします。

    「生きるってね、面倒くさい。
     でも面倒くさいからこそね、素晴らしいんだ。」

  • こんなに面白くて深い本、久しぶりに出会えた気がする。自分も何となく感じてはいたけれど、冷蔵庫とレンジで、未来の時間を貯めようとして、逆に今を失っていたとは…。そして、太陽が火、エネルギーだったとは…。すごい、すごい。少しずつでも真似したい。家事が娯楽になるなんて、ステキすぎる。そして、「電通戦略十訓」の沼に、どっぷりハマってきたわが人生よ。人生ってほんと何なのか?偽りの便利によって、どんな大きなものを失うのか?面倒くさいことの素晴らしさ。すごく深いところまで、自然にたどり着ける本でした。

  • あっという間に(3時間くらいで)読み終えることができました。簡潔でわかりやすい文体だからでしょうか。
    色々ものが捨てたくなる本でした。

    今の私は煩悩まみれ。
    尽きることのない物欲。達成するとあらたに浮かぶ欲。
    そのスパイラルを切ると楽に生きることができるかもしれません。本を読んで痛感しています。

    家電の呪縛ぐるぐるの私ですが、今後何かを買う時に、これ本当に欲しいの?必要ですか?と己に呪いをかけていこうと思います。

  • なんか変な本を読んでしまった。
    東日本大震災で節電を始めた著者がなぜか止まらなくなって、冷蔵庫や洗濯機まで捨てちゃう話。普通こういうのはなんらかの信念か決意(大量消費社会への抗議とか)があって、そこから新しい?暮らしを組み立てていくものではないかと思うのだけれど、著者の場合はいろいろ捨てたら新しい景色が見えてきた、と順番が逆。その分説教臭くなく、野次馬的に気軽に読めて楽しかった。

    著者の節約生活?は一種の趣味みたいなので(風呂は沸かさないけど銭湯には行く)人にどうこう言われる筋合いもないだろうが、ものを持つこと、持たないことにこだわり過ぎているんじゃないかという気がする。便利を追い求めてあれもこれも欲しくなるのはなんだかな、と思うが、あるものは大事に使えばいいと思う。電気を使うかどうかがいる道具といらない道具の境目、というわけでもないだろうに。この本だって電気使わなかったら出版できなかったのでは?

  • 寂しい生活に見えて実は豊かで快適ですという本。
    電気代は月200円、冷蔵庫も洗濯機もありません。ガスはカセットコンロのボンベのみという著者の生活。東日本大震災で始めた節電が、なぜここまで極端に何も持たない事態に成ったのか、その過程と思うところを綴っている。
    順にモノとおさらばするうち、著者の考え方が変わっていく様子が面白い。ユーモアを持って語られるそのココロはなるほどと思うことも多い。
    論理が明快で納得がいく。
    冷蔵庫なしとかはさすがに真似できないが、考え方のほか、多少は取り入れられる手法もあると思う。

  • 稲垣さんの本はいつも元気が出ますね。
    これは朝日新聞社を退職されて、補償とかもなーんもなくなった稲垣さんの冒険のお話。
    20代の時のように若さの勢いだけでなんとかなるもんでもなく、自分を受け入れ、今の流れに身を任せる感じが良いのです。

  • アフロさんの面白節電生活が楽しい。巷にあるケチケチ本とは一線を画する哲学が感じられる。原発反対を唱える前に、是非一読してほしいと思う。

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著者プロフィール

一九六五年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒。朝日新聞社で大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員を務め、二〇一六年に五〇歳で退社。以来、都内で夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしのフリーランス生活を送る。『魂の退社』『もうレシピ本はいらない』(第五回料理レシピ本大賞料理部門エッセイ賞受賞)、『一人飲みで生きていく』『老後とピアノ』など著書多数。


「2023年 『家事か地獄か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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