- Amazon.co.jp ・電子書籍 (213ページ)
感想・レビュー・書評
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村上春樹感は薄れるけど、ちゃんと面白い。
エリが眠りにつく表現。美しく長く眠り、ある種泥のように部屋に溶け込む。TVの中の顔のない男の存在はどう考えるべきなのかまだ答えが出ない。
「寝る」(これは睡眠)行為自体は世間から離れ昇華するためのもの、と考える。
高橋という存在は怪しい。マリに近づいたのは偶然なのか?
(上記2点を本気で考えると暗くなりそうだからやめとく)
白石はきちんと社会の中に溶け込んでいる人間の過ち、影を表しており、1日の朝と夜を表現しているようであった。
対してカオル始めラブホで働く人たちにはいる場所こそ社会の影のような部分であるのに対して、存在や考え方には陽の要素を感じる部分もあった。
一夜の出来事を定点カメラとして俯瞰する新しいストーリーの形。マリが最後にエリと寄り添って寝るところは、淀む空気の中にある小さな光か。(エリ=夜、を理解したマリ=朝)
全てが解決するわけではない。でもそれぞれの存在があるべき姿や理想に捉われないことを受け入れる、理解する。どんな形でも、誰にでも平等に「朝」は必ずやってくる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編やエッセイは好きだったが、初めて村上春樹さんの長編(?)作品を読んだ(海辺のカフカとノルウェイの森は挫折した経験あり)。登場人物がとても魅力的。深夜のファミレスやラブホを舞台にしているのもよかった。夜の独特の時間が間延びしたような感覚を思い起こさせる。
第三者視点での、無機質な部屋で姉が眠ってる様子の描写がわたしには苦痛だった。これが長く続くと挫折したくなるが章で視点が切り替わるのでよかった。自分は会話やその人がどんな人かを想像できる要素の描写が好きみたい(タカナシのローファットの牛乳とかお洒落で関心してしまう)。 -
村上春樹作品の中ではちょっと異色だが、個人的にはけっこう好きかも。
緩く繋がった複数の登場人物を巡る、深夜から明け方までの同時進行の出来事を描いていく、よくある形式だが、ストーリーテリングありきにならないところに村上春樹らしさがある。
ファミレスやラブホやコンビニなど、身近な舞台で俗っぽい話を描いても、ちょっとそこだけ別の世界の光が当たっているようなセンス。
俯瞰視点も、他の村上作品とは一線を画すところだが、「私たち」という謎の一人称を通しているところに創意を感じる。 -
不思議な読み心地の本だった。
東京の普通の街の普通の人々が登場する物語。
しかし、読者と著者が一緒に芝居を見るかのように場面が綴られていき、ファンタジーを読む気分になる。
それは多分村上春樹一流の翻訳っぽい会話や気障な記述方による。
いつもながら読後感は騙された感じ。
読者はあらゆる伏線と謎の答えを明確に与えられないまま放り出されて本を閉じなければならない。
これくらい書けば十分ですよね という春樹作品。確かにこれくらいの推測と予感があれば十分なのかもしれない。
やっぱりなんか腹立たしいのは個人の好みなのかな。こういうのが好きな人には、良かったよ と言わねばならない。 -
星3.5
おしゃれ。 毎度言い回しがおしゃれで感心する。
わぁ~この会話おしゃれやな~… って何度も思った。
良い方の意味で。
ただ、理解できない部分が多々ある。
第三者目線をつくっていることが
なかなか話に入り込めなかった。
そして第三者の読者目線を、私たち という表現で
複数にしたのが もっと入り込めなかった。
なぜ複数にしたんだろう…。
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久々に村上春樹の小説を読んだ。マリがコオロギのやり取りの中で自分についてわかっていくところが印象的で面白かった。
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久し振りに読んだ村上春樹。
村上春樹らしいテンポの良さで読み進んでいく。
色んな人との関わり合いや、ジャズについての記述がまたいい感じだった。
心地良い内容が続いていたが、もう終わり?って感じの終わり方。
どれか一つでも結論が知りたかったな。