そんなことを繰り返している内に、
いつか満男の胸は、恋心で はち切れんばかりになる。
そしてある晩。
月夜の川原を歩きながら、ついに告白するな。
あいらぶゆー。
出来れば添い遂げさせてやりたい。
しかし、残念ながらそうはいかない。
どうしていかないの?満男ちゃんモテるんだよ!
いいか?恋と云うものはな、長続きさせる為には
ほどほどに愛するという事を覚えないといけない
ところが、若すぎる満男にそれができない。
偉そうに...
よく云うよ!
お前がな、いつだって程々に愛したことがあるか?
てめえ、俺にぶっ飛ばされたいのか!このタコ!
社長!それを言っちゃダメですよぉ!
寅さんもタコ社長もおばちゃんもおいちゃんも
みんな歳をとりましたね。覇気がない。
渥美清はこの頃既に体調不良だったようですが。
さくらもすっかり奥さんおばちゃん扱いされる
歳になったんですね。
あの若くて可愛かったさくらも。
母親の再婚を、頭では理解できても
気持ちが追い付かない泉ちゃん。
大学の学費もなく、就職もうまく行かず、
全てが嫌になり家を飛び出した泉。
名古屋の家を飛び出したときはね、
私は世の中で一番不幸せで、
誰も私の気持ちなんか解ってくれやしないと
思ってたの。
でも田舎の町で知らないおばあさんに親切にされたり、
おじちゃまにばったり会ってすがり付いてわぁわぁ泣いたり、
それに砂丘のてっぺんからコロコロ転がって来る先輩見てたりする内に
私はそれほど不幸せじゃないんだって、
そう思えてきたの...
そうだよ。俺の親父やお袋だって、
みんな泉ちゃんの事心配してんだよ!
うん。今度悲しいことがあったら、
満男さんの家の人達思い出すようにしよ!
うん、それとおじさんとな!
鳥取の寅の行き付けの小料理屋で世話になる
寅、満男、泉の一行。
そこの女将 聖子(吉田日出子)は、
かつて寅と恋仲だったが、
板前と結婚してその後死別していたのだった。
でもその十年間幸せだったんだ?な?そうだろ?
どうしたい?
とっても泣かされただで、あの人には。
それじゃ、おせいちゃんの、ご亭主は...
とんでもない浮気もんだっただば...
そうかい...いやぁ俺はおせいちゃん、
てっきり幸せに暮らしてるもんだとばっかり思ってた...
寅さんがうちに来んさるたぁんびに、
亭主はまだ生きてるかいって
冗談みたいに言っとおさったでしょ?
あたし...まだ生きてますよ!お気の毒様ぁ!って
笑いながら答えとったけど、本当は...
心ん中では泣いとっただよっホホホ...
ウ~フッフッフッフッ...グスッ
あたしぃ後悔しとるぅっ...
う、なにを?
寅さんにしようか、あの人にしようか迷っとって
結局あの人選んでしまったんだけど...
あたし、アホだったなぁ...グスッ
寅さんにすりゃ良かったなぁ...
い、い、今、今さらそんなこと言われてもなぁ...
今夜は使用人みんな帰しただで...
どうして逃げんさるだぁ?
おじちゃまは前からあのおばさんが
好きだったんでしよ?
おばさんも好きだったんでしょ?
いずれ二人は結婚するわけ?
いや、そんな方程式を解く様には
いかないんじゃないか、男と女は。
あのおじさんはねぇ...
手の届かない女の人には夢中になるんだけど、
その人がおじさんのことを好きになると、
慌てて逃げ出すんだよ。
もう今まで何遍もそんなことがあって、
その度に俺のお袋泣いてたよ。
バカねぇお兄ちゃんは、なんて言って。
どうしてなの?どうして逃げ出すの?
解っかんねえょ。
つまりさぁ。綺麗な花が咲いてるとするだろ?
その花をそっとしておきたいなぁって気持ちと、
奪い取ってしまいたいって気持ちが
男にはあるんだよ。
あのおじさんは、どっちかというと、
そっとしときたいなって気持ちの方が
強いんじゃないかな。
じゃあ、先輩はどうなの?
え?俺?...奪い取ってしまう方だよ!
な~んちゃってねぇ!
それじゃ、おせいちゃん。
寅さ~ん、また二人で飲もうなぁ。
ん。じゃ、そうしような。
おじちゃま。色々ありがとう。
お母ちゃんと仲良くな!
女だから、時々寂しくなることもあるんだよ。
お前娘だから、そこんところよく解ってやれよ、
な?
おじさんは、寂しくなることないの?
ばぁかやろう。俺は男だい!
寂しさなんてのはなぁ、
歩いてる内に風が吹き飛ばしてくれらぁ。
おじさん。
世の中で一番美しいものは、恋なのに。
どうして恋をする人間はこんなに無様なんだろ?
今度の旅で僕が解ったことは、
僕には、もうおじさんのみっともない恋愛を
笑う資格なんかないということなんだ。
いや、それどころか、今の僕には
恋するおじさんの無様な姿が、
まるで自分の事の様に悲しく思えてならないんだ
だから、僕はもう、
これからはおじさんを笑わないことに決めた。
だって、おじさんを笑うことは、
僕自身を笑うことなんだからな。
渥美清が体調を崩し、満男と泉の恋が主軸になり
もうかつての喜劇ではなくなりました。
笑いはありますが、数えるばかりです。
シリーズ42作「ぼくの伯父さん」以降の作品は、
長年続いた「男はつらいよ」の
答え合わせなんだと思います。
さくらの本音、寅の本音、生き様のようなものを
満男との会話や、満男の口から語らせます。
ところで冒頭のスタッフロールの書体が、
昔のキネマ風に変わったような気がします。
総指揮 奥山和由だった影響かしら。