完全版1巻は外惑星連合・カリスト視点の、特にダンテ率いる陸戦隊・タナトス戦闘団だったが、2巻では航空宇宙軍側の視点で外惑星動乱が描かれる。各局地戦を点描しながら、ミクロな「点」の連続で大きな戦争の流れがわかる構成になっていて、おもしろい。
外惑星動乱は次のような経緯をたどったことになる:
・外惑星連合による最初の地球圏を含む奇襲進行が期待ほどには奏功せず
・航空宇宙軍は木星侵攻を狙うも、「カリスト急行」タンカーへの通商破壊により断念
・航空宇宙軍は囮艦隊を用いつつ、小惑星トロヤ群を経て一足飛びに土星へ侵攻、タイタン降伏
・航空宇宙軍は再び木星へ侵攻しつつ、正規巡洋艦サラマンダーの伏兵により補給艦隊は全滅
・それでも航空宇宙軍は包囲網を作り、サラマンダーは外宇宙へ飛び去り自沈
・航空宇宙軍は艦隊を進め、満身創痍の外惑星連合はアナンケで迎撃を図るも敗北
・敗北にあたっては、カリスト内でクーデターによる政変が起きた
全体的に人間ドラマというか、いわゆる成長物語はなく、個別の作戦が終わればあっさり終わる感じで歯切れがよい。その中でも、潜水艦戦のような、宇宙で意思が伝わらない中での彼我の駆け引き、読みあいのようなものが行われ、スリリングだった。解説で「密室劇」という表現がなされていたが、なるほど。
そうした「密室劇」が、熱源の探知、通信の傍受、それらによる相手の意図推測など、技術的アプローチによる推理になっていたのもSFとしておもしろかった。
また戦略的には、太陽系というと水金地火木……と順に並べて地理関係を想定しがちだが、それぞれの天体が動いていること、太陽スイングバイなどを通じた、見かけの距離とは違う経済軌道が使われることなど、宇宙が立体的に描かれていて参考になった。外惑星連合に対しても、木星を封鎖するために先に土星を攻める、というアプローチも盲点だがなるほどだった。あとがきにて「遠交近攻」が通用しないとあり、重要な視点と思った。
艦隊戦は一度しか起こらなかったが、アナンケ迎撃での艦隊対峙の様子など、全体としてあくまでスリリングであり続けたし、ビジュアル的な想像力を搔き立てられもした。そうして、戦争が終わることの、敗戦の虚しさもよく描写されていたように思う。
ラストではイオの地政学的重要性の変化や、惑星間兵器の登場が示唆され、「外惑星動乱」という大河を一本読んだ後さらにその後の歴史がどうなっていくのか、と期待しつつ3巻を買おうとしたら、電子書籍がなく断念。とても気になるのと、3巻収録の『星の墓標』を進められていたこともありぜひ読みたかったが、電書化を待つことになる。