こちらあみ子 (ちくま文庫) [Kindle]

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  • 筑摩書房
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感想・レビュー・書評

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  • こちらあみ子。
    ???悲しいような、は痒いような〜

    まだまだ今村夏子ー一つや二つの作品を読んでもわからない、が惹きつけられる
    あみ子がもし身近にいたら、
    自分はどう対応できる?
    優しくできる?無視する?
    キャパオーバーで困ってしまう
    あみ子にはなんの罪もない
    周りが戸惑うだけ。
    悪気もないが傷つくかもしれない。
    かんがえさせられた。、人は無意識に人を裁く。
    他の方のレビューを知りたい。
    短編二つからなる、もう一つは未読「途中」

  • 絶対に落ちこむことがわかっているから、今村夏子さんの作品は遠巻きにしていたのだけれど、ついに読んでしまった。あみ子の、世界に参加できていない感じは極端だけれど、どうしても自分と無縁とは思えない。悲惨なはずのあみ子の人生はなぜか暗くないけれど、その悲惨さに読者は気づいてしまうから、やっぱり落ちこまされた。

  • 表題作がかなり強烈だった。気づかなければ幸せなのか(もしかしたらあみ子は幸せなのかも)。目の前のことや、頭に次々に浮かんでくることしか考えられないあみ子は、私から見ると幸せには見えなかった。でも、それでも生きていく強さみたいなものは、自分より格段に持っている。
    思わず「マジか」となる場面もあったけれど、最後まで目を離せないような、そんな話だった。

  • あみ子がさきちゃんにせがまれて毒花をあげたことと、のり君があみ子にせがまれて弟の墓って書いた事がリンクしてるように思う。あみ子は、やっとこの時の、のり君くらいに成長できたのかなと思った。

    誰も教えてくれないって可哀想だと思った。特にあみ子は、教えてもらう必要が多いわけである。でも、周りの人が口を閉ざしてしまうのもわかる。兄は、幼いながら、妹を思い自分なりにいろいろ教えたり言い聞かせていた。両親になった父母も優しく接していた。のり君は、あみ子のことが嫌なんだけれど、無視することはできなくて我慢して普通に接していたのだと思う。しかし兄も父母ものり君も壊れていった。あみ子だけが自分の平常を保っている。

    一方通行の「応答せよ応答せよこちらあみ子」。お父さんに買ってもらったトランシーバーを無邪気にこんなにも気に入って大切にしている。悲しい。そしてあみ子側からの世界で文章が成り立っている。

    おばあさんのところで暮らしてるあみ子は、幸せそうだ。良かったと思った。おばあさんはどのようにあみ子に接しているのか。

    また違う世界を知ることができた。
    3編とも不穏な空気が漂っていた

  • こちらあみ子
    坊主の子があみ子にあんな風に接してくれたのは救いだったし、それによってあみ子が優しくしたいと思ってくれたところがよかった。このくだりが一番ファンタジーさを感じたけれどなんでもいいから縋りつきたいくらい、他のあみ子の子供時代のパートは読んでいて度々苦しくなる本だった。感想としてあみ子に寄り添える感情を持てるのは現実世界で障害に縁のない人だけなんだろうなと思ってしまった。発達障害の家族がいる身として、自分は母親に感情移入してしまい心が痛かった。一つ掛け違えたらこうなるぞと言われているようで、事前に知っていたら手に取らなかったと思う。あみ子の周りを壊す行動発言一つ一つが現実にいる発達障害の人の理解されない言動を思い起こさせて、途方のないやるせ無さを感じてしまった。
    理解を広める意図があるわけではないと分かっていてもこの本を読んだ人が現実的にあみ子のような人の気持ちを諦めずに汲んでくれることなんてあるんだろうかと考えてしまった。分断された気持ちになった。

    ピクニック
    七瀬さんにはっきりとした悪意をぶつけてくる新人より、優しさで包んだような悪意で七瀬さんを囲うルミたちのほうがよほど怖い。
    直接七瀬さんの口に入れてあげないピーナッツ、七瀬さんの行動を加速させるようなタモのプレゼント、決して止めたりしないドブ掃除、
    彼女たちは新人に笑っていないと言い返したけれどきっと無自覚に笑っていたんだろう。自覚のない悪意は消せない。心地が悪いのに読みきってしまった。

  • 3つの作品はどれも全く違う人たちの、でもどれも社会からうまく馴染めない人たちの話を書いている。

    あみ子は純粋、なのかな。純粋というととても綺麗な言葉のイメージの言葉だけど、本能や欲望のむき出しに生きるあみ子は綺麗ではない。
    のりくん、殴りたくなる気持ちもわかる。同情する。
    お母さんも悪くない。でもボタンをかけ違えてしまった。


    七瀬さんはどうなんだろう。嘘を純粋に信じ込んでいたようにも見えたけど、無邪気に振る舞うことが彼女の生存戦略でもあったんじゃないかな。なにか強かなものが、本人の気づかない内にもあったんじゃないかって。そんな気もする。

  • これは噂に違わず凄かった!『こちらあみ子』もそうだけど『ピクニック』にも打ち震えた。「ルミたち」のなんの足しにもならない優しさやら、「新人」の子が「七瀬さん」を通して変わっていく過程やら、なにもかもいちいち巧い。語らずにきた事実をそっと明らかにするタイミングとか完璧じゃないですか??「あみ子」も「七瀬さん」も惨めといえば惨めなんだけど、どこか神様のようでもあり。『星の子』→『あひる』と遡って読んできて、わたしはこれが一番というか断然好きだったけど、作家として尻すぼみってことではけっしてなくて、作者はいろいろ試しながら深化・円熟しつつあるんだろうなあ、と。こうなったらいきおいで最新作も読んだほうがいい気がしています。

  • 映画見てから読んだ。映画はかなり原作に忠実だったんだな。あみ子の世界を通して物語が進むから、その苦しさや痛みは読み手にとっては多少鈍いものになる。が、やはり状況としてはあまりに辛いな。まともな会話ができていた相手の野球進学する坊主も、結局あみ子に「応答」しようとはしなかった。みんなあみ子から離れていく。最後はどうなのだろうか…希望はあるとみて良いのか…

    『ピクニック』はバチバチに怖い話だった。ずっと変だとは思っていたけど、新人の「なんで笑ってるんですか」が一番効いた。顔の見えない「ルミたち」が、この活字外でどんな振る舞いをしているか一瞬で想像させる一言だ、すげー怖い。

  • この作品が文学作品として評価されている理由がよく分かりました。
    直接的な悪意や嫌悪が文章としては書かれていないのに、空気で感じ取れてしまうところが凄いと思いました。文章だけでその感覚を表現している点がすごいんだろうなと。
    僕はピクニックよりもこちらあみこが好きでした。今村さんの描くちょっとずれている人は癖になってしまいますね。

  • どうしてみんなが怒るのか泣くのか分からない、普通じゃない女の子。一般的に普通だと思われている事が理解出来ない。
    だから世間とずれているし、学校でも浮いていて家族関係もボロボロ。
    でも単なる可哀想なお話じゃない。
    あみ子が読者を悲しい気持ちにさせない。ただちょっぴり切なくなるかも。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

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