生物から見た世界 (岩波文庫) [Kindle]

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    「環世界」の概念を理解したくて読書。

    ・生物は、それぞれ、異なる世界(「環世界」)の中に生きている。

    ・全ての生物に共通して、客観的に存在する、世界は存在しない。

    ・生物はそれぞれ、それらが存在する環境の中から、自らに意味のあるものだけを選び取り、「環世界」を構築している。

    ・主体が(環)世界を構築する。主体なしに(環)世界は存在しない。時間や空間も、主体があって初めて存在する。

    ・主体によって、時間や空間は形を変える。
    → 人間が知覚できる最小単位は1/18秒
    1/18秒以上の速さの場合
    ・画像の連なり→動画
    ・腕を突かれる→物体が押し込められている
    ように感じる
    → カタツムリが知覚できる最小単位は1/3秒

    ーーー

    ・生物はみな、異なる「環世界」に生きている。
    ・これは人間にも当てはまる。
    ・ここの人間は、それぞれ異なる「環世界」に生きている。
    ・それぞれの人間は、それぞれ、これまで生きていた経験に基づいて主観的な世界を構築しており、その世界の中に住んでいる。
    ・ある人間にとっては知覚できて、意味のあることでも、他の人間にとっては、知覚できず、意味のないものであることがある。逆もまたしかり。それぞれの人間は、違う(環)世界に生きる。
    ・「世界は一つ」ではない。「ばらばら」である。
    ・後天的に獲得する経験をベースにすると、見える世界が異なるため、理解し合えないこと可能性がある。そのため、異なる人間たちが理解(共鳴?共感?)し合うためには、生得的に保持しているものをベースにしたほうが良い。五感。

    感覚で共感する。

    ・味覚
    ・嗅覚
    ・触覚
    ・視覚
    ・聴覚

    同じ「経験」を「共有」することも重要になる。
    ただ、経験の解釈は人間それぞれのこれまでの経験によって異なるため、経験から生じた気持ちは100%正確には共有できない。「同じ経験をした」という事実のみ共有できる。

  • 以前読んだ『数学する身体』でこの概念と本が紹介されていたので読んでみた。もとは1933年に書かれた本で2005年に岩波文庫に入ったらしい。

    生物はそれぞれの知覚に沿って「環世界」があり、その中で暮らしている。マダニは表皮全体に分布する光覚と、哺乳類の皮膚腺から出る酪酸を嗅ぎつける嗅覚、毛のない皮膚を見つける温度感覚で生きている。豊かな森の色や風を感じる機能はないし、感じる必要もない。

    限られているという点では人間も同じことがいえて、イルカやコウモリがわかる超音波は聞こえないし犬ほどの嗅覚もない。四肢と筋肉を制御する中枢と運動機能がついているけれど、チーターのような速さはない。

    まるでそれぞれの個体がシャボン玉に包まれたような環世界の中にいる、という考え方が面白い。わかりあえるというのは無理で、わかりあうための共通の知覚や反応すら生物同士では共有できない。それでも絶妙なバランスで成り立っているのが不思議になる。

  • 原作は1934年に書かれた物で、生物機械論などを論じており、今の生物学とは考え方の根底が違う感じ。哲学から派生した生物学という感じです。
    古い本だからか「〜な事は明らかである」とか、理系っぽく無い表現がある。
    また、遺伝学や心理学がない時代だったためか、オトシブミが繭を作る様子とトラウマを負った鶏の行動を「魔術的」と同列に扱っていたりする。

    ダニは酪酸を感知して枝から飛び降り、温帯動物を捕まえる。その後毛の少ないところを探して顔を突っ込み暖かい血を体に流し込む。全て反射である。感知して体を動かす(作用)事がダニの全てで、それだけがダニの環世界。作用世界は体を動した(作用)時に感じる空間的な世界で、三半規管を中心に三次元的に広がっている。
    知覚世界+作用世界=環世界⇔環境
    環世界は動物毎、個体毎に異なる着色(トーン)されている。

    人の認知限界は1/18秒で視覚、触覚、聴覚で共通。

    環世界には純粋な主観的現実があるが、環境の客観的現実がそのまま登場しない。

  • Twitterで感想を書いてる人がいたので早速借りてきた。そう。そうですよね。ここでは其々異なる種の動物における「環世界」について教えてくれてますが人間、というか、友人家族恋人でもそうですよね。

  • いろいろと驚きがいっぱいな割に、すぐ読み終わる本。

  • 9/27

  • 「知覚」と「作用」からなる環世界。生物は目的をもって作られるわけではなく、ただそう設計されているだけ。

    定義はそこまで厳密ではありませんが、この切り口は面白いし使いやすいです。何かを経験する前後で世界が変わって見えたり、芸術に触れたときに作家が見ている世界観が垣間見えたりしますが、これを「環世界」と呼んでもいいのかも。

  • 1933年に書かれたとは思えない。今こそ環世界の違いについて考えるべき時代が来ていると言えるのではないか。
    呪術的世界についての言及が面白かった。お化けとかは主観的にありありと存在することが説かれている。それって国家や神が幻想であると強調するハラリの言説の根本ではないか。などなど。

    • kamichofさん
      1933年のコンセプトとは思えない、環世界。呪術的世界にも言及があってお化けとか存在しないが主観的にはありありと存在するものを示しているが、...
      1933年のコンセプトとは思えない、環世界。呪術的世界にも言及があってお化けとか存在しないが主観的にはありありと存在するものを示しているが、それって国家とか神とかじゃんか
      2022/09/04
  • NDC(9版) 481.78 : 一般動物学

  • 環世界って概念はなぜこんなにもぼくを惹きつけるのだろう、、、

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