世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「意識高い系2.0」ともいうべきか。
    理論と理性が重んじられてきたビジネスシーンにおいて、直感や感性も必要になりつつあるという。
    ちなみに「美意識」とは読んで頂けると分かるが、単に芸術的素養のみならず、モラルや哲学的思考であったりと意味が幅広い。

    読んで感じたことは安堵感と無力感だった。
    二つの(どちらかというと)相対しそうな感想について主観を多分に交えて書こうと思う。

    まず安堵感について。
    話は飛躍するが私は本棚にビジネス新書と自己啓発本しかない人とは気が合わない。雑多にフィクションから哲学書、漫画本など色々な本を読んでいる人が好きだ。(もちろんその中にビジネス書があったっていい。)
    一方で世間的には実学と呼ばれる学問の評価が高くなったり、いわゆる「デキる奴」は理論的かつ生産性が高くなければいけないというイメージも出来てきていた。
    そんなデキる奴に言わせれば芸術に親しむ(例えば通勤電車で経済誌ではなくSF小説を読む)ことは無意味なことなのかもしれない。
    そうした無味乾燥な価値観を個人的に「面白みがない」とは思いつつも、じゃあいったい芸術に触れることは本当に自分の向上になっているのか?という問いにははっきりとした説明がつかなかった。
    なんとなく芸術に触れた方が人生が豊かになる気がする、という肌感のみで。

    ところがこの本はそうした「美意識を磨く」ことは資本主義社会での競争の上で必要になると説く。
    それはある意味で私の長年の鬱屈した思いをを晴らすものだった。
    仕事を終えて映画を観たっていいんだ、週末に音楽を聴きに行ってもいいんだ、と。

    が、しかし(ここからは無力感の話)、本書で言及しているのは「エリート」だ。
    私自身は中産階級にかろうじてしがみついているので、大きな組織やシステムの意思決定をする「エリート」の影響力には遠く及ばない。
    なおかつ本書では「非理論」を評価しているのではなく、「超理論」(≒スジの良さ)を評価しているのであって、そもそも理論的思考ができない人間は土俵にすら乗っていないのだ。

    なぁんだ、私にはどだい関係のない話か。
    と意気消沈しかけてふと気づく。
    そもそも自分の社会的地位で自己卑下すること自体が「美意識に欠けた」価値観なのでは、と。
    であれば本書の対象はエリートだけではなく、世間一般にも当てはまるのかもしれない。

    ただ難しい点は著者が「おわりに」で述べているように、世の中がシステマチックであることを善とするエリートによって硬直していること。
    変えよう、というインセンティブが働かない。(ゲーム理論のナッシュ均衡と表現されている。)

    この「美意識」をよしとする価値観が私レベルのビジネスシーンに浸透するまでどのくらいかかるのだろう?
    なんだか希望がもてたような、あまりの果てしなさにくらくらするような。

    とりあえず哲学は少し勉強しようと思った。

  • これまで読んできたビジネス書、見てきた時代の流れ、聞いてきた一流のビジネスパーソンの言葉に対する抽象度をグッと上げてくれる最高の一冊。

    出会ったエリートに視野の狭さや芯のなさを感じたことがあるなら、その理由は全部この本に書いてある。

  • ロジカル思考が普及してエリート全員が同じ答えを出せる時代、アートの素養こそが突き抜けるための武器。
    個人的にはAI/IoTなどによって急激な変化を続ける現場において実定法と自然法の考えが響いた。

  • タイトルほど軽くない内容の本書。

    ざっくり要約すると、
    現在の外部の物差しを基準にした、論理的、理性的判断では、今後は立ち行かなくなる(もうなりつつある)。
    そのため、今後は、自分自身の内部の物差し(美意識)にし、真・善・美を直観的、感性的に判断するケースが出てきている。(今は、特に日本は、論理、理性に寄りすぎている)
    そして、その自分自身の物差し(美意識)を鍛えるべきである。
    という本。

    色々な角度から、様々な引用を用い、丁寧に書かれている。
    何度も読みたい本。

  • 現代版の 論語と算盤。美意識とは倫理観、哲学という表現の方がしっくりくるかも。言葉のミスリード印象と同著者の劣化するオッサンの、、、方が面白かったので星3つ。

  • エリートにもそうでない人にもサイエンスでビジネスをやっている人達は一度是非読んでもらいたい本です!

    筆者の考える美意識とは、論理的に考えても正解を選べる確率が50%か51%かという問題に対し、超論理的な直感で選択できるようになるための自己基準のことだと思う。このような美意識が必要なのは主に以下の3つの理由。

    1.論理的、分析的な情報処理をすることは究極的には他人と同じ判断をすることになり、その技術が普及した今差別化の消失をもたらす。
    2.自己実現的な消費社会になり、消費者にアピールする美意識や感性が重要になる。
    3.システムやテクノロジーの変化にルールが追いつかないため、美意識(自己基準)が必要になる。

    日本は戦前のサイエンスを忘れ、超論理的な精神論(神風的な)で戦争に突入し敗戦を経験し、そこからサイエンス重視の風潮になった。高度成長時代は人と同じ答えを早く、安く市場投入する事で戦ってきたが、この強みが失われつつある。論理的に考えられるものは考え、そうでないものは直感的に考えるバランスが肝要。

    今の会社は論理的に考え、あとでなぜその判断になったか説明可能な状態(アカウンタビリティー)を、重視するあまり、判断がこんじんまりしたものになったり、スピードが遅くなったりしている傾向は実感しています。

    今後、アカウンタビリティーに囚われすぎる事なく、想像力豊かな選択ができるビジネスマンになれるよう自分の美意識を鍛えて行こうと感じました。

    そのためには色んな人と話し、ビジネス書に限らず色んな本をもっと読んでいこうと思います!

  • 著者の山口さんの世界の捉え方はやはりすばらしい。
    これまでのビジネスと、今そしてこれからのビジネスにおいて必要とされるものについて分かりやすく書かれている。
    少々ネタバレになってしまうが、論理的・合理的な考え方だけではこれからのビジネスで勝っていくことができないということで、そこに苦手意識を持っていたような人には是非読んでもらいたい1冊。

  • 正解の導き方や正解がコモディティ化する。その通りだと思う。でも、美意識を起点に事業化する難しさもある、半分以上がその人の美的感覚に頼るから、一部の人から共感、共生を広める手法が大事たね。自分にとっての美意識がらわからん。

  •  論理性や生産性にもとづいて発展してきた現代社会に不足しているのは美意識であり、これに注目したものが次の高みに到達できるという内容だ。おおむね述べられていることには賛同できる。
     そもそも現代の日本は何かに追われるかのように社会をつくりあげ、目的もないままに経済的成功を幸福だと信じ込んできた。すべてが定量化できると信じ、その基準の一つが経済的な価値であった。それは現代人の多くの人の判断基準である。
     しかし、かつては一部の才人にしかできなかったことが、情報共有の恐ろしいスピードによって瞬く間に陳腐と化してしまう。その中で生き残れるのは他とは違う価値観が内包されているもの(こと)だけだというのだ。その価値観を身に着けるためには真善美のレベルを上げていかなくてはならない。ここに文学や美術などの芸術鑑賞の素養が求められてことになる。
     行き過ぎた効率主義への反省や、これからの人生のあり方、産業界が目指すべきものなどを考えるきっかけになる。

  • 【気になった場所】

    機能の差別化から情緒の差別化へ
    →not only 論理+理性 but also 直感+感性

    世界は美意識を鍛えている
    →分析や論理や理性に軸足を置いた経営では、今日の複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りができないため

    世界が美意識を鍛えている理由
    ①論理や理性による情報処理スキルの限界
    ・他人と同じ正解に行き着き、差別化が損失
    ・VUGAな世界では通用しない
    ②人々の消費行動が自己実現を求めつつある
    →すべての消費ビジネスがファッション化
    ③システムの変化に法律の整備が追いついていない
    →明文化された法律だけを拠り所にせず、自分なりの美意識に照らして判断する態度が必要

    例)
    ・グローバル企業が世界的に有名なアートスクールに幹部候補を送り込む
    ・美術大学院のMIFがMBAより評価を受け始める
    ・知的専門職が出勤前に美術館を鑑賞する

    企業は人であり、ビジネスは人とのコミュニケーションによって成立する以上、すべてを数値化して管理することは不可能
    →測定できないものに対して、リーダーの美意識によって判断すること

    例)
    会社を作品として考えると、芸術もビジネスも同様

    論理と直感の違い
    ・論理→プロセスを経て結論に至る
    ・直感→プロセスを飛ばして結論に至る

    理性と感性の違い
    ・理性→正しさや合理性を軸足に意思決定
    ・感性→美しさや楽しさを軸足に意思決定

    例)
    ソニーのウォークマン
    →最初は名誉会長の井深大が飛行機で聴きたいために開発部門に作らせた特注品
    →創業経営者の森田照夫も気に入り製品化
    →当時は大きなスピーカーで、ラジオを録音して楽しむ客が多いと市場調査で出ており、現場は製品化に反対

    例)
    ジョブズのiMacの色
    →発売直後に5色のカラーを追加
    →製品コストや在庫シュミレーションを行わず、デザイナーからの提案を受けたその場で即断

    論理や理性で考えてもシロクロつかない問題には、直感を頼りにしたほうがいい
    →論理や理性を蔑ろにしていい訳ではない
    →優れた意思決定の多くは、非論理的ではなく、超論理的

    論理や理性で考えてもシロクロつかない問題には、直感を頼りにしたほうがいい理由
    ・いつまでも意思決定できなくなる
    ・他と同じ戦略となり差別化できなくなる
    →差別化するにはスピードとコストが必要
    →いまの日本にはどちらも他国に負けている

    説明責任は、意思決定者の責任放棄を招く
    →説明責任を過剰に求めると、リーダーの個人的な美意識による意思決定がしづらい
    →直感や感性による意思決定は、論理や理性のそれに比べて説明責任が弱い傾向にある

    例)
    googleのミッション
    →世界中の情報を整理すること
    →多額の買収費用を回収できるか不明だったyoutube買収についても「動画という情報を集めるため」

    絵を描くことはリーダーに求められる認識能力を高める

    経営とデザインに共通する本質
    →エッセンスを残し、他は切り捨てる

    競合他社が真似できない強みとは
    →ブランドに付随するストーリーと世界観
    →デザインとテクノロジーはコピー可能
    →イノベーションにはストーリーが必要

    美意識=自分なりの真善美に関する基準

    美意識の鍛え方
    ・絵画を見る
    →ちょっとしたヒントから洞察を得る
    ・VTS=Visual Thinking Strategyを行う
    →作品を見て、感じて、言葉にする
    ・哲学に親しむ
    ・文学を読む
    ・詩を読む
    →リーダーシップと詩は、レトリック=修辞が命という点で共通


    例)
    VTSでの質問
    ・何が描かれているか?
    ・絵の中で何が起きていて、これから何が起こるか?
    ・どのような感情や感覚が、自分の中に生まれているか?

    観察眼を鍛えると、パターン認識から解放
    →パターン認識を身につけると、エネルギーを省力化して効率的に過ごせる一方、観察眼が失われイノベーションが起こしづらくなる


    例)パターン認識の例
    エジソンと実験工房の共通点を聞かれ、発明と答えること

    哲学から得られる学び
    →コンテンツ+プロセス+モード

    すぐに役立つ知識はすぐに役立たなくなる

    現在のエリートの戦略
    ・自分の所属するシステムに最適化しながら、システム自体への懐疑は持ち続ける
    ・その上で、システムを改変できるだけの権力を獲得するために動き、理想的な社会の実現に向けて、システムの改変を試みる

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著者プロフィール

山口周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。
慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。2019年7月4日、『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)刊行。

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