本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本
感想・レビュー・書評
-
藤沢周平には、武家物•市井物•剣豪物•歴史物…等、様々な分野がありますが、「蝉しぐれ」は、それらの全ての良さを兼ね備えた優れた青春物、だと思います。
そして、特筆すべきは、同郷出身の作家、井上ひさしをして「類まれなる日本語の使い手」と言わしめた文章表現の美しさです。この作品は特に、「日本人に生まれて良かった!」と思える文章に溢れていると思います。その冴え渡った切れ味、全ての人に体感して欲しいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あらすじ
15歳の牧文四郎は、市中の剣術道場と学塾に通い、親友である小和田逸平や島崎与之助との友好を温めながら、隣家の娘小柳ふくに淡い恋心を抱いている。そんな平凡な日々がおだやかに過ぎてゆく中、父である助左衛門が、お世継ぎをめぐる政争にまきこまれて突然切腹させられる。残された文四郎は家禄を28石から7石に減らされた上、母、登世と共に普請組屋敷から葺屋町の長屋に移される。また、ふくは藩主の正室に奉公するために江戸に向かう。旅立つ直前、ふくは文四郎に会いに来たが、結局会うことはかなわない。
罪人の子とさげすまれる中で、文四郎は鬱屈した気持ちを剣術修行にぶつけ、めきめきと腕が上達する。そして、松川道場との対抗試合で勝利した結果、師である石栗弥左衛門が考案した秘剣村雨を、唯一の伝承者である加治織部正を通して伝授される。その頃、与之介が文四郎に、ふくは藩主の手が着いて側室お福となったこと、子を身ごもったが流産したこと、それが側室おふねの陰謀らしいことを語る。その後、学問を修めるために江戸に向かった与之介は、ふくが藩主の寵愛を失ったと手紙で知らせてくる。文四郎が秘剣村雨を伝授された前の年、家老の里村に呼ばれ、家禄を28石に戻し、郡奉行支配となる旨を告げられる。20歳の時には、正式に郷村出役(でやく)見習いに任じられ、岡崎せつを妻に迎える。その後、里村家老と、里村が属する派閥の領袖である稲垣に、欅御殿に潜むふくの息子を里村の屋敷に連れてくるようにとの密命を受ける。ふくは藩主の寵愛を失って暇を出されたはずだったが、それはおふね一派に対する偽装工作であり、ふくは藩主の子を宿していたのである。罠の臭いを感じた文四郎は、逸平や剣術の友である布施と共に欅御殿を訪れ、ふくに事の次第を説明して、共に稲垣派と対立する横山家老の屋敷に脱出するように願う。その時、稲垣派の襲撃隊が屋敷を襲ってくる。襲撃隊を退けた文四郎は、ふく親子と共に横山家老の屋敷に向かうが、稲垣派の警戒が厳しかったため、急遽加治織部正を頼ることにする。その結果、横山派が稲垣派を押さえて藩政の実権を握ることになる。この時の功績により、また父助左衛門の過去の功績が認められ、文四郎は30石が加増される。
それから20数年後、ふくを寵愛した藩主が亡くなって1年近くたったある日、助左衛門の名を受け継ぎ郡奉行となっていた文四郎は、突然ふくから呼び出しを受ける。そして、懐かしく言葉を交わした後、二人は肌を合わせる。この後出家するというふくと別れた後、後悔と満足の入り交じった思いを抱きながら、耳を聾するばかりの蝉しぐれが響く中、文四郎は馬を駆けさせる。
感想
ふく、ありがとう。
文四郎は、もっともっと頑張って下さい。 -
本当の純愛とはこういうものなのかと。
時代が故に決して交わってはならない関係になってしまったが、愛する人への想いは決して変わらないと。
とても素敵な作品でした。 -
藤沢周平氏の本は初。タイトルは知っていましたが、何故か読む気になった。
構成の上手さ、展開の面白さ、何気ないエピソード、登場人物の個性、など、小説の読みごたえがある。
そして何より、読みやすさが大きい。
2025/03/08 7冊目 -
テレビで放送、映画にもなっている
そこそこ資産もあり幸せだった家族が、父が謀反の疑いをかけられて切腹させられ、貧しい暮らしを強いられ白い目で見られながらも親友と共に逞しく成長する。幼い頃にお世話した隣家のお福とは恋心芽生えつつも運命により別々の道を進み、最後に再会し愛を確認する。
正直、よくあるストーリーだが、表現により情景がありありと浮かび、どんどん読み進めてしまう作品。 -
読んでいて安心感がある。
水戸黄門みたいな話。 -
海坂藩の情景描写が目に浮かぶように表現されている。解説にも書かれているが、時代小説のなかにも詩的な筆致が加わり清々しさを感じる。著者の藤沢周平ならではの小説であると思う。藩内の抗争に巻き込まれ殺される事になる父と文四郎の最後の対面、石高を落とされ、母と2人の惨めな暮らしに転落する中でも、頼もしい友人2人とともに剣を磨きながら、立派に成長していく文四郎。やがて、石高を元に戻してもらう日がやってくる。
幼い頃、隣に住んでいた少女ふくが殿様の側女になり、子どもを身籠る事に。ラストの文四郎とふくが人目を避け、部屋で対面するシーンは胸に残る。
藤沢周平の筆力が感じられる素晴らしい作品で、何度でも読み返したくなる本のひとつ。 -
父がいいぞーと言うのでついに読んでみた
時代もので青春もの
父の好みで自分も気に入った本のひとつになった
また同作家で読んでみたい -
後書にも書かれているが、これぞまさに、な青春小説。
牧文四郎の生き様が格好いい。
おふくとの恋愛とも呼べないほのかな淡い思いと、逸平、与之助との友情、鶴之助との間に生まれる剣士としての絆。
父が汚名を着せられて刑に処されるという不遇にあいながらも、ところどころに散りばめられる人情に青春の爽やかさを感じずにはいられませんでした。
特に文四郎が剣をおさめていく姿がよく、敵や好敵手と相対するときの描写は、その道を知らずとも興奮し、情景が目に浮かびました。
海坂藩を舞台にした話は他にもあるとのことなので読んでみたいです。 -
筆者の巧みな表現によって、美しい情景や手に汗握る斬り合いのシーンなどを頭に浮かべながら読み進むことができた。
今の時代でも変わらない情景もそこにはあるのだが、私自身は暇さえあればスマホを見てしまう。
しかしこの本を読み、ふと顔を上げて周りの景色を見れば確かに建物などの変化はあるが、雲や風、山などの情景はこの本で表現されていたように美しく感じた。
また、その景色は見る人の心情によって多少見え方も違ってくるのだなと思った。自分の感じた気持ちを表現する力が欲しいと切実に感じた。
この本を読むのは2回目だ。
最初に読んだときは文四郎の武士としての生き様に、心を打たれた。当時は高校生であり、作品中の登場人物と同年代。時代は違えど大人に甘えてばかりの自分の未熟さを痛感させられた。
2回目を読め終えた今は25歳。
「人生は儚い」おふくの最後の言葉が今も胸に余韻として残っている。
なかなか思い通りにいかず、答えを探している間に時間は過ぎていく。その時間の無慈悲さが人生を儚いものにさせている。だからこそ、今という瞬間はもう2度と取り返せないものであり、非常に尊い。それが美しい思えた自分は、少しは大人になったのだろうか… -
5年ぶりに再読。改めて下級武士の生活や生き方が知れた。とにかくまっすぐで青春の要素もあり読み応えがあった。
本棚登録 :
感想 :
