日本沈没 決定版【文春e-Books】 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「復活の時」といい、この「日本沈没」といい、小松左京氏の超人的なイマジネーションには感銘を通り越してもはや畏怖の念を禁じえない。特に今こういう時に読み返すとそう思う。

    当時(70年代前半)は、いまでこそ中学生でも知っているプレートテクトニクス理論が、ようやく出てきたか出てこないかというような時代。
    その当時にここまでリアルに日本列島が沈んでいく様をじわじわとリアルに描写してしまうとは。
    人間の想像力ってやはり現実を凌駕するよなぁ、すごいんだよなぁ、と。

    311の震災の映像が、あまりに衝撃的で逆にまるで映画のリアルなCGを見ているかのような錯覚、というか現実だとは思いたくないとある種脳の防御反応が働いているような気がしたものだが、作中の描写はそれはそれは真に迫り行を追うごとに手に汗を握る緊迫感だ。

    小松左京氏のイメージでは観測史上最大の、未曾有の大震災において人間がどう反応するか、政治がどう対応するか、科学者や地震の研究者がどう行動を起こすか、というシミュレーションがもうこの時代にすでに頭の中で出来ていたんだよなぁと、あらためて溜息。

  • タイトルは知っていても、実際には読んでいない名作は山ほどある。本書も気になっていた1冊。そのあまりに強烈なタイトルから、日本沈没時のパニックに焦点を当てた作品だと思っていた。ところが、本書は日本沈没自体はエピローグとして、日本列島沈没という恐ろしい可能性に気づき、世間に秘匿したまま対策を講じる科学者たちの苦悩を克明に描き続ける。1960〜70年代の最新の科学知見が分段に盛り込まれ、日本沈没のリアリティが高められる。現代の地震学によると日本の沈没は考えにくいそうだが、阪神・淡路大震災、東日本大震災の経験を思い起こさずにはいられない。また本書は優れた文明論にもなっている。
    しかし、やはり現在のコロナ禍による混乱と照らし合わさずに読むのは難しい。緊急事態宣言、国難などなど、この数カ月で覚えた言葉が本書にも多数登場する。壮大な思考実験であり、シミュレーションである本書では、科学者のデータに基づき、首相はある決断を下す。翻って現実のコロナ禍では、科学者の懸命な努力に対し……。

  • 日本が海に沈む物語はあまりにも有名なので作品の内容には触れない。本作品の大作度合いは頭一つも二つも飛び抜けている。フィクションではあるが、日本に住んでいる人なら将来あり得る災害に思えるだろう。日本沈没まではいかないが南海トラフで地震が発生した場合、政府はこのような決断や行動ができるのだろうか。田所博士のようなカンのいい学者が活躍するようなことがありえるのだろうか。など、現在の政治や科学の状況に恐怖してしまう。ご子息の解説も本作品が完成する前から後までのことが書かれている。ひとつの大作を創作するまでの苦労はもちろんだが、大作であるがゆえに出版後の苦悩も半端ない。

  • 長かった!正直科学的、地学的、学術的な細かい説明がきつかった。政治パートはまだしもでした。小野寺のキャラはめちゃくちゃ良くて、小野寺周辺のドラマ部分は面白かった。田所、渡なんかのキャラも良かった。夢中で読める部分と、まったく頭に入らずきつい部分とがあって読むのに時間がかかった。結局、最後はようやく終わったーという後味になってしまった。Kindle版の解説がまた長くて途端でやめました。

  • 「日本沈没」第一部は、何度読んでも素晴らしい。リアリティもあるし、登場人物も好感がもてて応援したくなる。
    第二部はとにかく「わからない」が多い。登場人物たちが右も左もわからない中翻弄される様を描きたかったのかもしれないが、あまりに主体性がなく、イラつく。

  • 1960年代の作品だが、まったく色あせていない。むしろ、阪神淡路大震災・東日本大震災等の大地震を経験してからの読書体験となっている現在では、津波の描写が異常にリアルであり、怖くなる。

    SF的な技術設定は微妙に古くて、逆に現在の技術であればもう少し先をいっている感じもあるが、登場人物が戦争経験者など一部分を除くと、今書かれた作品といわれても十分通用しそう。

  • 話題のドラマの原作ですな。地質学的カタストロフの面も面白いが、日本難民を世界がどう扱うのか、ということへの考察でもある。ドラマよりは現実に沿った記述、という気はする。面白いが、男女関係がこの人ステレオタイプな男女像に固まっていて、そりゃ時代を考えればしょうがない気もするけど、そのあたりの台詞は下手だからあんまり挿入しないで欲しいんだよな...

  • 圧倒的なディテールをもって、日本列島が沈没するまでが描かれる。現実にはありえない出来事ながらも、理論的裏付けや科学者たちの行動が詳細に描かれていて、荒唐無稽には思えず、読みながら恐ろしくなった。
    巻末の、小松左京の次男による裏話も必読。小松左京が日本人に向けたまなざしが伝わってくる。

  • 最初3-4割までは、なかなか読み進まず…ただ地震が多いな…と感じるたびに、再び手に取っての繰り返しでした。「第二次関東大震災」が起きてからはもう息をつくのも忘れるほどの勢いで読み進めました。地理・地学的によく研究されている感のある一連の出来事に加え、当時の経済的に勢いのあった日本、まだまだ東西の緊張がある中での日本の「喪失」をめぐって各国の政治的外交的な思惑がなかなかにリアル。こういう局面で私だったらどうするかも考えた。当時より日本民族という意識は弱まってる気がするけど、危機に瀕したら目覚めるのだろうか?

  • 読んでいる最中に地震が起きるとどきっとする。筆者の想像力だけでなく実は科学的に裏打ちされた古典的なSFの名作。

    電子版は上下巻合本、ご子息による非常に詳しい解説付き。

    実際に起こり得る地震や火山活動による被害、政府や研究者の行動など。実にリアル。後の他の作品にもたらした影響も無視することはできない。

    小松左京といい星新一といい、SFの名作を書くには想像力のほか、相当な科学の知識が必要なようだ。

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著者プロフィール

昭和6年(1931年)大阪生まれ。旧制神戸一中、三校、京大イタリア文学卒業。経済誌『アトム』記者、ラジオ大阪「いとしこいしの新聞展望」台本書きなどをしながら、1961年〈SFマガジン〉主催の第一回空想科学小説コンテストで「地には平和」が選外努力賞受賞。以後SF作家となり、1973年発表の『日本沈没』は空前のベストセラーとなる。70年万博など幅広く活躍。

「2019年 『小松左京全集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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