- 本 ・電子書籍 (263ページ)
感想・レビュー・書評
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男女の出会いや恋愛に関する6つの連作短編を収録。「アイネクライネ」、「ライトヘビー」、「ドクメンタ」、「ルックスライク」、「メイクアップ」、「ナハトモジーク」。
著者は「あとがき」で、表紙を描いたミュージシャンの楽曲が「「悲観的な中で楽観的な話をしたい」という僕の世界と繋がっているような気がして、聴くたびにいつも嬉しくなります」と書いてる。そっか。「重力ピエロ」とか「グラスホッパー」「オーデュボンの祈り」とか読んで感じた違和感の正体がやっと分かった。残酷なこと、悲惨なことを何でもないことのようにさらっと書くのが著者の特徴なんだな。著者のリアリティ系ミステリー、登場人物に感情移入できない気持ち悪さが勝っちゃって、ストーリーを楽しめなくなっちゃうんだよな。
本書は、そんな残酷なシーンの出てこない、普通の出会いもの。最終話「ナハトモジーク」で、各話の登場人物の関係やその後の人生が解説されていて、読後感もスッキリ!
そういえば小学校のとき、家でモーツァルトの「アイネクライネナハトモジーク」(K.525)のレコード聴きまくってた。シングル盤サイズだったけど33回転、ドーナツ盤じゃなかったな。一番のお気に入りのクラシックだった。懐かしいな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
伊坂入門書としては花丸で紹介したい。
面白い。面白いけど、、、
う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。
伊坂さんは大好きだけどイマイチパンチに欠けるという印象。最後の伏線とかを期待しながら読み進めてもあまり関係なかったりするので、まぁこんな感じよねという感想しか残らなかった。
個人的には、メイクアップのその後がどうなったのかは気になった。
今まで伊坂作品はかなりの量読んでいるからこそこういう感想になっちゃうのかも。 -
全6章の短編集の登場人物がいろんな場所で意外な出会いに繋がるのが面白い。
もう一度読み返したくなる。特に第二章の出会いに痺れた。
斉藤和義さんの「ベリーベリーストロング」が思った以上にこの本の要約がされていて、音楽を聴きながら本の余韻に浸れる。 -
【自分が正しい、と思いはじめてきたら、自分を心配しろ】
日常と地続きの、静かで心地よい変化と気づきが魅力の本作。この作品での“出会い”は、「運命の赤い糸」というほどたいそうなものではない。わざわざつかみにいくものでもなく、決してドラマチックなものでもなく、何気ない日常のそこらへんに転がっているものとして位置づけられている。何より主人公の名前が「佐藤」という日本中どこにでもいる苗字なのが、すべてを物語っている。“出会い”と呼ぶには少し大げさであるささいな“縁(きっかけ)”から、それぞれがそれぞれの愛を育んで、“出会い”を必然的なものに変えていく様は、とても温かく愛おしい。 -
『アイネクライネナハトムジーク』というタイトルで真っ先に思い浮かぶのは、モーツァルトの超有名な曲です。すぐに第一楽章の出だしが頭の中で鳴り響きます。
アイネ・クライネ・ナハトムジークは『小夜曲』・・・セレナーデと訳されています。
そしてこの小説ですが、ミュージシャン斉藤和義さんから「恋愛をテーマにしたアルバムを作るので、『出会い』にあたる曲の歌詞を書いてくれないか」と依頼され、伊坂幸太郎さんが「作詞はできないので小説を書くことならば」とお返事をしたのがきっかけで、できあがった短編集であると、あとがきで伊坂さんが述べられています。
6編の短編からなるこの小説ですが、登場する大勢の登場人物が何らかのつながりを持っていて、また時系列も未来へ過去へと飛んだりして、早読みしてしまうとこんがらがってしまいますが、登場人物が相関する物語が好きな方には、もってこいの小説だと思います。
軽いタッチの短編で、また登場人物が多いので頭に残らなかったのもありましたが、1番印象的なのはなんと言っても第一話『アイネクライネ』で机を蹴飛ばした藤間さん。人物描写が1番わかりやすかったのもありますし、第三話『ドクメンタ』の主人公でもあるからです。
で、第三話の『ドクメンタ』が1番好きなお話です。なんか、周りにも似たような夫婦がいるなあと思ったり。5年に一度開催される行事での出会いが、恋愛に発展するのかなあ?と最初は思ってしまったり。
このお話は未来過去と時系列が飛びますが、第一話の机を蹴飛ばしたエピソードの藤間さんと出会った女の人の行く末がとても気になるお話でした。
そして印象に残っているもう1人は、お客がその時の気分や状況に応じて最高にマッチする歌を一回100円で売る謎の人物。売っている歌は、斉藤なにがしさんの歌だけだという。
斉藤和義さんの歌を聴いてみたくなること間違いなしです。 -
タイトル通り、寝る前にライトな気分で読むことに適した短編集でした。最終的にそれらが繋がっていく様もとても綺麗で、読んでいて楽しかったです。ただ、個人的にはその繋がりが綺麗だったが故にどこか扁平な印象を受けました。
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ほっとする短編が綾を成して全体を形作っていて、二度楽しめる感じのする小説。
途中から登場人物が増えてきて、ちょっと混乱しがちになるので、落ち着いて人間関係を振り返るとさらに楽しめると思う。
あとがきも興味深かった。
映画化もされているけれど、そちらもgood. -
人生の転機はいつどこで起きるか分からない!
と感じる人と人との出会いについての短編集。
私はボクシングの話が疾走感があって1番好きです。
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いくつかの短編、その中の登場人物がまとまって、一つの物語になっています。お話も、19年前、9年前、現在と分かれていて、登場人物の成長も楽しむことができます。伊坂さんの文章は、軽やかなんだけど、こちらにグッと迫るものがあり、物語に入り込みやすいです。最後まで楽しく読めて大満足です。
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僕は大袈裟だ。大仰な言葉をすぐに吐く。
人前では決して吐かないけれど、自分の中だけではすぐにそんな言葉が顔を出している。
でも、そんなこともいいんじゃないて思う。
そのくらいが自分に丁度いい。
奇跡なんてことを思い浮かべる。
奇跡とはきっとこの物語で起こったことみたいなもの。言葉ほど大仰じゃない。でも、それよりもずっととても愛おしいと思うもの。
いまこの物語を読み終わって、奇跡ってことを思っている。
日本人初のヘビー級チャンピオンが出てくるけれど、その彼だってとても普通なひととして描かれている。
世界一のチャンピオンだって、勇気を分け与えられて闘っている。自分が与えたと思ったものに、遠い未来に今度は助けられる。伊坂さんの描く群像劇は、少し滑稽で、少し情けなくて、少しだけ普通からはみ出してしまうようなそんな登場人物たちが、お互いに小さな伝播を掛け渡しあって、とても些細な力がお互いに影響を及ぼしあいながら、それぞれの世界を変えていく。決して大きな変化ではなくても、たしかに自分というものを作っていく、自分を取り囲む世界を変えていく。大袈裟だと言われたって、奇跡といいたいような、繋がりの物語を描いている。
奇跡ていう言葉がピタリとくる。
物語から出ているきらきらが、こちらの世界にまで伝播してきて、繋がっていくようなそんな気分が湧いてくる。
大層なヒーローは出てこない。僕たちくらい普通の人たちがそれぞれのヒーローにいつだってなることがある。小さなヒーロー。僕達はそうやってこの世界を生きているんだと気づく。
伝播する。この自分からだって、世界は変わる。
そう思えることが、何ひとつ特別なことじゃないって言っている。
今感じていることがキセキみたいなことだって、そう思う。
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伊坂幸太郎の作品





