2030年ジャック・アタリの未来予測―不確実な世の中をサバイブせよ! [Kindle]

制作 : 林 昌宏 
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感想・レビュー・書評

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  • 2016年に出版された本らしい。ということは、トランプ大統領出現(2017年1月)の直前だろうか?
    博識で独自の研究チームを率い、フランスで政権のブレインであったこともあるアタリは、文化・芸術にも精通しており、その情報収集力と解析力に基づいて、まあまあ的確な予測を立てることの出来る人物だろうと私は思っている。
    2030年というかなり直近の将来を予測しているのだが、たとえば遺伝子操作やコンピュータ類といった科学技術の急激な進展により誰も予想し尽くせなかったような時代が到来するだろう、という点についても共感できる。アタリは特に3Dプリンタの登場を重視しており、3Dプリンタで家も建てられるだろうし、医療や軍事部門でも革新的な活用がなされるだろう、また、アートの分野でも相当の影響を及ぼすだろう、としている。
    新しいテクノロジーは決まって悪事にも用いられるという点はさておいて、その後に書かれている破局的な未来は恐ろしいものだ。
    水不足、食糧不足、世界的な中産階級の経済的没落、超富裕層による富の独占、暴れ回る(インフルエンザなどの)新型ウィルス、地球温暖化、高齢化社会によって各国とも国内での福祉財源が枯渇。
    これらは「中産階級の没落」がまさしく日本でも見られているように、「既に始まっている」ことが多いのだ。
    アタリは今の時代を、主として自己の没落により「激怒」した大衆同士が戦争を始める時代と読んでいる。
    多国間の戦争の、起きる確率の高い予想としては、中国と組んだ北朝鮮がアメリカと日本に核爆弾を発射するだろうというものだ。もちろん、最近の金正恩とトランプのあいだの「宥和?」路線の対話が始まっている情勢をアタリは予測しなかったわけだが、思うにこの両者はかんたんに爆発してしまうセルフ休火山みたいなものだから、この先もいつどうなるかはわからない、と私は思う。
    トランプ大統領が出てきたような背景、各国に「ウルトラ」をつけてもいいような右翼政権が出現し始めている点は、とうぜんアタリは分析済みであり、「激怒」にかられた大衆が激しい暴力や宗教原理主義のような極端な排他性、ナショナリズムなどに駆り立てられる動きと同時的なものとしてとらえているだろう。
    そしてなんと、アタリは
    「民主主義が否定され、全体主義が復活する」
    と断言している。
    確かに日本をはじめ事態はそのように推移しているのだ。
    「民主主義は『民主主義を装った独裁制』という段階を経て独裁制へと移行する。」
    なるほど、今はまさに移行中なのである。
    さて戦争よりも先に経済の大不況が近々生じ、少なくとも10年間は不況やデフレが続くだろう、とアタリは予想している。そしてその発端となる「実現確率の高い」出来事として、中国のバブル崩壊と並んで日本の経済破綻を挙げている。日銀の国債買い入れのあまりの積極性をアタリはリスクとして計算しているわけだ。このへん、経済畑の論者によって言うことが正反対だったりして、私たちは戸惑うばかりなのだが、もちろん、アタリは経済面でもフランス政治に携わってきた人物である。
    これと退職者の大量発生によって預金がいっせいにおろされ、日本の財政赤字はさらに続く。そしてついに日本円が大暴落し、その激震で世界大不況になる、というシナリオだ。

    とにかく読んでいると、もうすぐ人類文明は滅びるんだなあ、と思わせられるのだが、「解決策」として、いきなりアタリは諸個人の人格的な改善を提案し始めるのだ。ここはぎょっとする部分である。まるでもうどうしようもないから、そういった人生論を触れ回るしか無くなったのではないか?と心配になる。なんとなく、ジャック・アタリの遺言というふうに読める。
    利他主義ということを彼は最重要なテーマとして掲げている。
    けれども、どうもそうそう人類がいきなり賢くなったり善人ばかりになるとは思えない・・・。
    ということで、やはりもう破局しかないのだ。そしてその破局は何十年も先の話ではなくて、すぐそこにあるのだ、という「確信」をもたらしてくれる本だった。

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著者プロフィール

1943年11月1日アルジェー生まれ。フランスを代表する知識人。81年〜91年大統領補佐官、欧州復興開発銀行総裁も努める。

「2001年 『反グローバリズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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