本作のテーマは「自由」と「謙虚」。
◼️自由
権威主義・形式主義的で因習に縛られたカロールメンと自由なナルニア。ナルニアでは物言う馬と人間は対等である。タイトルの “The horse and his boy (The boy and his horse ではなく)“ は自由なナルニアの象徴だろう。
ただ、中東風で有色人種ののカロールメンは悪い国、ヨーロッパ風で白人のナルニアは良い国という描写は、今ならちょっと問題になるのではないかと思った。
奴隷としてカロールメンで生きてきた物言う馬ブリーが、アスランに追いかけられて全力疾走するシーン。「奴隷となることの最悪の結果は、他人から強制されないと自分の意志では頑張れなくなってしまうこと。」
◼️謙虚
ライオンに向かって行ったシャスタと逃げたブリー。ブリーは自分は奴隷の方が相応しいと言ってカロールメンに戻ろうとする。アラビスも教養のないシャスタを見下していたことを反省する。「自分が何も特別な存在ではないという自覚を持っている限り、まともな馬として生きていける」と諭す仙人。
◼️その他
今作でも、アスランやその他の登場人物がが印象深い台詞を言う。
「人は往々にして、良いことをすれば更なる努力と結果を求められるものだ。」(仙人)
「わしは今年で100と9の冬を越したが、未だ運などというものに出会ったことはない。」(仙人)
「わたしは、あなたに向かってあなたのことを語るのであり、彼女のことを語るのではない。わたしは、その人自身に関わることのみを語る。わたしは、わたし自身である。」(アスラン)
「王は法によって決まる。選ばれる者が王になりたいかなりたくないかは関係ない。先王の評価も関係ない。」(アーケン国のルーン王)
この巻では、私たちが住む現代世界からナルニアに行く人はいない。代わりに「ライオンと魔女」の巻でナルニアに来て成長したルーシー、エドマンド、スーザン、ピーター(名前だけ)が出てくる。また、フォーンのタムナスも再登場する。