まほろ駅前狂騒曲 (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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  • まほろ駅前シリーズ3作目。これで一旦は終着しているが、続編を十分書けるような状況での終わり方。
    多田と行天の二人。相棒というのも、友達というのも、パートナーというとのも違うような。三浦しをんだけに、ボーイズラブも連想してしまうが、そういうものでもないと思う。
    関係性の名称はなくとも、この二人に限らず、誰かが誰かを覚えていたら、そこに何かが生まれる。生きている以上、少なくとも誰にもその可能性がある。
    夢を見たっていいじゃない、という、何かで見たフレーズを思い出す。
    それは、大島弓子の漫画のふわふわした絵面の奥に、もの凄いような孤独が伴走している、そんな感想にも通ずる。相当甘い認識から発せられているんだろうと推測しとしまうその言葉が、実はギリギリの精神が発している可能性だってあるのだと思ったりもする。
    夢を見たっていいじゃないと、言わなければ生きていられない時もあり、実際、何で人が生きているのかと言えば、それぞれの頭の中にしかその答えはないのかもしれない。食べ物が必要なだけあれば。

  • 当代の人気作家の一人、三浦しをん。
    その三浦しをんが直木賞を受賞した小説、『まほろ駅前多田便利軒』。
    作品は映画化され、続編も発表されました。

    『まほろ駅前番外地』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4167761025

    そのシリーズ第3作となる小説が文庫化されていると知り、電子書籍版で読むことにしました。

    今回の作品も、舞台は東京の西にあるという設定の、まほろ市。
    その駅前で”便利屋”を営む多田と、そこに居候している多田の同級生、行天が、主人公。
    便利屋に持ち込まれる、大小様々な依頼。
    それらの依頼に対処する、2人の姿が描かれています。

    そんな日常の中で、2つの大きな出来事が、2人に降りかかってきます。
    ひとつは、行天が苦手とする小さな子供を、預かることになったこと。
    もうひとつが、”無農薬野菜”を前面に押し出して活動している団体が、まほろ市に出没するようになったこと。

    このふたつ、プラスアルファの話が、全体の大きな流れとなって、小説が展開していきます。
    その成り行きを楽しむのが、この小説の味わい方のひとつ。

    そして、それらの騒動に対処するなかで、主人公の2人が自分の内面と対峙する様を読むというのも、このシリーズの重要なポイントだと思います。
    今回も、過去の辛い記憶とどう向き合っていくか、愛情というものをどのように表現するのか受け取るのか、といったことを考えさせてもらいました。

    この2人の”その後”を知りたい気持ちも残りましたが、このシリーズは本作品で完結のようです。
    残念ですが、しっかり味わわせてもらいました。

    この作家さんが次に、どのような作品世界を提示してくれるのか、楽しみにしたいと思います。

    『政と源』三浦しをん
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B073GM66RN

  • まほろ市という町田をモデルにした架空の町を舞台に、二人の便利屋がトラブルに巻き込まれたり巻き起こしたりする話、完結編。

    相変わらず、行天は破天荒な動きをし、
    曽根田のばあちゃんは予言をし、
    岡老人は憤慨し、
    星は無茶な要求をし、
    由良公はマセた子供だし、
    多田は振り回されつつも付き合う。

    新たな登場人物や変化もあり、
    タイトルに違わず駅前で
    クレイジーな騒動も発生する。

    一連のゴタゴタの結果、
    多田と行天のそれぞれが抱えていた悩みも
    答は出つつあるのかなと。

    二人の間の対話だけでなく、
    町の様々な登場人物とのコミュニケーションで
    二人の中で整理がついていくのが良い。

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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