東芝の悲劇 (幻冬舎単行本) [Kindle]

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  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  •  2015年に巨額の粉飾決算が明らかになった東芝は、決算報告が出せないという異例の事態に陥った。「チャレンジ」という言葉で無理な予算達成が要求された結果、次第に違法またはグレーな手法で利益を生み出すようになっていたことが原因とされている。本書は、無理な要求をした経営者と、不正な手段を考案した担当者の両方について、豊富な資料とインタビューから内情を描いている。

     具体的な個人名を挙げてその人柄まで踏み込んだ記述は生々しい。1996年に社長に就任した西村泰三から現在の綱川智まで7代の社長が登場するが、著者の評価はいずれも非常に厳しく、「名誉欲は人一倍強かった」「マスコミ受けするスタンドプレーを好んだ」「所詮社長の器ではなかった」などの辛辣な言葉が並ぶ。直接インタビューした相手をこうまで書いて、しかも恐らく本人も読むであろうことを考えると、すごい度胸だと思う。

     東芝ほどの大企業・名門企業の社長ともなれば相当の人物のはずだが、本書で描かれた内幕は実に見苦しい話が多い。こんな人の下では働きたくないと感じるエピソードが多数出てくるが、東芝の一般社員が読んだらどんな気分になるだろうかと同情する。

  • 東芝の色々について学びたく、Kindleセールで購入。
    歴代経営者の施策と来歴につい触れながら、今日に至る状況の推移を追っている。各経営者について、批判的な色合いが強いが、生々しく描写された書かれている姿はいずれも一流のビジネスパーソンであることがうかがえる。果たして描かれているほど俗人的な理由で経営判断がなされていたかは疑わしい部分もあるが、発言の引用などは見事な取材量であると感心した。

  • TOP如何の資質で、ここまで大企業が傾くとは、正直思わなかった。
    私も海外事業所が閉鎖されていく様子を、間近で見ていたが他人事だとは思えなかった。
    日本の大企業は、多かれ少なかれ、似たような企業風土(上に文句を言えない)を持っているからだ。

    担当者は、みな本社には戻れず子会社出向。
    そしてその子会社も海外メーカーに売りに出せれるだろう。
    年収にして、おそらく半分以下になる。
    みな家族がいる方だったので、
    どう生活していくのか。

    また、外資系は、能力主義が徹底しているから、
    企業在籍年数は、何も役に立たない。
    組織内特殊スキルしか持っていない人は、どこに行けばいいのか、、、
    海外に長くいると日本企業の凋落を肌で感じる。

    日本の現状は、労働生産年齢人口が毎年1%消えていく状態である。
    人材こそ、日本の競争力の源である。
    その人材のTOP層が腐っている。
    これは、東芝だけの問題ではない。
    似たような状態の企業は少なくない

  • 【頂点より堕ち行きて】20万人を抱える名門大企業は,いかにして短期間のうちに死線を彷徨う組織となってしまったのか......。歴代トップの抗争や暴走に目を向けながら,東芝の失敗の本質に迫る作品です。著者は,『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』等の企業物ノンフィクションを数多く手がける大鹿靖明。


    東芝内における上層部内の感情的対立が,企業全体を蝕んでいったことがよくわかる一冊。網羅的な記述になっているため,目まぐるしく動いた近年の東芝の動きを振り返る上でも大変参考になりました。児玉博著の『テヘランから来た男』と合わせて読みたい作品です。

    〜その凋落と崩壊は,ただただ,歴代トップに人材を得なかっただけであった。彼ら歴代トップは,その地位と報酬が二十万人の東芝社員の働きによってもたらされていることをすっかり失念してきた。〜

    大鹿氏の作品はついつい手に取ってしまう☆5つ

  • 東芝の粉飾の歴史が、実名で刻名に描かれている。会社の経営に関与する身として、いろいろ考えさせられる内容

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著者プロフィール

ジャーナリスト・ノンフィクション作家。1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』(講談社)をはじめ、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』(以上朝日新聞社)、『ジャーナリズムの現場から』(編著、講談社現代新書)、『東芝の悲劇』(幻冬舎)、近著に取材班の一員として取り組んだ『ゴーンショック 日産カルロス・ゴーン事件の真相』(幻冬舎)がある。

「2021年 『金融庁戦記 企業監視官・佐々木清隆の事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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