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- / ISBN・EAN: 4532318412399
感想・レビュー・書評
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1940年6月。
戦場である17歳の兵士が銃弾を受けて死亡する。
ナチス政権下のドイツ・ベルリンに住む両親の元に訃報が届く。
息子の死を受け止めきれない両親は、彼を死に追いやった戦争、ひいては戦争を始めたヒトラーに対して怒りを禁じ得ない。
父親はふとペンを持ちカードに何か書き始める。
「息子は総統に殺された。あなたたちの息子も殺される」
妻は
「そんなこと書いたりしたら死刑よ」
というが、ふたりとももう失うものはない。
街中に政権批判の言葉を書いたカードを置き始める...。
薬物依存で自殺願望のあったドイツの作家、ハンス・ファラダが実際にあった事件を元にした小説『ベルリンにひとり死す』を俳優もやっているヴァンサン・ペレーズが映画化。ファラダはたった24日間でこの小説を書き上げ、出版を待たずに病死した。ペレーズは母親がドイツ人で小説の内容にも親近感を覚え映画化に至ったという。
映画の内容知らずに借りたんですが良かったです。ナチス政権下のベルリンの空気を想像してしまい息苦しかった。理由は忘れましたがここ数年ヒトラー関連の映画が多く作られているようです。ドラマ系からサスペンス系まで様々な角度からこの時代を見返せます。この作品はその中のひとつ。一人息子の戦死によって、小さな声を上げだした市井の夫婦の物語です。人間は大きなうねりの中にいるとき何が出来るんだろう、何と引き換えに何をするんだろう。夫婦ふたりが主役なのですが、彼らを捕まえようとする敵役の警察も単なる悪役では無い。夫婦と同じく大きなうねりの中でもがいている一人の人間だ、というのが分かります。彼の立場もまた苦しい。
観て気持ち良く感動できる作品ではありませんが、深い余韻を残してくれます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先日ハンス・ファラダの代表作『ベルリンに一人死す』をレビューしたのち、この作品の映画があることを教えてもらった。この映画自体のおもしろさや映画と原作を絡めることで、あらためて楽しい想像を巡らせることができた。紹介してくれたkuma0504さんに多謝です(^^♪
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1940年代、ナチス政権に染まったベルリン。政権批判をすれば即座に逮捕され、拷問の末に処刑されるという恐怖政治が敷かれていた。ゲシュタポ(秘密国家警察)やSS(親衛隊)や密偵だらけの巷で、人々は言動に気を配り、息をひそめて暮らしていた。そんなある日、木工職人オットーと妻アンナのもとに一人息子の戦死を告げる一枚の紙が届いた。その日を境に、彼らの命がけの抵抗がはじまった。政権を批判する葉書をビルや公共の建物に一枚ずつ置いて立ち去るのだ。
ゆっくりと上下するガラス張りのエスカレーター、重厚なオフィスビル、壁の薄い庶民的なアパート、鉤十字だらけの街の風景、アンティークな車や電車、人々の楚々とした装い、電話や郵便物や質素な食事、人々の暮らし……ディテールにこだわった映画を興味津々ながめて感心した。主人公オットーの働く木工場内の壁には、この折りに量産した真新しい棺が積み上げられているのが切ない。
原作とそれを基調にした映画は別作品だということは、素人ながらわかっているつもりだが、この映画はすこし残念でならない。原作をひどく持て余しているようで、そのあまりの迫力と史実の重みに、一体どうしたらいいのかわからない……といった雰囲気が伝わってくるからだ。
1940年代のベルリンといえば、先の大戦中、ナチスの全体主義と監視統制、残忍な暴行や陵虐は苛烈を極めている。この映画はそのころの実話(ハンペル夫妻事件)をモデルにしているのだが、そのわりにはあまり切迫感が感じられない、薄味で物足りない。「物」のディテールが素晴らしいだけに、ひりひりとした世相のディテールは原作と比べても粗削りだ。
人々の心の闇や凶暴で陰湿なシーンが増えてしまうことは、映画の興業的にも大変なのかな……でも史実がなければ、むごたらしい時代にペン一本で抗った悲壮な夫妻のドラマは成り立たない。砂粒のような人間が歴史という怪物に押しひしがれていく息苦しさ、喪失感もなかなか伝わらないだろう。それでも一人息子を失った職人オットーとアンナ夫妻の迫真の演技はみごとだった。ひどく切なくて素晴らしい、一見の価値があると思う。
原作は決して難しいものではない。だが時代背景は重く、わりと長編なので、この映画から入るのもいいかもしれない。興味のある方にお薦めしたい(2023.2.3)。-
アテナイエさん、おはようございます。
そうか、切迫度が違いましたか。
2年間捕まらなかった間に、もっといろいろあったんでしょうね。アテナイエさん、おはようございます。
そうか、切迫度が違いましたか。
2年間捕まらなかった間に、もっといろいろあったんでしょうね。2023/02/09 -
kuma0504さん、おはようございます!
楽しく拝見しました~レビューはちょぴっと辛口になったかもしれません(笑)。どうしても原作を...kuma0504さん、おはようございます!
楽しく拝見しました~レビューはちょぴっと辛口になったかもしれません(笑)。どうしても原作を先に読んでいるので。それは承知しているのですけど、監督も悩んだかもしれない?な……と。
Kumaさんも言われているように、ラストは脚色なのですが、それがさらに拍車をかけてしまったようですが、夫婦の演技は素晴らしいものでした。さすがの俳優たちで、一見の価値がありますね!
2023/02/09
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ドイツ語でなかったのが少し残念に感じましたが、夫婦役の俳優さんの演技に感動しました。
ヒトラーの時代のドイツの様子を再認識しました。
ユダヤ人だろうが、ドイツ人だろうが、戦争、政権に反対する人がいて、そういう人が少しずつ変化させてきたのだと改めて感じました。
言語、宗教、民族・・・様々な違いがあって、隣に立った人と自分の間にも違いはあって・・・
国境はあっても、そこに溝はなく、戦争のない時間を1分でも多い世界を望みたいです。きれいごとにしか聞こえないかもしれないけれど・・・。 -
【原作】
「ベルリンに一人死す」ドイツ人作家ハンス・ファラダ -
日本人のセンスを疑う…本当に邦題のつけ方に疑問を感じる。適当に観てタイトルをつけるのなら、そんな人間が映画という芸術に関わってほしくない。映画好きの僕なら評価をするなら迷うことなく5つ星をつけるのだが、邦題が悪すぎてあえて4つ星…
戦後間もなく死んだ作家のハンス・ファラダが遺作として残した「ベルリンに一人死す」
本来はハンペル夫妻が起こした事件でハンペル事件ともいう。本作では原作とは違う名前で登場する。実際ゲシュタポの必死の捜査にもかかわらず2年間もの間捕まえることが出来なかった。そりゃ~無理でしょう~相手がシビルとマッドアイの最強コンビだぜ~
「ヒトラーへの285枚の葉書」
https://www.youtube.com/watch?v=IvpgyUxWNeg
正直、奥さんが誰かに似てるなぁ~とずっと観ていながら演技力と存在感にこんな女優さんいたのか!と思っていたらエマ・トンプソンでした。
こんなクソみたいなタイトル!いらないでしょ。これは美しすぎるラブストーリーだと思う。法廷シーンから涙止まらないわ。徴兵され戦死した息子のかたき討ちのような家族愛を最初に感じたものの、これはあくまでも夫婦愛なんだと。戦時中、銃殺でなくご夫婦はギロチンで処刑される。
さらにこのご夫婦を捕縛した警部が彼らが書いた267枚の葉書を路上に巻きながら拳銃自殺をする。これを意味するものがご夫婦への贖罪であってほしい。本当に美しい作品にヒトラーと言う文字はいらないと思う。もっともっと映画に携わる人間なら勉強してほしいものです -
ダウントン・アビーのアンナとベイツを思い起こさせる2人だった。
切ない。 -
ナチスものが多いと感じる最近。ドイツ語ではなく英語だけど,十分に重く暗い時代背景を伺える内容だった。
基本的には文字として原作のある作品の映像化はよほどのことがない限り好きではないのだけど,こういった作品は映像にすることによる効果も大きいと改めて感じる。
誰かと見て意見を交わすという気持ちにはなれない空虚さがある。1人で見てずしんとその重さを捉えて考えるのが良い。