たゆたえども沈まず (幻冬舎単行本) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 日本の浮世絵に触発されて独自の画風を作り上げたゴッホと、支えた弟テオの物語。

    フランスで日本や中国の美術品を売っていた林忠正と加納重吉は、日本では茶碗の包み紙程度の扱いを受けていた浮世絵の価値を見抜いていた。この浮世絵が西洋絵画に大きな影響を及ぼすことも。
    画商として働いていた弟テオも印象派の絵画に魅せられ、また、兄が描く絵に印象派とも違う画風を見出し、兄の才能を信じて援助を続けた。そんなテオとゴッホが日本の浮世絵に魅入られた。

    ゴッホやテオが、林や加納と交流があったという証拠はない。だから、この物語はあくまで“フィクション”なのだけれど、ゴッホが浮世絵に触発されたということは事実。
    作中ゴッホが描いていた絵は、現在展覧会で見ることができ、「あの絵だ」とありありと浮かんでくる。我が家にもクレラー・ミュラー美術館所蔵の「オリーブ畑」のレプリカが飾られている。

    ゴッホ好きは必読の1冊。

  • アムステルダムに向かう飛行機の中で読了。アムステルダムではゴッホ美術館に行く予定があり、ゴッホとその弟のテオが主人公のこの本を12時間の機中に。予習した甲斐があり、ゴッホ美術館のこと、ゴッホのことがよくわかった。ゴッホ美術館は、本書にも登場する弟のテオの子供が創設者で、日本人が売らないで取っておけ、と言ったことで、たくさんのゴッホが見られる美術館ができたことがこの小説でよくわかる。生きている間に絵が売れなかったゴッホが、末代まで不自由のない生活を与えることができるようになったとは。ゴッホ美術館に行く予定のある人には必読かな。

  • ゴッホ兄弟と2人の日本人の話。
    題名がいい。揺蕩う。
    ゴッホの有名なエピソードをはさみつつ、停滞することなく話が進んでいく。
    これを読みながらゴッホの絵を見ると良く見える不思議。作品の説明も簡潔。
    背景を知るのは大切なんだなと。

    そして、冒頭を読み直す。

  • ゴッホ、向日葵で有名な画家です。
    この程度の予備知識しかないところから読み始めましたが、まったく関係ありませんでした。瞬く間に物語に引き込まれていきました。
    ストーリーとしても読みごたえのある構成だと感じましたが、わたしが気に入ったのは、パリやアルル、様々な都市の情景、夕日の沈む様、馬車の軋む音など、細かな部分まで、まるで私自身がその場にいるかのように思える描写です。
    物語の最初から最後に至るまで、美しい情景の言葉による描写は続いています。生意気な言葉ですが、表現力が素晴らしい!と久しぶりに本を読んで感じ入りました。
    林忠正という人物については、初めて耳にしました。史実では、どのような人物だったのか、とても興味を惹かれました。参考文献のページも充実しているので、これを期に、芸術を主題とした小説に手を出してみようかなと思います。

  • 日本でいう明治という時代に、フランスに憧れ、先輩の林に導かれてフランスに渡った加納重吉は、林とともに日本美術商で働く。日本人であるがゆえに苦労もあるが、林に叱咤激励されながら、奮闘する重吉。あるとき、上流階級だけを相手にしている画商で働くテオドルスと出会い、親交を深めていく。テオもまた複雑な事情を抱える異邦人、そしてかの画家フィンセント・ファン・ゴッホの弟であった。
    そんな彼らをめぐる、史実に基づいたフィクション。どこまでが史実でどこからがフィクションか分からないが、その時代に異国で暮らすということ、芸術界に起こる大きなうねり、家族への苦悩、友情…様々なものが詰まっていて、面白く、そして考えさせられた。
    やっぱり原田マハさんの作品は好きだ。

  • 日本初のグローバルビジネスマン林忠正とゴッホ兄弟との邂逅。
    小説の力によって「あったかもしれない物語」として生き生きと描き出されている。
    フィンセント・ファン・ゴッホの奇跡の絵画は、浮世絵からのインスピレーションに加えて、ゴッホ兄弟の強い絆や血の出るような繊細な感受性からこそ生まれたのかもしれないと思うと、とても切ない。

  • 弟、テオの視線に寄り添いながら進む物語。
    2020年1月、ゴッホ展に行くことが決まり、「いつか読みたい」と思っていた本書を手に取ることにした。
    発売からもう2年が経っていたとは…読みたい時に読めてよかった一冊。
    展示も本書もテオの視線に寄り添う形でありリンクする部分が多かった。


    ──僕の考えは糸杉で一杯だ。向日葵のカンヴァスの様なものを、糸杉で作り上げたいと思っている。僕が現に見ている様には、未だ誰も糸杉を描いた者がないという事が、僕を呆れさせるからだ。線といい均衡といい、エヂプトのオベリスクの様に美しい。緑の品質は驚くほど際立っている。太陽を浴びた風景中の黒の飛沫だが、その黒の調子は、僕に考えられる限り、正確に叩くには最も難しい音だ。

    実際に見た糸杉は、うねるような線が生命力に溢れていた。展示を見る限りでは、本書で描かれるゴッホよりももう少し感情的で常軌を逸したキャラクターを感じた。

    加納との心の通った関係の中で、テオの弱い部分が描かれており、兄弟の関係性がどんなものであったのかと想像を巡らせる。
    時に自分の幸せな生活を脅かす、ケアが必要な兄を自分の半身ほどに思うテオの心に共感するのは正直なところ難しい。しかし、そこに魅力的な日本人が加わることでより登場人物を身近に感じることができた。

  • ゴッホと、林忠正のことがよくわかる本だった。
    ゴッホの弟の存在も初めて知った。
    どこまでが実話で、どこからがフィクションなのかわからないから、ウィキを見ながら読み進める。
    原田マハさんの本を読むと、美術史の知識が深められ美術鑑賞したくなる。
    マハさんの思惑通りになる私。

  • 著者お得意の美術もの。今回の題材はゴッホだが、実際は彼の弟であるテオと、その友人であり画商の日本人の視点から描かれている。ゴッホという画家は少年時代には好きで、伝記も読んだほどなのだが、いつの間にか嫌いになっていた。本作もゴッホじゃなあ……と購入をためらった覚えがある。そのネガティブな感情がずっと尾を引いていて、なかなか作品に入れないままようやく読了した。

  • 原田マハさん大好き。
    ゴッホとテオの話。

    テオについては名前くらいしかしらなかったけど、ゴッホはテオなくしては、ここまでにはならなかったのでは。

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著者プロフィール

原田マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞。2019年『美しき愚かものたちのタブロー』で第161回直木賞候補に。

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