ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話 (日本経済新聞出版) [Kindle]

制作 : KPMGFAS  あずさ監査法人 
  • 日経BP (2017年11月16日発売)
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みんなの感想まとめ

資本生産性の改善をテーマにした本書は、ROIC(投下資本利益率)の重要性を解説し、企業価値向上に向けた具体的な活用方法を示しています。特に、ROICが資本コストであるWACCを上回ることが価値創造の指...

感想・レビュー・書評

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  • > コーポレートガバナンスに対する機関投資家の一番の期待は、中長期的な視点から見た資本生産性の改善であり、投下した資本に対するリターンを持続的に創出することである。(コーポレートガバナンス変革に対する期待の剥落)

    > ROIC が WACC を上回っていれば、資本提供者にとって価値が創造されていると言える。(資本生産性指標と企業価値向上)

    資本コストと比較をして投資効率を測ることができる ROIC の活用方法や他の指標との比較、フロー経営との比較、事業の目標設定のプロセスへの活用方法などを解説している。

    定義や活用方法だけでなく前提の説明も丁寧に書かれているので初学者でも読み進めることができる。

  • ROIC経営を読んで


    感想
    いくら稼いだかのフロー数値(売上、利益)だけではなく、収益性を考えるROEやROICといった数値が重要だと学んだ。透明性と説明力を持って、資本コストの低減を目指すという考えもためになった。企業価値向上に向けROIC経営をする上で、どのように計算したり、どのような仕組みを構築するべきかが分かった。またROICにより企業価値を向上させるための短期的/中長期的アクションも理解できた。ROIC経営を実践するなら読みたい本である。


    はじめに
    機関投資家に取って、「資本コストを上回るリターン=資本生産性の向上=企業価値」。


    第一章 機関投資家の資本生産性改善に対する期待
     日本の株式市場の半分は機関投資家。コーポレートガバナンスによって、資本生産性の改善を求めている。
     長期投資家に取っての企業価値のベースはFCFの割引現在価値。DCF法の変数はFCFとWACCであるから、FCFを上げるかWACCを下げるか。
     予想ROEとPBRには正の相関がある。
     株価上昇や配当は株主資本コストであるが、これは推定するしかない。しかし、資本コストの詳細数値を把握していない企業は58.4%。さらに7割の企業が株主資本コストを詳細に把握していない。株主資本コストの求め方として代表的なのはCAPM法。認識の乖離の要因は、①現在の経済状況の認識が異なる②所在国の金利水準の違い等によりリスクフリーレートが異なること。しかし、株主資本コストは機関投資家だけでなく様々な投資家の総和であり、人によって認識が異なることに注意。
     企業は資本生産性指標と資本コストをセットで考えることが大事。ROICの投下資本は、投資家から調達した資本と捉える場合には、有利子負債+自己資本。実際に業務で活用している資本と捉える場合には、運転資本+固定資産。ROICにはWACCが、ROEには株主資本コストが対応。EVAはROICとWACCの関係を金額ベースに引き直したもの。


    第二章 ROIC活用の必要性
     企業価値向上の手法の一つとして、ROE改善がある。財務レバレッジの調整で短期的な改善も出来てしまうので注意。伊藤レポートでは、日本企業のROEの低さに対して、稼ぐ力の不足が指摘されている。
     稼ぐ力の評価には、まず資産利益率と売上高利益率の選択がある。売上高利益率のマージンを高めるのが困難な業種もある。そこで、事業への投資に対するリターンの割合である資産利益率はKPIに置くべき。その中でも稼ぐ力としてROICに対する注目が高まっている。
     ROICは、売上高やマージンの水準など企業の規模や事業の特性の影響を受けにくい。ROICは事業の収益性を評価する指標であるため、分子は税引後営業利益を用いるのが一般的。分母の投下資本は、データの入手可能性を勘案し、全社ベースでは資金調達サイドに注目した有利子負債と自己資本、事業別では資金運用サイドに注目した事業に使用している資産と負債を用いて計算。なお、投下資本の金額は平均値とするべき(分子が一定期間のものであるため)。
     ROAはシンプルで事業単位でも他社と比較できるが、ROICは難しい。それでも、資本コストと比較できるROICを投資家や株主は重視。ROAは調達サイドに事業負債(買掛金等)が入り資本コストとの比較が困難。
     ROICのメリット①資本市場に対する説明力。(売上や利益では、株主へのリターンが分からない)②事業投資に関するPDCAサイクル(SUBや事業部門単位のROICを管理。オーバースペックやリスクの高い投資の抑制)③BSへの意識(不採算事業・製品、余剰現金、遊休資産等の低収益資産にメスが入る)
     ROICでは元手をいくら増やしたかに焦点が置かれる。(フロー経営ではいくら儲けたか)
     ROICの課題:投資直後に利益が低水準になる場合は、短期的にROICは下がる。よって、ROIC経営では、次の仕組みを構築すべき。①中長期的な視点で改善を目指す②事業特性を勘案した目標設定(市場が成熟した事業にとっては有効。市場の成長が期待され、積極投資の局面では成長の足枷になる)③他のKPIとのバランス(収益規模の観点がROICのみだと欠ける)


    第三章 ROICの導入に関する論点
     ROE=ROIC×財務レバレッジ±(NOPATと純利益との差額調整項目)
     ROICの分子はNOPAT(利息控除前税引後営業利益)が一般的。EBIT(利払前・税引前利益)を採用する場合には単純にWACCと比較できない。WACCも税引前ベースに戻す必要がある。事業別では、特別損益を反映し管理不能な法人税を除くためにEBITを用いる。なお、本社費は各部門に配賦するのが望ましい。
     全社:NOPAT/(有利子負債+自己資本)
     事業別:EBIT/(事業資産と事業負債)
     大半の企業は、事業部別の有利子負債と株主資本まで把握していない。そこで事業資産負債を用いるが、他部門共通のものなどもあるので按分が必要。
     WACCについては、全事業部門共通のWACCを使うか、事業部ごとのWACCを設定するか。なお全社との統合のため、差分を特定事業に加減することもある。
     ROICの活用法としては、①事業ポートフォリオマネジメント(経営層、コーポレート層向け②ROICツリー展開(事業別で課題を詳細に把握)がある。
     業種によって、利益率んと投下資本回転率のどちらがROICに寄与しているか異なる。またROICが低くても財務レバレッジによって、WACCが低いという業界もある。
     総合化学業界では国内に比べて海外の方がROICが高い。日本では、再編・集約が十分に進んでいない。サービス業のように、多額の資産を持たないビジネスを展開する企業ではROICが重要とならない事が多い。KPIを設定する際は、自社の課題に適した指標を選択するべき。成長性と効率性はアクセルとブレーキの関係にある。成長性を見たい事業なら、売上高、利益、EBITADAなどの成長率を見た方が良いが、全社的にはROE等を意識するのを忘れずに。
     

    第四章 ROIC経営による企業価値向上
     短期的な対策のほかに、価値判断基準を変革する長期的なアクションも必要。
     短期的アクションとしては、①不採算事業の抜本的対応②事業部門の非効率部分の改善③低収益資産の処分が一般的。
     課題事業からの撤退手法としては、売却が一般的だったが、近年ではレピュテーションリスク軽減にもなるJV設立という手段も増えている。
     低収益になっている可能性がある非事業性資産は、余剰現預金、有価証券、賃貸不動産など。
     中長期的なアクションとしては、①中期経営計画における目標設定②ROIC経営に係る仕組みの構築③役員・従業員の教育
     ①のプロセス。ROE水準の決定、WACCを設定、全社ROICの目標値設定(ROEが既に高い場合は、中計の最終年度を設定)、事業別ROICの目標値設定(ROICの見える化をし、事業ごとの特性を考慮)、事業部門においてドライバー目標値設定。
     ROIC目標設定における注意事項。一つ目は、中長期的な視点で取り組むべきであり、中計などに目標を織り込むこと。毎期継続的だと目標達成のため投資が抑制されるリスクがある。二つ目は、成長事業は、効率性重視のROICではなく成長を促すKPIを目標にすること。三つ目はコーポレート部門と事業部門でしっかり連携を取ること。
     ②は具体的に、事業ポートフォリオ、個別投資案件の審査、業績管理・評価の3つを見直す必要がある。事業ポートフォリオでは、事業の評価単位(事業負担との兼ね合いだが最近はSBUが多い)、事業評価方法(ROICとフロー指標の比重)、事業の撤退基準(過去ROIC<WACC)、投資配分方法(基準や主体)などを検討する。個別案件の審査では、投資基準(企業や事業の資本生産性はROICが使用)、投資のハードルレート(どんなWACC)などを検討する。業績管理では、業績のモニタリング方法(ROICの各ドライバーの状況等)、業績評価方法(対象者やKPI)を検討する。
     ③の事例としては、経営トップの海外投資家との面談/事業部門トップのIR説明、社内勉強会/e-learning/社内報、アンケートによるPDCAサイクル構築などがある。
     ROIC経営におけるポイントは、トップマネジメントの理解・コミットメント、コーポレート部門のROICに関する認識、コーポレート部門と事業部門の戦略的対話。
     日本で最もROICを有効活用している会社の一つがオムロン。成功要因は、プロダクトポートフォリオマネジメント、逆ROICツリー展開、ROIC翻訳式


    第五章 資本生産性指標とバランスシートマネジメント ~最適資本構成の追及~
     機関投資家は、日本の財務健全性への配慮が過剰とみている。つまり、効率的に投下していないように映っている。
     通常、ROA<ROIC<=ROE。ROAとROICの差が小さいほど、余剰資産が少なく筋肉質な傾向。ただ、CCCが改善され買掛金が増加すると有利子負債が減少し差は大きくなる。ROICとROEの差はレバレッジの差。レバレッジが高いとROEとROICの差は広がる。調達サイドで見ると無借金経営の企業は投下資本は実質自己資本になりROEとROICは一致。運用サイドと調達サイドのROICの差は小さい方が良い。差が大きいと自己資本と有利子負債を事業以外の資産に振り向けていることとなる。
     ROIC>>ROAや、ROICの運用調達サイドの差が大きいと、事業に希薄な資産が多い可能性がある。例えば、余剰現預金や政策保有株式。つまり投資家は自己資本が喰われている印象を受ける。この場合、運用サイドのROICも高く見えるが、資本生産性は高くない。
     自社株買いについては、現預金による自社株買いをするとROIC spreadが高まりやすい。有利子負債による自社株買いはROEが上がりROICは変わらない。WACCは変動の可能性あり。リキャップCBによる自社株買いは、発行当初は上昇したROEも株式転換後は元の水準に戻る。資本の再構築によりWACCが低下する可能性はあるが、リスクもあり効果は限定的と思われる。
     ROICとBSマネジメントについては、製造業などのように運転資本や固定資産が高い企業であれば、回転率改善による運転資本の適正化が論点となる。一方システム開発が中心の企業は運転資本や固定資産も少ないので、事業とは関係のない資産の圧縮、株主への還元策などが論点となる。ROICの開示は各企業吟味する必要あり。
     最適資本構成の実現は、実務上はファイナンスの考え方に即して、格付戦略、Debt capacity、将来の投資計画などを総合的に勘案しなければならない。ファイナンスではMM理論(有利子負債と自己資本には最適な比率が存在。節税効果を考慮すると有利子負債は高い方が企業価値が高い。勿論、高すぎはダメ。)が有名。格付機関にはメソッドが存在(図5-15)しており、自社の訂正・定量情報を埋め込むことでDebt capacityが予想できる。また、事業リスクに対するバッファーとして自己資本の割合を考えることもする。期待ROICと期待ROAを用いても算出できる。実務的には格付けメソッドの利用が一番良いのではないか。


    第六章 投資家との対話と企業価値に関する説明力の強化
    高水準の透明性と説明力は、長期的に資本コストの低減に繋がる。
    説明力を高めるためにも、自社で企業価値を検証し、ドライバーを特定することが大事。なお、事業サイクルごとに相関する財務指標は異なる。

  • ROICの長所も短所も解説しつつ、何より事業投資判断への活用に関することにページが割かれており、現代注目される経営分析指標の経営への実践における留意点が示されている。

  • 少し難しかったが、ROICについての本質は理解できたと思う。
    部分的に自分に関係ないところもあり、そこは飛ばして読了。

  • 難しい内容ですが、とても分かりやすく整理され、読む価値がとてもあると感じた。
    何度か読み直して理解したい。

  • だいぶ前に発売された本だけど、今更読了。
    ・投資家がコーポレート・ガバナンスコードに最も期待するのは、「中長期的な生産性の向上」
    ・伊藤レポート執筆時点での平均期待収益率は国内機関投資家が6.3%、海外が7.2%
    ・独自のルールとしてRFRを2%や3%にする機関投資家も存在
    ・EVAは、ROICとWACCの関係を金額ベースに引き直したもの
    ・最適資本構成追及の実務: ①格付け分析から試算、②事業リスクに見合ったバッファ、③株主・債権者の期待リターンから試算

  • うーん、KPMGって感じ。

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著者プロフィール

KPMG FAS
KPMG FASは、リストラクチャリング(事業再編・事業再生支援)、コーポレートファイナンス(M&Aアドバイザリーおよび事業価値評価)、トランザクションサービス(各種デューデリジェンス)、フォレンジック(不正調査等)の4つのサービスラインを有し、経営豊富な財務の専門家、公認会計士をはじめ、個別業界の専門家が社会情勢・市場環境の変化とクライアントの幅広いニーズに適確・迅速に対応し、実践的かつ最適なアドバイザリーサービスを提供している。

「2013年 『欧米・新興国・日本16ヵ国50社の グローバル市場参入戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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