テーマは信仰と歴史か。
構成が面白い。①ピーターたちがナルニアに呼ばれる→②カスピアンの冒険(城の脱出からピーターたちを角笛で呼ぶまで)→③カスピアンのいる場所を目指すピーターたちの冒険→④ピーターたちとカスピアンの共闘。
ナレーションはちょっと鼻にかかった独特の声だが嫌いではない。
訳者あとがき。CSルイスはナルニアシリーズの7冊の本の他に膨大な資料を残している。それによると、「カスピアン」の舞台はナルニア歴で「ライオンと魔女」の1300年後。ナルニアとこの世界で時間の流れが違うというのも、聖書の「主の御前では、一日は千年のようであり、千年は一日のようです。」言葉を踏まえているのだろう。
以下、心に残った言葉やシーン。
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古き良きナルニア。
歴史が好きなカスピアン。
獣は忘れない。心変わりしない。じっと耐える。ナルニアは人間の王を頂かないとうまくいかない。(アナグマのトリュフ・ハンター)
アスランが本当にいるのか疑っていたが、物言う獣を見てアスランの存在も信じた。(カスピアン)
ネズミのリーピチープ。ドーントレッダー号の巻に出てくる印象だったが、この巻でも登場。
角笛の魔法を信じていないが、自分が王と認めたカスピアンの命令には従うドワーフのトランプキン。
ルーシーが森で一人でアスランと会うシーン。「ライオンと魔女」のシーンかと記憶していたが「カスピアン」のシーンだった。このシーンとその前の進むべき道を選択するシーンは、信仰というテーマがよく現れていて面白い。現実的な道と信仰の道の選択(僕も、特に自分がピーターの立場なら、現実的な道を選んだだろう)、多数決の失敗、多数意見に反してでも信仰の道を進まなければならないこと、最初はアスラン=イエス/神の姿が見えないまま従わなければならないこと(即ち伝道者はイエス/神が見えない人を説得し従わせなければならないこと)。
「ライオンと魔女」では意地悪で罪を犯したエドマンドが、「カスピアン」ではルーシーを信じる良い男に。
アスランを信じられなかったスーザンがアスランに何と言ったらいいかと尋ねたのに対し、ルーシーが答えた言葉。「そんなにあれこれ言う必要はないと思うわ。」
アスランの復活の伝説を信じず、魔女の力に頼ろうとするドワーフのニカブリク。ドワーフだけがテルマール人との戦いで負担を強いられたと思うニカブリク。神の恵みを信じないと、不平不満に陥る。
ミラーズの治めるテルマール人の学校。子どもたちは窮屈な制服を着ている。歴史の授業は冒険物語もなく退屈。アスランが来て町が解放される。アスランの祝祭の行列に加わる、女学生、教師、動物、病人。
「自分が王に相応しいと言う者は王たる資格がないことを証明したに等しい」(自分は王に相応しくないと答えたカスピアンにアスランが)
物言うネズミ、リーピチープの一族は、第一巻で白き魔女に一度殺され石舞台に縛り付けられたアスランの縄を噛み切ったネズミの子孫である。アスランに親切をなしたその時から、彼らは物言うネズミとなった。
テルマール人はピーターたちの世界からテルマールにやってきた海賊の子孫。彼らが来た時テルマールに人は住んでいなかったが、その理由は別の話。彼らはそこからナルニアに侵攻。その時ナルニアは治世が乱れていたが、その理由も別の話。
人間であることは名誉であり恥辱でもある。
アスランが、もうナルニアに戻って来ることはないピーターとスーザンに語ったことは何か?