塑する思考 [Kindle]

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  • 新潮社
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  • 【デザイン界の五輪書】
    「デザイン家電」に象徴される「デザインに対する誤解」に強烈な違和感を持った佐藤卓さんが世に問うた、デザイン界の五輪書とも言うべき本質論。

    オシャレなモノやカッコいいモノばかりがデザインと誤解されガチだが、意図してデザインしないモノを含め、すべてのモノには何らかの意図されたデザインがあることを前置きし、その上で、デザインの心構えや考え方を説く。

    とりわけ、長く活躍し続けるための極意を示したのが本書のタイトルにもなった「塑する思考」。
    塑するとはあまり聞き慣れない言葉だが、臨機応変に対処する柔軟性のうち、元に復元する力を指す「
    弾性」ではなく、状況に応じてどんどん形を変える「塑性」を指す。
    この「塑性」こそがデザイン界の第一線で生き残る秘訣と語るのが、本書の主張であり、これまであまり議論されることがなかった最大のポイント。

    宮本武蔵の五輪書では、具体的なケースを取り上げながら、身体の捌き方を細かく書き残しているのに対し、佐藤卓さんの場合は、明治乳業「おいしい牛乳」やロッテ「クールミントガム」などご自身が手がけた具体的な商品を題材に、実際に行った思考過程までつまびらかに紹介しながら、思考パターンの展開と最終的に選択した捌き方を紹介している点が秀逸。

    特に印象に残ったのが、一見デザインとは関係のなさそうなサーフィンのくだり。おそらくサーフィンの体験から得たことはご本人が考えている以上に佐藤卓さんの思考に大きな影響を与え、この本の根底に流れている本質なんじゃないかとすら感じました。
    デザインの業界にとどまらない、より広い視座を持った、読んで楽しく、為になる仕事術の本です。

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著者プロフィール

佐藤卓
妖怪収集家。1996年、山形県生まれ。宮城県在住。大学在学中にブログ『宮城妖怪事典(仮)』を開設。県内各地の民話や郷土史に眠る妖怪を発掘し、その魅力を広めるために活動中。本事典の表紙イラスト担当、妖怪掛け軸作家「大蛇堂」氏の個展『宮城の妖怪展』(2020年、2021年)には情報提供を行い、同イベント中の対談トークショーにも出演した。

「2022年 『日本怪異妖怪事典 東北』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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