宿命の交わる城 (河出文庫) [Kindle]

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  • 電子書籍ではなく、紙の本で読んだが、なぜかブクログには電子しかなかったので、それで登録しておく。

    オリジナルは1973年刊行。

    20歳ごろに読んだ時と今回のは表紙が違った。(おそらく講談社版)
    それすら既に古本でしか入手出来なかった。
    仕方なく買ったが、もとの表紙の方が好きだったので残念。
    好きな本はとにかく早く入手するに限る。

    20年ぶりくらいに読んだが、とにかく変わった本、変わった話だ。
    ページの上部三分の一に、ずっとタロットが並ぶ団組みの本は、これしか知らない。

    タロットカードを並べていき、そのカードの意味というより、絵柄から想起して物語を紡いでいく。

    短編集でもあるが、一つの短編の中でもどうもブツ切れの印象で、読み通すのにはかなり苦労した。
    訳のせいもあるのか、後半の物語は特になかなか頭に入らないので、全部読むのに数ヶ月掛かってしまった。
    鏡リュウジによる解説の読みやすさに泣けて来るレベルだ。

    カルヴィーノが大好きだった20年前に比べて、私自身の好奇心が落ちてしまったらしく、読む気力の低下を強く感じた。(カルヴィーノ作品のなかでも、中世の騎士物語やシェイクスピアへの言及が多い作品で、そのメタ的な笑いを味わう楽しさは、知識の乏しかった昔より今の方がより感じられたはずだが)
    自由自在の筆についていけるように、私の中にも軽やかさを保っていたいと思う。

    訳者の河島英昭の後書に書かれたカルヴィーノの平常時の姿が興味深い。
    来日時に紅葉を拾ってポケットにいれ、翌日さっと見せてくれた様子は微笑ましい。

    70年代、集大成とも言える作品群のなかで、ややこぢんまりとした本作だが、たしかにここには、物語ることにそれ以上でもそれ以下でもないものを置こうとする、彼の構成要素が全て詰まっているのかもしれない。

    ここのスペースにさらに、半年前にパラパラとめくっただけの「砂のコレクション」の感想をメモしておく。
    ・タイトルはポエティックな比喩ではなく、本当に砂をコレクションしていた人の話があるから
    ・私にとってはメインはなんといっても来日時のカルヴィーノの記録。こぢんまりした行儀のいい人たちの国と見えているようだが、カルヴィーノはその中でパチンコに興じる日本人の姿に関心を寄せていたようだ。
    ・口絵にあるいくつかの写真がコワイ。人体ひとつ分の皮膚…。これを見てから読むゴールデンカムイの味はどうですか…。刺青人皮??
    ・来日時のカルヴィーノを、日本での訳者たちが囲む会があったようだ。豪華すぎます。訳者たちが自作についてあれこれ聞いても寡黙だったカルヴィーノは、唯一、みどりの小鳥について聞かれた時は、パッと表情が変わり、饒舌になったという。いいなあ。

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著者プロフィール

イタロ・カルヴィーノ(Italo Calvino)
1923 — 85年。イタリアの作家。
第二次世界大戦末期のレジスタンス体験を経て、
『くもの巣の小道』でパヴェーゼに認められる。
『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』『不在の騎士』『レ・コスミコミケ』
『見えない都市』『冬の夜ひとりの旅人が』などの小説の他、文学・社会
評論『水に流して』『カルヴィーノの文学講義』などがある。

「2021年 『スモッグの雲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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