インドクリスタル 上 (角川文庫) [Kindle]

  • KADOKAWA (2018年1月25日発売)
3.83
  • (1)
  • (3)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 25
感想 : 4
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・電子書籍 (438ページ)

みんなの感想まとめ

物語は、主人公が先代の恩や姉の意思を受け継ぎ、成長していく姿を描いています。上下巻のボリュームに一度は手をつけなかったものの、読み始めるとその魅力に引き込まれ、思わず時間を忘れて夢中になってしまう読者...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  水晶のイメージは、六角柱の結晶体の鉱物、そして印鑑、占い師の水晶玉やパワーストーンいうのが思い浮かんだ。鉱物の中では宝石と比べると価値が低いものとされていた。「水晶振動子」は、水晶の圧電効果を利用して高い周波数精度の発振を起こす際に用いられる受動素子である。クオーツ時計やコンピュータなどには欠かせない部品である。
     主人公藤岡は山梨県甲府にある水晶デバイスメーカーの山峡ドルジェの社長。戦争中は潜望鏡用プリズムの製作をして、戦後無線通信用水晶発振器を作り、精密機械部品製造をしている。そして、現在は人工水晶を作っている。惑星探索用の高性能水晶振動子の注文を受けた。水晶の産出国は、スリランカ、ブラジル、アメリカ、オーストラリア、マダカスガル、中国、ヒマラヤ山脈。ブラジル産の水晶は結晶が大きく、透明度が高く品質が良い。水晶振動子をつくるには透明で品質が良いことが重要であり、その水晶をタネにして、人工水晶を作る。その人工水晶を作るための種となる水晶は、限られていた。
     藤岡の祖父藤岡徳治が世界中の水晶を集めた400個を超えるサンプルがあり、それをタネに人工水晶を作ってみたら、インド・クントゥーニと記された水晶がよかった。クントゥーニと記されているが、どこなのかわからなかった。また、他企業に人工水晶作りに良いタネだとは知られてもいけない。芸術品の水晶彫刻の原料と言って探す必要もあった。また、水晶玉は中国、シンガポール、台湾の人たちに人気がある。インド料理の店主が、インドをバックパッカーとして回った時に、クントゥーニに行ったことがあるということを聞いた。場所は分かった。藤岡は、インドで通信機材を作っている狭間通信科学の徳永とクントゥーニの知り合いを探し、採掘会社の会社社長アンシュ・チョードリーに合う。そしてチョードリーは、藤岡徳治にあったことがあり、縁があった。インドの複雑な階級や人脈のあり方が興味深く描かれる。チョードリーは、インドの貴族階級の出身。地元の名士ででもあった。そして、チョードリーは、自分の鉱山の発掘権を買えという。その鉱山を見に行った藤岡は、世界中の水晶の産出する鉱山を見ているので、その鉱山は水晶を掘り起こして廃坑に近かった。インドの名士でも平気で騙すことを知った。
     その鉱山の帰り道に、道路が崩れていて、置き去りにされた。仕方がなく、近くの村まで歩いていくのだった。たどり着いた村で、藤岡は純度の高い水晶を地元住民に売りつけられた。日本に持って帰った。その水晶が、なんと効率よく人工水晶を作るのだった。
     藤岡は、チョードリーの別荘に泊まり、少女の接待を受ける。性的なことは断り、すぐに返すと折檻を受けるようだったので、その少女ロサとチェスをやった。マス目のアルファベットを覚えて、あっという間に藤岡に勝ってしまう。記憶力がすごいのだ。また、道に迷った時にも、地図が読めた。このロサをめぐる展開が実に巧妙で、篠田節子の手法が生きてくる。ネパールのクマリのような処女神が、インドの先住民の中にもあった。藤岡は、ロサの幼い頃の処女神の儀式を見たことがあった。ロサの記憶力は、人の話を聞いても、その後完全に再生できる能力も持っていた。また、ロサをめぐってのインド人の扱いはひどく、女性を平気で殴ったりする。女性は人間として認められていないのだ。
     藤岡は、NGOの助けを借りて、その水晶を手に入れることができ、ロサをNGOに就職させることが決まって、上巻は終わる。下巻はどうなっていくのだろうか。ロサがどんなふうに変身して行くのかが興味深い。インドに日本の会社として進出していくには、難しさがある。インド社会の持つ複雑さが上手く描かれる。階級制、女性の置かれている状況、先住民や劣悪なスラムのような街。ふーむ。あまり行きたくはない国だ。

  • 読んだのは電子書籍ではないけど、これしかないから仕方なく登録。

  • 上下巻のボリュームに手をつけないでいたが、いざ読んでみると面白くて止まらなくなってしまった。
    夢中になって電車を乗り過ごしそうになったのは何年振りかというほど。

    チョードリーさんは先代の恩や姉の意思を継いだ良い人なんだろうなぁと思いながら、速攻で下巻にすすみます。

  • 2022/9/27 AmazonよりKADOKAWA秋の電子書籍フェアにて414円でDL購入。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

篠田節子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×